研究課題/領域番号 |
23K26559
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補助金の研究課題番号 |
23H01866 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60362274)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | GaN / 4元混晶 / HBT / バンドオフセット制御 / 分極ドーピング / AlInGaN / 電子デバイス応用 / バンドエンジニアリング |
研究開始時の研究の概要 |
デバイス構造のシミュレーションとAlGaN分極ドーピングHBTの特性評価をもとに、AlGaInN分極ドーピングを用いたHBTの作製を行う。エミッタ層へのIn偏析現象が問題となる可能性があり、理想界面を得るための結晶成長条件の最適化を行い、ベース層とエミッタ層の急峻な界面の作製に関して評価を行う。各種In、Al組成を変えたベース層を作製しデバイス化することで、AlInGaN層の薄膜化を図る。デイバスの静特性、高周波特性などの電気特性を計測しHBTの高性能化を図る。
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研究実績の概要 |
本研究においては窒化物半導体の4元混晶の作製と、その特異な分極とバンドラインナップを利用した新規でアビスの作製を目指している。今年度は、AlInGaNの作製において基本的な特性評価を実施した。まずAlGaN、InGaNをそれぞれ成長温度を700‐900℃程度に変化しながら、組成の検証を行った。AlGaN系においては、AlとGaの供給比と同等な固相比が得られる。一方、InGaNは温度が下がるにつれてIn組成が上昇する。これはAl,Gaは定温において再蒸発が少なく、原料の取り込みが供給律速になっているためである。一方でInNの蒸気圧は極めて高いため、再蒸発によって取り込みが律速されるような成長モードとなっていることを示している。ここにAlInGaNと4元混晶を成長すると、Alの供給量が増加するにつれて、In組成も増加することを明らかとした。これはAlNがGaNと比較して、核生成密度が高く、Inが引き込まれる効果が起きていると考えられる。GaN/AlInGaNの積層構造を作製し、分極によるキャリアの発生を電気的特性を評価したところ高抵抗を示した。そこで、SIMSを用いてAlInGaNの不純物密度を計測したところ、炭素が10^18/cm^3を超える量で入っていることが確認された。炭素は電気的に電子をトラップするために、高抵抗になったと考えられる。これまでにTMGをTEGに変えることでGaNの炭素濃度を数桁減少させることが報告されているが、この4元系においてはTEG、TMGの際は観測されなかった。Alを用いることで極めて各密度が高くなることで、炭素の離脱が起きにくいことを示していることが明らかとなった。来年度以降に成長速度の減少とV/III比の増加による炭素密度の減少と、表面モフォロジーの改善を図り、電子デバイス応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてはAlInGaNの4元混晶の作製を実施していく。4元混晶とすることで成長条件の範囲が飛躍的に増加する。また、4元混晶ではAl、In、Gaそれぞれの組成を一意にする決定手法が確立されていない。そこで、組成の評価手法の開発が必要であった。我々は、SIMS、EDX、XRD、RBSなどの各種分析を実施し、それぞれの特徴を考慮することで、確からしい組成決定手法を開発した。そのうえで、4元混晶の成長を実施し、成長ウィンドウを検討した。結果として、4元混晶の組成制御手法を確立することに成功している。一方で、電気的な特性などの計測までは至っていない。これは成果概要でも述べたように、炭素の不純物濃度が意図しないレベルで高かったことによる。この原因もAlを添加することに起因することを実験的に明らかとした。通常AlNを成長する際は、原料であるTMAとNH3が気相中で反応することが知られている。そのため、それに倣って、NH3の供給を制限している。しかしながら、Alを供給することでIn組成が高くなることが実験的に確かめられた。一方Inの取り込みも成長圧力の低下とともに低下することが知られている。低圧成長はAlの気相反応を抑制することが可能である。つまり、低圧において気相反応を抑えつつ、Alを導入することでInの組成を高めることが可能であり、適切な成長条件を選択するための方針つけが、本年度の実験によって定まったと言える。さらに、高V/III比、低速成長などが必要であることも明らかとなっており、成長の指針を得ることに成功している。来年度以降は、これらの条件を試すことにより電子デバイスへ展開する計画であり、当初描いていた実験計画に沿った進捗となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で明らかとなった炭素濃度の減少が最優先の課題である。炭素低減の手法としては既に方策が定まっており、低圧成長、V/III比の増加、低速成長の方向に進める予定である。ただし成長条件を変化すると、4元混晶の組成も変わるため、炭素濃度の低減を図りつつ、再度成長条件とAl、Ga、Inの組成の関連を調査していく予定である。その中で、同時に炭素を低減することで得られる、GaN/AlInGaN界面に発生する、2次元電子ガスの電荷量と理論的に得られる値との比較を行っていく。また、AlInGaNを理想的な電子デバイスとして利用できる、膜厚、組成範囲を調査する。本研究においての基礎的な最低限の範囲が2次元電子ガスの獲得であり、早期の実現を目指す。次に実現可能な膜厚と組成が決まったところで、分極ドーピング構造の作製を実施する。3元混晶での組成傾斜構造は単純であるが、4元混晶ではパラメータが多いため、分極ドーピングで変化す範囲拡大に関して簡単なシミュレーションの構築が必要である。またバンドエンジニアリングの観点も考慮にいれながら、傾斜構造を設計する必要があるため、極めてチャレンジングである。最適な分極ドーピング構造を設計し、HBTやpnダイオードを作製可能な構造の作製を目指していく。また、AlGaN系の分極ドーピングでは価電子帯でのバンドオフセットが小さいため、合金散乱の影響が少ないことが分かっている。一方、AlInGaN系においては、AlNとInNのバンドオフセットは大きく、合金散乱の影響が大きくなることが懸念される。従って、分極ドーピングによるp型の実現と、範囲拡大が本研究のメインテーマになるが、その裏にあるバンドエンジニアリングとそれに伴う各種物理的な影響を一つ一つ調査していく予定である。
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