研究課題/領域番号 |
23K26619
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補助金の研究課題番号 |
23H01926 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
北川 大地 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (50736527)
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研究分担者 |
五月女 光 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (60758697)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 光反応性分子結晶 / フォトメカニカル応答 / 協同的光反応 / 微小単結晶 / 不均一光反応 / アントラセン誘導体 |
研究開始時の研究の概要 |
有機結晶材料の固体物性変化は、結晶中における分子の構造変化に起因する。通常、この構造変化は、単結晶X線構造解析によって正確に捉えることができ、なぜそのような固体物性変化が起きるのか?という問いに対して明確な解を与えてきた。しかし、この手法は構造変化の前後を“静的”に捉えたものであり、“動的”な固体物性変化ダイナミクスを捉えることはできない。そこで本研究では、フォトメカニカル結晶を研究対象とし、顕微分光によってその光反応を動的に捉えると同時に、光照射による結晶サイズ変化を同時に測定することで結晶中の光反応速度論に基づいた動的なフォトメカニカル応答の理解を目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、アントラセン誘導体(9-メチルアントラセン、9-アセチルアントラセン、9-アントラアルデヒド、9-シアノアントラセン)の4種類の微小単結晶における光反応に着目し、分子レベルでの光反応速度論解析および光学顕微鏡スケールでの光化学反応の進行過程について検討した。本研究助成で導入したハイパースペクトルカメラを用いてアントラセン誘導体微結晶の光二量化反応に伴う吸光度減衰を測定したところ、9-アントラアルデヒドおよび9-シアノアントラセンでは、その吸光度減衰が9-メチルアントラセンおよび9-アセチルアントラセンの場合と比較して顕著なシグモイド曲線を描いた。この結果から、9-アントラアルデヒド、9-シアノアントラセンでは協同的な光反応過程が、反応の進行に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、光学顕微鏡スケールにおいて、9-アントラアルデヒド、9-シアノアントラセンでは結晶の端から中心に向かって反応が進行していく不均一光反応が観測された。この違いは結晶中の光反応に伴う分子配列・パッキングの変化によるものであると考えられる。現在、これらの成果をまとめて、学術論文として投稿する予定である。また、1,4-フェニレンジアクリル酸ジメチルの微小単結晶においても、協同的光反応が進行することを確認し、さらに光反応に伴う特異な結晶形状変化を見出した。現在、そのメカニズムについて検討を行っている。さらに、新規フォトクロミック分子の開発にも取り組んだ。フォトクロミック分子であるジアリールエテンの反応点に窒素を組み込んだアザジアリールエテンを新たに開発し、高速フォトクロミズムを示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のアントラセン誘導体について、結晶中における光反応を検討したところ、分子レベルでの協同的な光反応過程の存在、結晶端での高い光反応性、光反応に伴う大きな分子構造・パッキング変化が、光学顕微鏡スケールでの不均一な光反応の進行に重要であることが明らかとなってきている。また、他の分子系である1,4-フェニレンジアクリル酸ジメチルの微小単結晶においても同様の不均一光反応が進行することを見出し、不均一光反応に由来する特異な結晶形状変化を見出している。また、新規フォトクロミック分子の開発にも成功しており、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
光学顕微鏡スケールで不均一光反応が進行する理由・支配因子を明らかにするため、他の光反応分子の微小単結晶における光反応を網羅的に検討する。また、数値シミュレーションプログラムを導入し、実験結果をよく再現するためには、どのような反応条件(結晶端、結晶中央でのそれぞれの量子収率など)が必要であるかを検討する。また、本年度新たに見出した1,4-フェニレンジアクリル酸ジメチルの微小単結晶における特異な結晶形状変化について、分子パッキングがどのように変化すれば、実験結果をよく再現できるかを検討し、メカニズム解明を行う。さらに、新たなフォトクロミック分子開発に向けて、本年度に見出したアザジアリールエテンの誘導体を様々合成し、新奇機能をもったフォトクロミック分子の開発を行う。
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