研究課題/領域番号 |
23K26641
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補助金の研究課題番号 |
23H01948 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 大貴 京都大学, 工学研究科, 助教 (10845019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
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キーワード | 電子スピン異性体 / 安定ラジカル / 磁性 / 開殻電子系 / ESR / スピン異性体 / ジラジカル / 光化学 / 交換相互作用 / 近赤外色素 |
研究開始時の研究の概要 |
オルト/パラ水素に代表される核スピン異性体は、化学構造が全く等しいにも関わらず、異性体と呼ばれる関係にある。その理由は熱平衡状態において2つのスピン状態が共存可能で、かつ性質が大きく異なる(区別できる)ためであろう。しかし、核スピン異性体は交換対称性の違いに由来して比熱などの物理的性質が異なる一方で、電子に由来する性質は変化しない。では電子スピンに由来してスピン異性体が作られるとき、どのような現象や機能が見いだせるだろうか。 本研究ではそのような疑問に答えることを目指して電子スピン異性体を体系的に創製し、構造や物性の体系的な調査という基礎研究から「スピン-物性相関」に基づく機能開拓までを行う。
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研究実績の概要 |
本年度はジラジカルが示す2つの電子スピン状態が、色で区別可能な「スピン異性体」として扱いうることを初めて報告した。具体的には、トリプチセン架橋により空間を介して相互作用したジラジカルを合成した。このジラジカルはSQUID測定によりS-Tギャップが-3.0 kJ/mol と求められた。このエネルギー差は弱い分子間相互作用として知られるCH/pi相互作用と同等であり、室温において一重項状態と三重項状態にある分子が1:1で共存できるほど小さい。吸収スペクトルの温度依存性から、550-900 nmの領域に一重項状態にある分子のみに由来する吸収帯が確認された。すなわち、2つのスピン状態は吸収スペクトル(色)によって明確に区別できることが分かった。スピン状態依存的な吸収スペクトルの由来は、ラジカルユニット間の電子交換型の遷移であると量子化学計算を用いて結論付けられた。また共同研究によ過渡吸収スペクトルを調査したところ、スピン状態選択的な励起が可能であり、スピン依存的な励起状態ダイナミクスも観測された。この内容は ACS Cent. Sci. に掲載された。 さらに、スピン依存的な特性を示すジラジカルの体系的な創製を目指して様々なジラジカルの合成に取り組んだ。非対称ジラジカルやトリラジカル系などにおいてスピン依存的な光学特性が見出され始めている。また、この研究の中で合成したジラジカルの一電子酸化状態が 2000 nmを超える近赤外領域に強い吸収帯を示すこと、またその励起エネルギーが酸化前の中性状態におけるラジカル間交換相互作用と強い相関を示すことを見出した。この内容については現在、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はジラジカルが示す2つの電子スピン状態が、色で区別可能な「スピン異性体」として扱いうることを報告した。また、スピン状態を色で区別可能なトリラジカル以上のマルチスピン系への展開も順調に進んでいる。 さらに、本研究で生み出されたジラジカルを利用して、当初想定していなかった近赤外エレクトロクロミズム材料への展開も進みつつある。そのため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べた通り、非対称ジラジカルやトリラジカル以上のマルチスピン系への展開を進めるほか、光学特性に限らない物性とスピン状態との相関やその制御法についても明らかにしていきたい。また昨年度得られた知見を活かし、ジラジカルの近赤外エレクトロクロミズム材料としての展開にも取り組む。
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