研究課題/領域番号 |
23K26610
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補助金の研究課題番号 |
23H01917 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高野 慎二郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40783957)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 金属クラスター / 複合ナノ物質 / 構造解析 / 金クラスター / 幾何構造 / 電子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
金属・酸化物・半導体などの様々な物質を微細化して得られるナノメートルサイズの物質は現在広い領域で基礎から実用まで利用されている重要な研究対象である。本研究課題では金属・酸化物複合ナノ物質の原子精度合成を達成し、その界面構造を決定することで、ナノ物質の構造・機能相関を分子科学的な観点から理解し、それを元にした機能開拓を目指す。本研究課題の達成によって解明される組成の決まった”分子性ナノ物質”の微視的構造に関する知見はこれまでの分散のあるナノ物質を利用した”平均情報”で妥協されてきたこれまでのナノサイエンスに一石を投じ、次世代のナノ物質科学を切り拓く原動力になると期待している。
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研究実績の概要 |
2023年度は金クラスターの金属コア表面に配位不飽和な金属サイトを原子精度で構築するため、Ir@Au12クラスター上からの末端アルキニル配位子の強酸によるプロトン化を鍵とした配位子脱離反応を開発した。正二十面体Ir@Au12コア上の軸位に二つあるフェニルアセチリド配位子のうち、一つまたは二つを選択的に脱離させることに成功し、その配位不飽和サイトがイソシアニド配位子を定量的に捕捉することも明らかにした。この高い反応性を生かし、二つ以上のクラスターを架橋できるジイソシアニド配位子を導入することで、選択的にクラスターを多量化させることに成功した。得られた多量体は質量分析やNMR分光によって詳細に構造解析し、さらに高分解能電子顕微鏡観察による二量体の直接観察にも成功した。これらの結果はAngew. Chem. Int. Ed.誌に発表した。 また、金クラスター上に異種分子を導入する手法として、金属イオンとの親和性の高いターピリジン部位を持つアルキニル配位子を位置・個数選択的に導入し、3d金属イオンと錯形成することで光励起状態のダイナミクスに対する変調が可能であることを見出した。 さらに、金クラスター上のハロゲン配位子が単なる表面を保護するアニオン性配位子ではなく、電子構造や反応性を左右する重要なものであることがわかった。この結果を踏まえ、補助配位子の性質を変化させたところハロゲン配位子が容易に有機分子と交換することがわかり、この結果を生かした触媒反応への応用も検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載した通り、当初計画していた金クラスター上の配位不飽和サイトの原子精度合成を達成し、計画していなかったクラスター多量体の精密合成とその性質解明に繋げることができた。さらに金クラスター上の配位子をデザインすることで金属イオンの捕捉等異種分子との複合化も達成できた。一方で、酸化物クラスター・ナノ粒子の精密合成および複合化は既報を超える目覚ましい結果はまだ得られておらず、全体を通した結果としては概ね当初の計画通りと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に論文発表した、金属コア表面に配位不飽和なサイトを持つ金クラスターの原子精度合成をさらに発展させる。現在のところ表面配位子である末端アルキニル配位子を強酸でプロトン化することで個数と位置を制御して脱離させることに成功しているが、ある特定のクラスターでは反応が全く進行しないこともわかっており、そういったクラスターにも適用できる反応条件を探索する。 さらに、電子構造を制御するために電子求引性配位子を導入したクラスターでは予期しない幾何構造が得られ、そのクラスター上のハロゲン配位子が容易に脱離して触媒反応場として働くことを初年度に発見している。この結果をより高度に発展させるためクラスター合成時の反応条件を検討することでクラスターの収率改善・構造制御に取り組み、触媒としての高活性化を目指す。 また、初年度に引き続きCeO2ナノ粒子の原子精度合成を達成し、金属錯体との複合化を目指す。現状既報の粒子の合成を再現することには成功しているが、表面配位子の構造に強く影響されることが初年度の探索から分かっており、より一般性の高い合成法開発と、特定の位置のCeを別金属で置換した複合酸化物ナノ粒子を合成し、金属錯体との位置選択的複合化を目指す。
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