研究課題/領域番号 |
23K26625
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補助金の研究課題番号 |
23H01932 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
西 弘泰 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (70714137)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 光電気化学 / ナノ加工 / ナノ周期構造 / キラルナノ構造 / ボトムアップ法 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノサイエンスやナノテクノロジーの発展とともに、如何にして望み通りのナノ構造を作製するか、という「ナノ加工技術」の重要性が年々高まっている。本研究では、ボトムアップ型アプローチの利点を踏襲しつつ、トップダウン型アプローチが得意とする構造も作製可能なナノ加工技術を、申請者が知見を蓄積してきた、ナノ材料の光電気化学に立脚して確立する。これまでになかった発想とアプロ―チで、光を吸収する物質であれば種々のナノ構造へと加工することができる、超汎用的なボトムアップ型ナノ加工技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、鉛(II)イオンを含む電解液中に浸漬した透明電極に、一定の電位を印加しながら可視光の直線偏光を照射するだけで、酸化鉛(IV)のグレーティング状のナノ周期構造が形成されることを明らかにした。成長過程の追跡や、印加電位に対する依存性の調査、電磁場シミュレーションなどによって、ナノ周期構造の形成機構も詳細に検証した。考えらえる機構は以下の通りである。まず、電気化学反応または光電気化学反応によって透明電極上に酸化鉛の核が生じ、その核が偏光方向に沿って光電気化学的に成長する。異方的に成長した酸化鉛の核が電極上に多数存在している場合、核からの散乱光同士が干渉し、偏光方向に沿った周期的な電場分布が生じる。その電場の強い部分で酸化鉛の光電気化学的な成長が優先的に起こるため、偏光方向に沿ったナノ周期構造が形成される。 一方で、pHの調整が必要ではあるが、照射波長を変化させることで、周期をある程度制御できることも明らかになった。さらに、直線偏光の代わりに円偏光を使用することで、渦を巻いたスパイラル状の酸化鉛キラルナノ構造が形成されることも明らかになっており、現在形成機構の考察を行っている。 酸化鉛だけでなく、金属ナノ粒子の光電気化学的ナノ加工に関する成果も得られてる。例えば、金-銀合金ナノ粒子を円偏光で光電気化学的に脱合金化することによって、キラルなナノポーラス構造が作製できることが明らかになった。また、金ナノ粒子上に酸化鉛を部位選択的に導入する光ナノ加工において、金の表面酸化反応を利用することで、酸化鉛の導入部位の部位選択性を向上できることも明らかになった。さらに、金属ナノ粒子と表面酸化反応に関する研究を進める中で、金ナノ粒子二量体のプラズモン共鳴特性を、表面酸化反応によって大きく変調できることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の当初の目標であった、酸化鉛ナノ周期構造の形成機構の解明や、周期の制御に成功しただけでなく、円偏光を用いたキラルナノ構造の作製も当初の計画よりも早く実現できている。さらに、キラルナノ構造の形成機構も明らかになりつつある状況である。また、酸化鉛ナノ構造だけでなく、金属ナノ粒子・ナノ構造の光ナノ加工に関する研究成果もいくつか得られていることから、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
光電気化学的な酸化鉛ナノ構造の作製については、できる限り早急に円偏光照射下でのスパイラルキラルナノ構造の形成機構を明らかにする。形成機構はある程度は明らかになっているが、円偏光の回転方向から予想される構造と、実験で得られた構造でスパイラル(渦)の巻き方が逆転するケースが見られるため、その原因を実験とシミュレーションの双方から検証する。さらに、酸化鉛以外の材料に本手法を適応することを目指す。具体的には、硫黄原子を含む分子と金属イオンを含む電解液中で透明電極に偏光を照射し、金属硫化物のナノ構造を作製することなどを試みる。酸化物や硫化物のような化合物だけでなく、プラズモン共鳴を示す金や銀でナノ周期構造あるいはキラルナノ構造を作製できないかも検討する。一方で、上記のような光電気化学的な析出によるナノ加工だけでなく、作製したナノ構造の溶解に基づくナノ加工が可能かどうかを検証し、作製できるナノ構造のバリエーションを増やすことを目指す。 金属ナノ粒子・ナノ構造を用いた光ナノ加工については、これまであまり注目されてこなかった金の表面酸化反応を、光ナノ加工やプラズモン共鳴特性の制御に利用できることがわかってきたため、新しい光ナノ加工法や、新しいクロミック材料への応用を目指して引き続き研究を行う。
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