研究課題/領域番号 |
23K26607
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補助金の研究課題番号 |
23H01914 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
野崎 達生 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), グループリーダー代理 (10553068)
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研究分担者 |
石田 章純 東北大学, 理学研究科, 助教 (10633638)
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (10722837)
栗林 貴弘 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302086)
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80544105)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 硫黄同位体 / 海底熱水鉱床 / 火山性塊状硫化物鉱床 / 微生物活動 / 生物鉱学 |
研究開始時の研究の概要 |
硫黄は生物必須元素であるだけでなく,金属鉱床の主要な構成元素である.本研究では『微生物活動が硫化物鉱床の生成にどの程度寄与するのか?微生物による核形成が大規模硫化物鉱床を形成する』という作業仮説の下,硫化鉱物に着目し,硫黄同位体比組成から微生物活動の寄与を解明する.具体的には,海底熱水鉱床と火山性塊状硫化物鉱床 (過去の海底熱水鉱床) について,鉱物の晶出順序および成熟度・鉱化ステージごとに異なる組織を示す黄鉄鉱を主対象とし,2種および4種局所硫黄同位体分析を行う.得られた硫黄同位体比組成について熱力学的理論計算を行い,硫化鉱物中の硫黄の起源だけでなく微生物活動の寄与を定量化することを目指す.
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研究実績の概要 |
研究初年度の主な実績として,秋田県餌釣黒鉱鉱床の局所硫黄同位体分析を行い,その結果が論文化された.具体的には,坑道内で採取された黒鉱鉱石の顕微鏡観察と黄鉄鉱粒子の抽出を行い,JAMSTEC高知コア研究所に設置されているSIMSを用いて,局所硫黄同位体分析を行った.その結果,餌釣黒鉱鉱床の黄鉄鉱は鉱化作用が進むにつれて,フランボイダル⇒コロフォーム⇒自形組織を示し,フランボイダル黄鉄鉱では時に-30‰を下回る低い値を示すものの,コロフォーム⇒自形となるにつれて+数‰の高い値を示す傾向が認められた.当時の海水の硫黄同位体比組成と比較すると,-50‰を超える極端な同位体分別を伴うことから,黒鉱鉱床の初期形成過程において,微生物活動が硫化鉱物の生成に寄与していることが明らかとなり,海底熱水鉱床の結果と合わせると,鉱床初期形成過程における微生物活動寄与の普遍性の証明に一歩近づいたと言える.本結果は,査読付き国際学術雑誌である『Resource Geology』誌に掲載された. 2023年10月に宮崎県槙峰鉱床における野外調査を実施し,硫化物鉱石および上下盤の堆積岩を含む約30試料を採取した.これらの試料について顕微鏡観察用の研磨片を作成し,全岩化学組成分析用の粉末試料を調製した.槙峰鉱床の鉱石試料は,コロフォーム黄鉄鉱・Fe酸化鉱物・磁硫鉄鉱・少量の閃亜鉛鉱を伴う鉱化ステージと自形黄鉄鉱・磁硫鉄鉱・網目状の黄銅鉱・少量の閃亜鉛鉱を伴う鉱化ステージに区分されることが見えつつあるが,今後初期のフランボイダル黄鉄鉱を含む試料を探索し,SIMSによる局所硫黄同位体分析に繋げる.また,ナノSIMSを用いて黄鉄鉱の微細組織と硫黄同位体比組成の関係性の追跡を試みたが,樹脂か試料のせいか理由は定かではないが,サンプルチャンバー内の真空度が十分に下がり切らずに分析ができなかったため,今後改善していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の2023年度は,主に以下の3つについて進捗があった. (1) 宮崎県槙峰鉱床調査:2023年10月に本科研費の研究分担者・研究協力者および関係者が露頭に集い,火山性塊状硫化物の露頭を含む野外調査および岩石試料の採取を行った.その後,採取した岩石試料を切断・研磨片を作成し,組織観察,構成鉱物の同定,EPMAによる鉱物組成測定および全岩化学組成測定用の粉末試料の調製を行った.今後,さらなる顕微鏡観察とフランボイダル黄鉄鉱の探索を行い,SIMSによる局所硫黄同位体分析に繋げる予定である. (2) 秋田県餌釣黒鉱鉱床の局所硫黄同位体分析:秋田県餌釣黒鉱鉱床の坑道内から採取された試料を用いて,研磨片の顕微鏡観察および同位体分析に適した黄鉄鉱粒子の抽出を行った.その後,SIMSを用いて黄鉄鉱の局所硫黄同位体分析を行った結果,鉱化作用が進むにつれて黄鉄鉱はフランボイダル⇒コロフォーム⇒自形と変化し,フランボイダル黄鉄鉱では時に-30‰を下回る低い値を示す一方で,コロフォーム⇒自形と組織が変化するにつれて硫黄同位体比組成が高くなる傾向が見られた.中部沖縄トラフの海底熱水鉱床においても類似の傾向が見られることから,硫化物鉱床形成の初期鉱化作用において,微生物硫酸還元を起源とする硫黄の重要性が認められた.この結果は,査読付き国際学術雑誌である『Resource Geology』誌に掲載された. (3) 海底熱水鉱床試料の局所硫黄同位体分析:Nozaki et al. (2021_Geology) で用いた中部沖縄トラフ伊平屋北海丘および伊是名海穴の研磨片を用いて,さらなる顕微鏡・SEM観察を追加し,ナノSIMSによる微細な局所硫黄同位体分析を試みた.しかし,樹脂か試料か原因は定かではないが,研磨片を入れたサンプルチャンバーの真空度が十分に下がらず,局所硫黄同位体分析が十分に行えなかった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き主に以下の3つを柱にして,本科研費の研究を遂行していく予定である. (1) 宮崎県槙峰鉱床調査:日本国内では火山性塊状硫化物が露頭で見られる場所は非常に限られており,宮崎県槙峰鉱床は綱の瀬川沿いに火山性塊状硫化物とその上下盤岩石が観察可能な貴重な場所である.今後も,研究分担者・研究協力者および関係者とともに毎年宮崎県槙峰鉱床を訪れ,露頭観察や議論を継続していく予定である.岩石記載や化学分析が進んだ後に露頭に行くと,それまでとは露頭が異なる様子に見え,新たな発見に繋がることが多々あるため,今後も本鉱床の調査を毎年継続していくともに,SIMSによる局所硫黄同位体分析に向けたフランボイダル黄鉄鉱の探索を行っていく. (2) 日本国内の火山性塊状硫化物の局所硫黄同位体分析:(1) で調査している宮崎県槙峰鉱床については,鉱石試料の全岩化学組成分析をICP-QMSで行うとともに,研磨片の顕微鏡観察,EPMAによる鉱物組成測定を通じてフランボイダル黄鉄鉱の探索を行い,SIMSによる局所硫黄同位体分析を行っていく.また,北海道に胚胎している下川鉱床も比較的規模の大きな火山性塊状硫化物鉱床であるが,過去のボーリングコア試料が高知大学および北海道大学に保管されているので,さらなる研磨片作成・顕微鏡観察・EPMAによる鉱物組成測定の追加とSIMSによる局所硫黄同位体分析を行っていく. (3) 日本近海の海底熱水鉱床の局所硫黄同位体分析:中部沖縄トラフ伊平屋北海丘や伊是名海穴の人工熱水孔上に生成したチムニーあるいは硫化物鉱体の掘削コア試料を対象として,ナノSIMSを用いて黄鉄鉱のより微細な組織に対応した局所硫黄同位体分析を行う.特にフランボイダル黄鉄鉱が再結晶化する過程で硫黄同位体比組成が大きく変化する傾向が見えつつあるので,どの鉱化ステージまで微生物活動の痕跡が残っているのかを追跡する.
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