研究課題/領域番号 |
23K26526
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補助金の研究課題番号 |
23H01833 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 祥哉 東京大学, 物性研究所, 助教 (50868114)
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研究分担者 |
木村 隆志 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50531472)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | スピントロニクス / 放射光分光 / タイコグラフィー / X線磁気円二色性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年スピンホール効果と対をなす軌道ホール効果が理論提唱され、スピンホール効果より根源的な現象として注目を集めている。軌道ホール効果はスピン軌道相互作用を必要とせず、軽い3d金属でも大きな効果を示すとされ、スピントロニクス応用におけるデバイスの設計指針を一変しうる。しかし、理論的な研究が先行する一方で実験的な検証は始まったばかりであり、直接性や定量性に欠けているのが現状である。本研究では、軟X線タイコグラフィー法を用いて、軌道ホール効果による端面での軌道磁気モーメントの蓄積を二次元的かつ定量的に観測し、軌道ホール効果の物理を解明することで、新たな学理に基づくデバイス創成につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度は実験環境の構築に注力した。まず、超高真空分子線エピタキシー法によってTiをはじめとした金属薄膜をSiNメンブレン上に作製できることを確かめた。さらに、マスクレスフォトリソグラフィー装置を用い、露光時間や加熱温度等の条件を最適化することによって、メンブレンを破断することなく数um程度の幅を持つ細線試料の作製と電流印加用の電極を作製する方法を確立した。 また、SPring-8のBL07LSUにおいてタイコグラフィー装置の改良を行った。まず、電流印加用の試料ホルダを開発し、測定真空チャンバー内において電流を印加できる機構を整備した。さらにタイコグラフィー実験では試料位置を変えながらX線散乱像を取得する必要があるが、一つの位置において正負の電流を交互に印加することで、正負電流によるX線散乱像の差分を効率よく取得する測定ソフトウェアを開発した。また磁場を印加するための電磁石も設計した。 実験環境の整備と並行して、タイコグラフィー実験も適宜実施した。細線状に加工した金属薄膜の実空間像をタイコグラフィー実験によって再構成し、分解能よくイメージングができることを確かめた。さらに電流を徐々に増大させながらタイコグラフィー実験を行い、Ti細線が電流増大に伴い薄くなり、劣化・破断していく様子を可視化することに成功した。また垂直磁気異方性を持つCo/Pt薄膜を用い、円偏光を用いたX線磁気円二色性によってスピンと軌道磁気モーメントのイメージングが可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に電流印加下においてタイコグラフィー実験を行う準備ができている。研究は概ね順調に進展しており、次年度からは種々の試料において電流誘起のX線磁気円二色性信号の観測に注力する。
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今後の研究の推進方策 |
最適化したTiやVなどの非磁性元素の細線に電流を流しながらタイコグラフィー実験を行い、電流の誘起するX線磁気円二色性信号の検出に取り組む。 また並行して、正負電流印加下におけるX線散乱像の差分から、電流誘起の変化を再構成するアルゴリズムの開発に取り組む。
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