研究課題/領域番号 |
23K26640
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補助金の研究課題番号 |
23H01947 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 豊 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00334243)
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研究分担者 |
小汲 佳祐 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部機能化学材料技術部マテリアル技術グループ, 主任研究員 (50733763)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | メカノクロミズム / クロミック材料 / 力色材料 / 感圧フィルム / 感圧塗料 / メカノクロミック材料 / フルオレニリデン-アクリダン / セルロースナノファイバー / 圧力測定フィルム / 圧力測定紙 |
研究開始時の研究の概要 |
機械的応力により吸収色を変えるフルオレニリデン-アクリダンについて,新しい機能を付与するための系統的な誘導体合成,熱力学や速度論等の基礎研究,高機能な圧力測定フィルムやセンサーデバイス,クロミック塗料などの開発を目指した応用研究を行う.セルロースナノファイバーや合成高分子との混練,繊維や生地への含浸,真空蒸着,スプレーコート,インクジェット印刷等による良質な薄膜状の力色デバイスの構築と,押圧と見た目の色や特性の変化を数値的に議論する研究を行う.繰り返し使用が可能で高分解能な圧力測定フィルム,クロミック塗料の実用化を目指した研究を行い,革新的な力色デバイス創製による新産業の創出をねらう.
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研究実績の概要 |
押圧により色が変化するメカノクロミック材料(フルオレニリデン-アクリダン,FA)とセルロースナノファイバー(CNF)用いて,機械的な圧力に応じて黄色から緑色へ色が変わる紙を開発した.ナノインプリント試験と紫外可視分光法を組み合わせた定量的な実験により,この色が変化する紙は 25~300 MPa の範囲で機械的圧力に対して線形応答を示した.また,色が緑色に変化した紙にアルコールを噴霧することにより,元の黄色に戻せた.走査型電子顕微鏡や接触角分析などの表面研究により,色の変化の可逆性がCNFの直径に依存することが明らかになった.さらに,CYM色彩解析を用いた簡易な画像処理手法により,機械的圧力の分布を可視化することができた.つまり,押した圧力の数値がわかり,圧力分布を可視化できる,繰り返し使用可能な圧力測定紙として用いることができることを示した. 本研究では,繊維径の異なる3つのCNFを用いてそれぞれメカノクロミックペーパーを作製した.CNFを溶かした水溶液にFA化合物を混ぜ込み,型に流し込んで乾燥させるという非常にシンプルな手順でメカノクロミックペーパーの作製が可能であった.作製したメカノクロミックペーパーは,機械的刺激により黄色から緑色へと色が変化することを確認した.また,圧力応答した緑色の部分は、アルコールとの接触により、応答前の黄色へ戻ることを確認した. また,ポリプロピレン(PP),CNF,FAの混練により,押すと色が変わるプラスチックフィルムを開発した.PP,CNF,FAの比率を変えることにより,また,CNFをセルロースマイクロファイバー(CMF)に変えることにより,感度および分解能を向上させる研究を行っている. 加えて,押圧により静電容量が変化する薄膜デバイスに応用する研究を行った.押圧により電気的特性が変化する有機薄膜デバイスの創製を目指した研究を継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フルオレニリデン-アクリダンとセルロースナノファイバーを用いて作製した押圧により色が変わる紙について,ACS Applied Engineering Materialsに論文を掲載することができた.そのカバーアート案を作成し,Supplemental Cover Artに採択された.グラフィック化したことにより,一般の方に研究の意義や面白さを伝えることができるようになったと感じている.また,この研究成果に対して,大学からプレスリリースを行った.そして日刊工業新聞(https://www.nikkan.co.jp/articles/view/701154)やウェブメディア(https://optronics-media.com/news/20240201/88131/)に取りあげられた.さらに,月刊「化学」雑誌から,解説記事の執筆依頼があり,解説記事を執筆した.これは2024年の夏頃掲載される予定である.企業からの関心もあり,問い合わせを受け,具体的な共同開発の検討にも入っている.以上のことから,この研究は十分に予想より順調に世に出せたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
色が変化する紙については十分に研究ができて,リリースできたので,今後は色が変化するプラスチックフィルムの研究開発に注力する.非極性ポリマー,極性ポリマー(セルロースナノファイバーやセルロースマイクロファイバー),フルオレニリデン-アクリダンの混練により実現したいと考えている.こちらのフィルムは,圧力測定フィルムとしてより現実の製品に近づく形となる.また,企業との共同研究を開始し,圧力測定フィルムへの応用研究としては産業界へ技術移転していきたいと考えている. 学術的な研究としては,押圧により静電容量や電荷移動度が変化する有機薄膜デバイスを開発したいと考えている.既にそのプロトタイプはできており,そための分子(フルオレニリデン-アクリダン誘導体)を合成しており,単結晶X線構造解析,分子配向測定など,各種データを取得できている.有機薄膜デバイスとして新規性や独自性の高い研究になる可能性がある.画期的な研究に磨き上げ,高いレベルの雑誌に投稿する予定である.
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