研究課題/領域番号 |
23K26527
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補助金の研究課題番号 |
23H01834 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷口 耕治 東京工業大学, 理学院, 教授 (30400427)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 有機・無機ハイブリッドペロブスカイト / キラリティ / 空間反転対称性の破れ / 光スピントロニクス / 円偏光ガルバノ効果 / バルク光起電力効果 / スピン軌道相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機物と無機物の両方の性質を併せ持つ有機・無機ハイブリッド化合物において、有機物と無機物のそれぞれの長所(キラリティ/極性&重元素導入の容易さ)を活かすことで、純粋な無機系では物質設計が困難な、「空間反転対称性の破れ」と「スピン軌道相互作用」を同時に制御したバルク半導体を新規に創出する。開発した非反転対称な有機・無機ハイブリッド半導体を舞台として、スピン軌道相互作用により誘起されるバンドのスピン分裂に着目し、非磁性物質における光-スピン偏極電流変換のような、スピン軌道相互作用を起源とした機能光物性(光スピンオービトロニクス機能)の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、研究の舞台となる層状の有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型鉛ヨウ化物において、有機層部分にキラル分子/極性分子を導入することにより、空間反転対称性の破れた強いスピン・軌道相互作用を持つ半導体材料の新規開発から着手した。これまでに、キラル分子カチオンのR/S-PTEA+(R/S-(p-tolyl)ethylammonium ion)を系に導入することで、新規な空間反転対称性の破れた半導体を開発することに成功しており、単結晶X線構造解析による結晶構造の決定や、光吸収スペクトルの測定など、基礎的な構造・物性情報の測定までは完了している。新たに開発された層状の有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型鉛ヨウ化物の空間群はP21であり、キラリティだけでなく極性も併せ持っている系であることが分かった。上記の化合物に対しては、光電変換特性を調べるために、まずバルク光起電力効果の観測を行った。その結果、極性の向きに依存して符号反転を示す、ゼロバイアス光電流が発生することが見出された。一方で、キラリティも同時に持つ系であることから、強磁性のカンチレバーを取り付けたConductive AFMを用いて、キラリティ誘起スピン選択性(CISS)の観測も試みた。その結果、CISSの発現が確認され、非磁性物質ながらスピン偏極電流の生成を示唆する結果が得られた。これらの結果は、単一の有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系化合物において、極性とキラリティのそれぞれが支配的となる電荷輸送現象を両方とも観測することに成功した初めての例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究を実施する舞台となる空間反転対称性の破れた層状の有機・無機ハイブリッドペロブスカイト鉛ハロゲン化物の物質開発を進めることに主眼をおいて研究に取り組んだ。その結果、研究目的に合致する新規化合物の開発に既に成功しており、物質開発の部分に関しては計画通りに研究を進めることができている。開発した物質に関しては、結晶構造の同定、並びに基礎物性の同定も完了しており、今後計画している円偏光ガルバノ効果や磁場下での光電流測定に取り掛かれる状態が実現出来ている。また、新規に開発した上記の物質に関しては、バルク光起電力効果やキラリティ誘起スピン選択性など、目的以外にも興味深い物性の発現が観測された為、それらに関しては投稿論文にすでにまとめるなどもしており、おおむね順調に研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発した空間反転対称性の破れた層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイト鉛ヨウ化物に対し、円偏光ガルバノ効果並びに、磁場下でのゼロバイアス光電流測定を行っていく。円偏光ガルバノ効果に関しては、今年度までに測定系を立ち上げることができたので、単結晶試料を用いて測定を進めていく。特に、今年度開発したR/S-PTEA+のラセミ体では、キラリティをもたず、純粋に極性のみを持つ化合物が得られることも分かってきたので、バルク物質の極性によるバンドのスピン分裂を利用したスピン偏極電流の発生を、円偏光ガルバノ効果を介して観測することを試みる。また、磁場下でのゼロバイアス光電流効果に関しては、今年度は、購入した電磁石を用いて測定系を立ち上げることに取り組んでいく。
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