研究課題/領域番号 |
23K26583
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補助金の研究課題番号 |
23H01890 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鎌田 康寛 岩手大学, 理工学部, 教授 (00294025)
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研究分担者 |
渡辺 英雄 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90212323)
赤瀬 善太郎 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 特任准教授 (90372317)
清水 一行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30748760)
村上 武 岩手大学, 理工学部, 技術専門職員 (60466513)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
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キーワード | イオン照射 / 磁気特性 / 鉄基合金 / キャビティ / 階層構造 |
研究開始時の研究の概要 |
照射環境下での鉄基合金の電磁特性の挙動を理解する取り組みは、照射環境で使う施設(原子炉・核融合炉・加速器等)の安全対策・技術開発に活かせる。また、鉄基合金の磁気特性を、磁壁と欠陥・微細組織との相互作用の観点から整理することにつながり、学術・実用の両面で重要と言える。本研究では、これまでに研究が進んでいない“キャビティと磁性の関係”、“複雑な階層構造が磁性に与える影響”の解明に焦点をあてる。目的を達成するため、①高品位鉄基合金薄膜の作製+イオン照射+プローブ特性評価を組み合わせた高効率な研究手法の構築と適用、②特殊電子顕微鏡を用いた実用鋼材料の磁区・磁壁の動的可視化、に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究は、照射環境下で利用される鉄基合金の電磁特性に与える照射効果を明らかにすることを目的とし、“キャビティと磁性の関係”と“複雑な階層構造が磁性に与える影響”の解明に焦点をあてる。 “キャビティと磁性の関係”については、純鉄およびFe-Cr合金の高品位薄膜を超高真空蒸着法で作製してHeイオン照射((最大損傷量は約20dpa、室温照射)を実施し、照射前後の構造と磁気特性の変化を詳しく調べた。高密度の微小キャビティの形成と膜面垂直方向への格子膨張がいずれの試料でも確認されたのに対し、磁気特性は純鉄とFe-Cr合金で異なる振る舞いを見せた。純鉄の磁化曲線の形状は変化しないが、Fe-Cr合金は飽和磁場が増加し、磁化困難となることを明らかにした。純鉄の飽和磁化の増加が、装置の検出可能な範囲で見られないことは、第一原子計算の結果からも妥当と言えることを示した。また、Fe-Cr合金の磁化曲線の形状解析の観点から考えられる複数のメカニズムについて検討し、それらの成果を論文発表した。 “複雑な階層構造が磁性に与える影響”については、核融合炉ブランケット材料の電磁特性を念頭におき、階層構造を有する9Cr耐熱鋼の磁場印加下でのローレンツ電子顕微鏡観察を行った。析出物の評価では導入した熱力学計算ソフトを活用した。階層構造およびその中に含まれる析出物等の微細組織が、動的磁場印加下での磁壁移動に与える影響を、実験的に可視化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
照射キャビティと磁気特性の課題では、体心立方構造のFe-x%Cr合金(x = 0, 10, 20%)の高品位薄膜を作製して、室温でHeイオン照射(最大損傷量は約20dpa)を実施し、各種構造評価(EBSD、XRD、TEM、EDS)と磁化測定(VSM)を行った。x = 10, 20%の合金では、顕著な磁化困難現象が見られ、キャビティ形成とCr原子配列の変化がその原因と考えている。一部のFe-Cr合金について、照射温度を変えてキャビティの状態(数密度:小、半径:大)の異なる試料を作製し、磁気特性の違いを調べている。照射に伴うCr原子配列の変化を詳しく調べるため、一部の試料でアトムプロ―ブ実験を実施しているが、詳細な解析は今後の課題である。 階層構造と磁区可視化の課題では、対象となる9Cr耐熱鋼の階層構造と析出物組織をEBSDとEDSを用いて把握した後、磁場印加下での磁壁の直接観察を実施した。磁壁がCr炭化物で強くピン止めされる様子を明らかにできた。重イオン照射した核融合炉ブランケット材のF82H(8Cr-2W)の、断面組織のローレンツ電子顕微鏡観察も一部始めており、照射損傷が磁区・磁壁に与える影響の可視化を試みているところである。 以上のような成果をあげていることから、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
照射キャビティと磁気特性の課題では、試料膜厚方向の損傷度及びキャビティの分布の影響を考慮する必要があり、試料の厚さを系統的に変えた実験を行う予定である。照射によるCr原子配列の変化が磁気特性に大きな影響を与えてると考えられ、アトムプロ―ブなどのナノスケールでの構造・組織観察手法を駆使し、照射による元素分布の変化と磁気特性の関係の考察を進める。並行して、重イオン照射が鉄系合金の磁気特性に与える影響について検討し、キャビティ以外の照射欠陥が磁気特性に与える影響を見極めたいと考えている。 磁区の可視化研究に関しては、階層構造の方位解析プログラムを立ち上げ、①特定のブロックやパケット境界との磁壁の相互作用、②境界上および境界内に存在する析出物との磁壁の相互作用について、検討を進める。並行して、F82H鋼およびFe-Crモデル合金のバルク材をイオン照射した、断面試料の損傷組織および磁区観察のデータ解析を進める。新たにナノインデンタ実験を実施し、それらの結果もあわせて、階層構造と照射欠陥を両方含んだ試料における、磁区構造と磁壁挙動について検討する計画である。
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