研究課題/領域番号 |
23K26575
|
補助金の研究課題番号 |
23H01882 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石榑 崇明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00291162)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
|
キーワード | 光電融合 / ポリマー光導波路 / 3次元光回路 / モスキート法 / 3次元光回路 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,研究代表者らが考案したポリマー光導波路の作製法である「モスキート法」をコア技術とし,高速・高性能コンピューティングのた めの「光電融合」技術へ向けた3次元高集積光回路を実現する.3次元高集積光回路とは,3次元空間のいずれの方向にも光信号入出力を可能に する3次元光導波路にて構成される光回路のことであり,超広帯域搬送波としての光の特性を極限まで高めることができる.加工性に富み,様 々な種類・特性に恵まれる「有機ポリマー材料」に着目する.高速演算処理回路(LSI)の近傍に3次元高集積ポリマー光回路を実装した新規の デバイスを開発し,演算性能向上さらには,システムの低消費電力化に貢献する.
|
研究実績の概要 |
本研究は,ポリマー光導波路の作製法である「モスキート法」により「光電融合」へ向けた3次元高集積光回路を実現することを目的とする. 本年度の検討では,まず,Co-Package基板応用へむけた「シリコン(Si)細線導波路―シングルモードファイバ(SMF)アレイ間接続のためのfan-in/fan-out(FIFO)型スポットサイズコンバータ(SSC)」の実現に必要なポリマー光導波路の3次元高密度配線構造(導波路コア径,開口数 (NA),導波路長,コア配列)を設計した.ポリマー光導波路には,シングルモード条件を満たすべくNAに依存した導波路コア径の設計が必要となる.より小型化・高集積化のためにFIFO部に急峻なコアの曲げ構造が必要となるが,その低曲げ損失化のためには,0.3以上のNAが望ましく,特に,1 mmにまで小曲げ半径化するためには,0.4以上のNAが必要となる結果が得られている.シングルモード条件を満たしつつ,さらにコア径を縮小するとモードフィールド径(MFD)が可変となることを利用し,Si細線導波路,SMFとの接続部でポリマー導波路のMFDを一致させる必要がある. 以上の要求仕様をもとに理論解析を進めた結果,1)Si細線導波路との接続点では,円形断面ではなく半円ないし半楕円断面のコア形状とすること,2)その場合,コア直径を4 μmとし,導波路のNAは0.43程度とすること 3)SMFとの接続点では,円形断面コアとし,コア直径を1 μmまで縮小(テーパ構造)とすること,により,1.8 dBの低挿入損失SSCが実現できることがわかった.また,FIFO部では,sin関数に沿った曲げ構造とすることで,曲げ損失を最も低減できることを見出した.加えて,高NA導波路を作製し得る新規ポリマー材料を見出すことにも成功している。このSSC構造設計および新規材料に関する特許出願に至っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の検討により,3次元高集積光回路を実現に向けたポリマー光導波路の新規の構造設計を見出だす事ができた上に,新たに見出された導波路には0.4以上の高開口数(NA)が求められ,その導波路を構成するための新規ポリマー材料を見出すことができている.この高NA化のためのポリマー材料を用いて最終的に屈折率分布型コアを形成するためには,コア・クラッドモノマー間の相互拡散が必要となる.この場合,高屈折率差ゆえの相分離が懸念されるが,新規に見出したポリマー材料では,光学特性を損なう相分離は見られていない.本年度の検討の結果,上記の導波路構造設計,材料の双方の特許出願に至ることができている点からも,順調に研究が進んでいると言える.得られた新規の導波路構造には,「『半円ないし半楕円』断面形状のコア」が必要とされている.半円・半楕円断面コアの形成についてはこれまで未検討であったが,モスキート法工程中,コアモノマー吐出方法を工夫することで,十分に作製が可能であることも実験的に明らかにすることができている.本年度は,特許出願を優先する必要があったため,上記の結果の原著論文の発表には至っていないが,次年度以降,以上の成果を続けて論文発表することを計画している. また,本研究のコア技術となる「3次元光回路」作製についても,その作製可否の検討に終わるのみでなく,実際に3次元に配線された隣接コア間でのモード結合を利用した「3次元方向性結合器」のような機能デバイスの作製に成功するなど,想定を上回る成果が得られている. 一方で,コア高集積化の観点からの最大の懸念点は,ニードル走査過程で生じる液体状クラッドモノマー流動由来のコア配列の乱れであった.この点についても,ニードルの素材検討を進め,ジルコニア製ニードルを利用することで,乱れを大きく低減できる可能性が見出された点も,大きな進展であった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度,検討を進めたポリマー光導波路の構造設計では,導波路NA,コア径の仕様を決定する過程で,分布屈折率(GI)型コアを想定できておらず,階段屈折率(SI)型コアを想定した計算に留まっている.GI型コアを導入することで,シングルモード条件の緩和,ならびに導波路のさらなる小型化が期待されるため,今後は,理論計算にGI型コアを導入して,導波路の検討を続ける. 一方,実験面では,本年度,新たにジルコニア製のニードルを使用することで,より高い位置精度でのコア形成,および高集積コア形成の可能性を見出すことができている.今後は,様々な形状のジルコニア製の極細ニードルを使用し,モスキート法にて形成可能なコアの最小径,ならびに最小曲げ半径を明らかにして,コアの高密度3次元配列設計の指針を得る.さらにこのジルコニア製極細ニードルを使用して極細径のコアを形成するにあたり,「コア配列精度」,「コア形成位置精度」の「モノマー粘度」,「ニードル走査速度」依存性について,流体力学シミュレーションおよび実験検証の2通りの手法をもとに明らかにする.具体的には,±1μm未満の位置ずれ精度が実現できる条件を確定する.並行して,導波理論(ビーム伝搬法ならびにFDTD法)を利用し,上述の3次元コア配列設計が形成できた際の導波路の挿入損失,モード結合特性を算出し,実用に供することを確認する.過剰な光損失が生じることが判明した際には,コア配列を再設計する. 以上の検討により,本年度は,本研究で実現を目指す高集積3次元光回路の全体像を明確にする.
|