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ストレッカー合成中間体の不斉増幅によるキラル要因とアミノ酸分子不斉との関連付け

研究課題

研究課題/領域番号 23K26660
補助金の研究課題番号 23H01967 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分33020:有機合成化学関連
研究機関東京理科大学

研究代表者

川崎 常臣  東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (40385513)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2027年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
キーワードストレッカー合成 / アミノ酸 / 不斉の起源 / 円偏光 / 同位体不斉 / ホモキラリティ / 磁場 / 不斉自己触媒反応
研究開始時の研究の概要

ストレッカー合成は、生体を構成する代表的キラル化合物であるアミノ酸の前生物的生成機構と考えられてきた。本研究では、提唱される不斉の起源、とりわけ物理的キラル要因である円偏光、磁場、回転方向、さらには同位体不斉をもとにして、高鏡像体過剰率のアミノ酸をストレッカー合成する。本研究では、従来の、自発的絶対不斉ストレッカー合成にキラル要因を導入することによる立体選択的合成を目指す。キラル要因によってアミノニトリルに不斉の偏りを誘起・増幅し、加水分解によって、対応する絶対配置のアミノ酸を不斉合成する。

研究実績の概要

ストレッカー合成は、アミノ酸の非生物合成と考えられてきた。本研究では、ストレッカー合成と従来の不斉の起源研究を融合し、円偏光、磁場、同位体置換キラル化合物を用いてアミノニトリルの不斉発生・増幅実験をおこなうものである。
円偏光を用いた実験では、アミノニトリルのラセミ化懸濁液に直接232 nmの左右円偏光を照射した。数日間の照射ののち、従来法による不斉増幅をおこなうことで、右円偏光照射下からはL体の、左円偏光照射下からはD体のアミノニトリルが高鏡像体過剰率で高い立体相関性をもって生成することを明らかにした。アミノニトリルの円二色性スペクトルから、溶媒に溶解したアミノニトリルに円偏光が作用して、懸濁固体に円偏光の旋回方向に相関したL体とD体の量的アンバランスもたらしたと想定される。また、円偏光を照射した懸濁液を分析したところ、不斉増幅操作の前段階で既に固体部分には、検出可能な鏡像体過剰率(数% ee)が誘起されていることを明らかにした。有機化合物の異方性因子(g値)から想定される鏡像体過剰率よりも格段に大きな値であり懸濁液への照射に特有の不斉誘導機構が存在することを見出しつつある。
次に、232 nmとは逆のコットン効果を示す270 nmの波長にかえて円偏光を照射した。異方性因子(g値)から、この波長の円偏光の不斉誘導は、232 nmに比べてさらに僅かであり、希薄懸濁液への照射と、引き続く不斉増幅の実験手法を検討した。希薄懸濁液への照射により、溶液中の不斉の偏りを微量の懸濁固体に集約し、大きな鏡像体過剰率を得ることができると考えた。
続いて、磁場を用いた実験では、アミノニトリルの磁気円二色性(MCD)スペクトルを測定し、磁気キラル二色性(MChD)を明らかにした。さらに、水素同位体置換キラル化合物を用いた研究では、置換異性体による同位体のキラル効果を初めて明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、円偏光、磁場(光との組み合わせ)、同位体不斉を起源として、これらのキラル物理力と立体相関性をもったアミノ酸合成中間体(アミノニトリル)を高エナンチオ選択的に合成するものである。以下の(1)から(4)を進捗状況の理由として挙げる。
(1)アミノニトリルのラセミ化懸濁液に直接232 nmの左右円偏光を照射した。数日間の照射ののち、従来法による不斉増幅をおこなうことにより、右円偏光照射下からはL体の、左円偏光照射下からはD体のアミノニトリルが高鏡像体過剰率で高い立体相関性をもって生成することを明らかにした。
(2)超高圧水銀ランプを用い、専用の各種光学フィルタ(干渉フィルタ、偏光フィルタ、1/4波長板)を組み合わせて、270 nmの左右円偏光をアミノニトリルのラセミ懸濁液に照射する実験装置を作成した。
(3)磁場と非偏光を組み合わせた不斉誘導実験の照射波長を決定する目的で、磁気円二色性(MCD)スペクトルを測定し、対象化合物の磁気キラル効果に関する異方性因子(g値)を算出した。その結果、232 nmの非偏光を強磁場中でアミノニトリルに照射することが、最も大きな磁気キラル効果を得られることが想定され、今後の実験方針を確定した。
(4)同位体置換キラルアミンを用いる立体選択的ストレッカー合成では、重水素の置換異性体を合成し、各異性体がストレッカー合成の不斉源として有効に作用することを不斉増幅と組み合わせることにより明らかにした。また、各異性体から生成するアミノニトリルの溶解度精密測定により、増幅方向が同位体ジアステレオマーのわずかな溶解度差に起因すること、すなわち増幅方向と溶解度差に矛盾がないことを確認した。立体選択性が反転する現象では、置換異性体の安定配座に着目し、理論計算と実測ECDとの比較により検証する方針とした。

今後の研究の推進方策

(1)円偏光を起源とするアミノニトリルの不斉増幅に関しては、232 nmの円偏光とは逆の立体相関性が期待される270 nmの円偏光を用いた研究を推進する。異方性因子より、232 nmの円偏光に比べて不斉誘導が小さいことが想定され、希薄懸濁液への円偏光照射と続く増幅実験により立体相関性を得る。さらに、円偏光をラセミ化溶液に懸濁した固体に照射した際の、不斉誘導プロセスを確実なものとするため、固体に直接円偏光を照射しながら、昇華などの不斉発生プロセスを検証する。
(2)磁気キラル二色性を起源とする不斉発生・増幅実験では、非偏光の波長を確定することができた。高効率な不斉誘導が想定される232 nmの非偏光を用いて、強磁場中でラセミ化懸濁液に光照射し、不斉増幅する。その結果を受けて、照射時間や懸濁濃度など必要な検討をおこなう。
(3)水素同位体置換キラル化合物の置換異性体を用いた実験では、計算科学手法を用いた理論計算により、同位体置換によって誘起される配座の不斉を明らかにする。実測のECDスペクトルでは、200 nm前後の波長におけるコットン効果を高感度に識別可能な測定条件を探索する。
(4)シアノヒドリンのキラル結晶化に基づく不斉発生・増幅実験では、既に見出したコングロメレート形成するシアノヒドリンのラセミ化機構を探索し、望まない副反応を最小限に抑えた不斉増幅方法を明らかにする。
(5)左右の回転(撹拌)による不斉誘導に関しては、コングロメレート形成する左右のキラル結晶を高効率に連続的に粉砕可能な仕組みを探索する。必要に応じて、スターラーの左右撹拌や、エバポレーターの左右撹拌などを組み込んだ不斉発生・増幅実験を実施する。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (19件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Asymmetric Autocatalysis with Amplification of Enantiomeric Excess utilizing Chiral Crystals of Achiral o-Terphenyls as Chiral Triggers.2024

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Tsuneomi, Tateishi Daisuke, Matsumoto Arimasa, Soai Kenso
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 152 ページ: 133835-133835

    • DOI

      10.1016/j.tet.2024.133835

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Achiral 2‐pyridone and 4‐aminopyridine act as chiral inducers of asymmetric autocatalysis with amplification of enantiomeric excess via the formation of chiral crystals2023

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Arimasa、Tateishi Daisuke、Nakajima Tsuyoshi、Kurosaki Shiori、Ogawa Tomohiro、Kawasaki Tsuneomi、Soai Kenso
    • 雑誌名

      Chirality

      巻: 36 号: 1 ページ: 23617-23617

    • DOI

      10.1002/chir.23617

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chirally and chemically reversible Strecker reaction2023

    • 著者名/発表者名
      Machida Yutaro、Tanaka Yudai、Masuda Yuya、Kimura Aya、Kawasaki Tsuneomi
    • 雑誌名

      Chemical Science

      巻: 14 号: 17 ページ: 4480-4484

    • DOI

      10.1039/d3sc00359k

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アミノニトリルおよびシアノヒドリンの昇華による不斉増幅2024

    • 著者名/発表者名
      井上拓実、川﨑常臣
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] キラリティ反転を伴う可逆的固相ストレッカー反応と引き続く不斉増幅2024

    • 著者名/発表者名
      増田雄也、川﨑常臣
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] キラルアミジンを不斉触媒とするエナンチオ選択的ストレッカー反応2024

    • 著者名/発表者名
      伊吾田光平、町田雄太郎、川﨑常臣
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] アキラルなピリミジン-5-カルバルデヒドが形成するキラル有機結晶を基質とする気相不斉イソプロピル化反応と引き続く不斉自己触媒反応2024

    • 著者名/発表者名
      小川智央、立石大佑、硤合憲三、川﨑常臣
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Generation and amplification of enantioenriched aminonitriles, chiral intermediate of abiotic amino acid synthesis2024

    • 著者名/発表者名
      Tsuneomi Kawasaki
    • 学会等名
      SKCM2 Spring symposium in Nara
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Asymmetric Strecker amino acid synthesis mediated by CPL irradiation to the chiral intermediate aminonitrile2024

    • 著者名/発表者名
      Tsuneomi Kawasaki
    • 学会等名
      Joint CO world & 12th ELSI Symposium
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ラセミアミノニトリル懸濁液への円偏光直接照射による不斉誘起とその増幅2023

    • 著者名/発表者名
      加瀬千寛、河野駿、池崎颯志、久保田直希、川﨑常臣
    • 学会等名
      第85回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Chirally and chemically reversible solid-state Strecker reaction2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuneomi Kawasaki, Yutaro Machida, Yudai Tanaka, Yuya Masuda, Aya Kimura
    • 学会等名
      Chirality 2023; ISCD-33
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] アミノ酸合成中間体のキラル結晶化を基軸とする不斉ストレッカー合成2023

    • 著者名/発表者名
      川﨑常臣
    • 学会等名
      シンポジウム モレキュラーキラリティー2023 (MC2023)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] アキラルな2-ピリドンが形成するキラル結晶を不斉源とする高エナンチオ選択的不斉自己触媒反応2023

    • 著者名/発表者名
      立石大佑、小川智央、黒崎しおり、中嶋剛志、松本有正、硤合憲三、川﨑常臣
    • 学会等名
      シンポジウム モレキュラーキラリティー2023 (MC2023)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] シアノヒドリンおよびヒドロキシ酸が不斉触媒として作用するエナンチオ選択的ストレッカー反応2023

    • 著者名/発表者名
      新倉航平、加藤柾、角森陽介、小林諒大、川﨑常臣
    • 学会等名
      シンポジウム モレキュラーキラリティー2023 (MC2023)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] キラル結晶化するラセミシアノヒドリンによる不斉認識と類縁化合物の不斉増幅2023

    • 著者名/発表者名
      金勇杜、満尾綾音、瀬川卓杜、川﨑常臣
    • 学会等名
      シンポジウム モレキュラーキラリティー2023 (MC2023)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 円偏光照射によるアミノ酸合成キラル中間体の高エナンチオ選択的合成とその不斉誘導機構の検証2023

    • 著者名/発表者名
      河野駿、加瀬千寛、久保田直希、川﨑常臣
    • 学会等名
      第84回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] Asymmetric autocatalysis and the origins of homochirality. in Guidebook for Systems Applications in Astrobiology (Ed. by Vera M. Kolb), Chap. 7, pp. 138-1632023

    • 著者名/発表者名
      Kenso Soai, Tsuneomi Kawasaki, Arimasa Matsumoto
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      CRC Press (Taylor & Francis Group)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] 生命起源の事典(編集 薮田ひかる、他)不斉自己触媒反応、第4章-23、pp. 232-2332023

    • 著者名/発表者名
      川﨑常臣・硤合憲三
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      9784254160789
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [備考] 東京理科大学理学部応用化学科 川崎研究室

    • URL

      https://www.rs.tus.ac.jp/tkawa/

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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