研究課題/領域番号 |
23K26562
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補助金の研究課題番号 |
23H01869 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤松 寛文 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10776537)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 強誘電体 / 層状ペロブスカイト / トポケミカル反応 / 酸フッ化物 / 第一原理計算 / 複合アニオン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、F-などの異種アニオンの層間サイトへの導入に着目し、配位八面体回転を制御し、強誘電性を誘起する手法を確立することを目的とする。層状ペロブスカイト酸化物への異種アニオンのインターカレーション、精密結晶構造解析、物性評価、および計算科学による電子状態の網羅的精査を行い、層間侵入アニオンが配位八面体回転、ひいては強誘電性・反強誘電性を誘起する機構を解明する。
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研究実績の概要 |
近年、層状ペロブスカイト酸化物を舞台とした、配位八面体の回転により誘起される新しいタイプの強誘電性が注目を集めている。配位八面体の回転を制御するための常套手段はカチオンの置換とされている。本研究では、F-などの異種アニオンの層間サイトへの導入に着目し、配位八面体回転を制御し、強誘電性を誘起する手法を確立することを目的とする。層状ペロブスカイト酸化物への異種アニオンのインターカレーション、精密結晶構造解析、物性評価、および計算科学による電子状態の網羅的精査を行い、層間侵入アニオンが配位八面体回転、ひいては強誘電性・反強誘電性を誘起する機構を解明する。新しい層状ペロブスカイト強誘電体・反強誘電体の創製により、構造歪みに関わる固体化学の学理構築および新規イオニクスデバイス創出に新展開が期待される。 本年度は、Aサイト秩序Ruddlesden-Popper型層状ペロブスカイトNaRTiO4(R=希土類)へのフッ化物イオンのインターカレーションに取り組んだ。NaRTiO4は、希土類イオン半径が大きい時には配位八面体の回転を示さず、中心対称性をもつ構造をとるが、希土類イオン半径が小さい時には配位八面体の回転を示し、中心対称性のない構造を示す。第一原理計算により、フッ素導入によって配位八面体回転の起こりやすさおよびパターンが変化することが予測された。固相反応法により合成したNaRTiO4粉末試料とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合し、比較的低温で熱処理することにより、フッ素導入を行なった。放射光X線回折測定を行い、リートベルト解析を行うことにより、フッ素含有量・占有位置やアニオン配位八面体回転パターンを含む結晶構造を決定した。希土類イオン半径とフッ素含有量の相関を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NaRTiO4とPTFEを混合し、空気をフローしながら400℃で熱処理を行ったところ、格子定数(特に長軸方向)が増加することが明らかになった。これはフッ化物イオンが酸化物イオンを置換あるいは層間サイトに侵入したためであることを、リートベルト解析により明らかにした。また、PTFE仕込み量を系統的に変化させることにより、希土類イオンがLaのように大きなものの場合は、NaRTiO4に対して約2 mol等量のFが導入され、一方、SmやYのように小さなものの場合は、約1 mol等量のFが導入されることが明らかになった。希土類イオンのサイズによって、フッ素の導入のされ方が大きく変化することが明らかになった。第一原理計算の結果と合わせて、フッ化物イオンが特定の侵入・置換サイトを占有する原因を合理的に説明することができた。層状ペロブスカイトへ異種アニオン導入に関する有益な知見が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、NaRTiO4以外の層状ペロブスカイトへの異種アニオン導入を検討する。特に層状ペロブスカイトのタイプ(Ruddleden-Popper型、Dion-Jacobson型など)やA, Bサイトのカチオン種が異種アニオン導入にどのような影響を与えるかに注目する。また、別のフッ素導入手法の検討も試みる。フッ素含有ポリマー以外のフッ素源(金属フッ化物、フッ素含有分子性固体など)の検討や、電気化学的手法による還元的フッ化物イオン挿入についても挑戦していく予定である。
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