研究課題/領域番号 |
23K26623
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補助金の研究課題番号 |
23H01930 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 認定NPO法人量子化学研究協会 |
研究代表者 |
中嶋 浩之 認定NPO法人量子化学研究協会, 研究所, 部門長 (80447911)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | シュレーディンガー方程式 / 局所的サンプリング量子アルゴリズム / 自由完員関数理論 / 完員関数選択法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、従来提案されている量子化学の量子計算機アルゴリズムとは別の立場から、中辻によって提案されたシュレーディンガー方程式の厳密解法(exact理論)に対する量子計算機アルゴリズム: Quantum Direct Local Sampling法や反対称化の量子アルゴリズムなどを開発する。本研究提案では、量子計算機シミュレーションに分子科学的な視点から化学的性質を強調する”振幅増幅”を取り入れ、正確さと同時に大きな原子・分子への拡張性を共に向上させる量子アルゴリズムの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、シュレーディンガー方程式の厳密解法(exact理論)として中辻によって提案されている自由完員関数理論: Free Complement (FC) 理論に対する量子計算機アルゴリズムを開発し、シュレーディンガーレベルの正確な解による化学現象の予言という量子化学の夢の実現に近づけることを目的としている。 2023年度は、衝突領域と漸近領域の正しい条件を満たすCorrect型スケーリング関数の導入によって、FC理論を従来より効率的にexact解に近づける重要な理論的進展があった。Correct型スケーリング関数は、そのflexibilityのため一般に行列要素の積分計算が困難だが、局所サンプリング法: Local Schroedinger Equation (LSE) 理論によって積分困難から解放されたサンプリング法で計算することができた。さらに、従来のメトロポリス法は用いず、原子・分子の特性に合わせて逆変換法によって理性的サンプリング法: Direct Local Sampling (DLS) 法を発展させた。これを、小規模だが星間分子として重要なH4, CH+等に応用し、その基底・励起状態のシュレーディンガーレベルの絶対解として正確なポテンシャル面の計算に成功した。本研究は、DLS法を量子計算機に対し拡張する局所的サンプリング量子アルゴリズム: Quantum Direct Local Sampling (QDLS) 法の開発を目指しており、その理論的基礎を固めることができた。 また、FC理論が生成する完員関数空間から物理的・化学的性質に則して本質的に重要な空間を選択し、少ない自由度で劇的に精度を向上させる完員関数選択法の開発も進展した。このアルゴリズムは一般的な組み合わせ最適化問題と対応し、その量子計算機アルゴリズムの考察も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、本研究が基礎とするシュレーディンガー方程式を正確に解く理論であるFC理論の更なる進展と基礎固めを行うことができた。特に、Correct型スケーリング関数の導入によるexact解への収束の加速や、局所サンプリング法: LSE理論に対する理性的サンプリング法: DLS法の開発とその具体的な応用は、これらを量子計算機アルゴリズムへ拡張するための重要なステップとなった。また、本研究における従来の分子軌道法とは異なる局所的な波動関数の記述は、量子計算機シミュレーションに分子科学的な視点から化学的性質を強調する”振幅増幅”を取り入れるものであり、正確さと同時に大きな原子・分子への拡張性、さらに理解に繋がる波動関数の構築に繋げることができた。また、FC理論が生成する完員関数群から本質的に重要な空間を選択する完員関数選択法の開発は、古典計算機の段階でも極めて効率的であることが様々な応用計算の上で実証された。さらに、このアルゴリズムが組み合わせ最適化問題と対応することから、その量子計算機アルゴリズムの開発によってさらにexact計算を効率化する可能性を検討した。これらの成果は、今後の研究の基礎になるものであり、研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、従来から提案されている量子化学の量子計算機アルゴリズムとは全く別の立場で、シュレーディンガー方程式の厳密解法(exact理論)に対する量子計算機アルゴリズム開発を行うものであり、様々な観点から未踏の挑戦的な課題にチャレンジしていきたい。 まず、DLS法を量子計算機に対し拡張する局所的サンプリング量子アルゴリズム: QDLS)法の開発を継続して進める。古典計算機上では、多電子系になるほど多次元空間の極めて希薄なサンプリング点しか扱うことができないという宿命的な問題がある。一方、量子計算機上では、サンプリング点の各電子座標を量子的に扱うことで、あらゆるgrid点を間引くことなく内部的に計算することが可能になると考えられる。その結果、系が大きくなったときの点の希薄化による精度ロスが防がれ、FC理論によるexact計算の可能性を大きく拡張できる。さらに、化学の本質はそもそも”局所的である”という本質に基づき、その局所的な電子密度に沿った逆変換法によって、精度を損なうことなく効率的にサンプリング空間を少なくする。量子計算機アルゴリズムに組み込むことで、指数関数的な計算加速に繋げられる可能性がある。 さらに、完員関数選択法に対する量子計算機アルゴリズムの開発も進める。組み合わせ最適化問題に特化した量子アルゴリズムを活用するなど、簡単なところから具体的な応用を考察していきたい。
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