研究課題/領域番号 |
23K26620
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補助金の研究課題番号 |
23H01927 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井村 考平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80342632)
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研究分担者 |
長谷川 誠樹 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50962487)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | ナノ光増強場 / 光場制御 / 強結合 / ナノ物質 / プラズモン |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ物質は,光と強く相互作用することから,物質の機能を決定する光増強場の制御に有望です。ナノ物質の電子状態間の強結合相互作用により,物質機能が向上すると期待されます。これを実現するために,強結合系における光増強機構を本質的に解明することが重要です。本課題では,ナノ物質強結合系における電子状態制御の学理を構築し,光化学反応や光エネルギーの効率的利用などナノ物質の新機能開拓を目指します。
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研究実績の概要 |
本課題では,光場制御を用いたナノ物質強結合系の光励起状態の制御と金属薄膜上のナノ物質集合体の光強結合状態の制御,またプラズモン-エキシトンの動的空間制御と状態制御に取り組み,ナノ物質強結合系における光物性制御とその伝達制御の学理構築を目指す計画である。本年度は,ナノ物質の光励起状態制御と強結合状態の顕微分光研究に取り組んだ。ナノ物質の光励起状態制御では,Si多量体と金ナノプレートを研究対象とした。前者の多量体では,入射偏光に軸対称偏光などを用いると特異な発光スペクトル特性を示すこと,励起確率が入射偏光に大きく依存することが明らかとなった。また,非線形発光を励起すると異なる発光特性を示すことも明らかとなった。金ナノプレートを用いた研究からは,サイズに応じて特異な励起空間パターンとなること,これが電磁気学シミュレーションでよく再現することが明らかとなった。強結合状態を用いた光制御を実現するために,遷移金属ダイカルコゲナイドと金ナノ物質のハイブリット体やCsPbBr3マイクロプレートの顕微分光計測を進めた。前者の系では,遷移金属ダイカルコゲナイドが光励起により加熱され発光スペクトルが変調されること,これを利用することで強結合状態の制御が可能であることを示唆する結果が得られた。後者のマイクロプレートの研究からは,発光スペクトルに周期的なピーク構造が観測されること,そのピーク間隔のプレートサイズ依存性から,エキシトンとキャビティーの強結合が実現していることを示唆する結果が得られた。さらに,この構造に金の薄膜を組み合わせることで,発光が増強することが明らかになった。このことは,プラズモンとエキシトンの強結合により,さらなる状態制御が実現することを示唆する。今後は,これらの系に光場制御を導入し,光励起状態の制御を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに軸対称偏光を用いた計測から,金ナノ物質の光学選択則を明らかにしている。これを強結合系に拡張することで,空間選択的な電子状態制御が可能となる。これまでに,これららの研究目的が実現することを示唆する結果が得られている。また,遷移金属ダイカルコゲナイドと金ナノ物質のハイブリット体を用いた計測から,新たな状態制御法が確立できつつある。CsPbBr3マイクロプレートを用いた計測からも強結合状態に関する新たな知見が得られつつある。さらに,これにプラズモンを相互作用させることで新たな展開があることを見出している。ベクトルビームの制御は,空間位相変調器を用いたビーム整形について調整法を習得している。今後,これを利用することで,より制御性が向上すると考えられる。電磁気学計算では,ベクトルビームを用いたシミュレーションを概ね実装しており,これを用いたスペクトル評価,また光励起像の評価が可能となっている。強結合状態を実現するハイブリット構造についても,ナノ物質間の相互作用の制御性を向上させる機構を考案し,その実現に向けた取り組みをはじめている。以上のように相応の成果が得られていることから,概ね順調に研究が進捗していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで概ね研究計画に沿って進んでいることから,今後も当初の計画にしたがい進める計画である。具体的には,強結合系として,プラズモンとエキシトンの相互作用を利用する。これまでにエキシトンが励起される系として,有機結晶や半導体を利用してきている。これらに加えて,遷移金属ダイカルコゲナイドやペロブスカイト結晶も有用であることが明らかになってきており,これを利用する計画である。エキシトンとプラズモンの相互作用を増強し,精密に制御するために,原子レベルで平坦な金属薄膜を利用することも検討している。この薄膜上では,エキシトンが励起されるナノ物質との距離を精密に制御することが可能である。これまでの検討から,そのような系において,特異な電子状態が発現することが明らかになっており,その状態をベクトルビームにより制御する計画である。ビームの整形には,空間可変リターダーや空間位相変調器を利用する計画である。さらに,時間分解計測と組み合わせて,ナノ物質強結合系の時空間制御法の学理を構築することを目標とし,研究を進める計画である。
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