研究課題/領域番号 |
23K26685
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補助金の研究課題番号 |
23H01992 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
安川 智之 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (40361167)
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研究分担者 |
鈴木 雅登 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (60574796)
湊元 幹太 三重大学, 工学研究科, 教授 (80362359)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 誘電泳動 / 細胞アレイ / 細胞融合 / 電気回転 / 抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ウェルアレイ電極を用いた誘電泳動による超高速で簡便な細胞操作技術を基盤とした下記の4項目を融合し,標的抗体を産生するハイブリドーマを高効率に取得する方法を確立する.「1.多種類細胞の中から標的のB細胞の選択的なアレイ化」,「2.B細胞-ミエローマ細胞ペア形成と電気パルス融合」,「3.細胞のウェル内電気回転法を利用した標的B細胞識別」および「4.不要な細胞の排除による標的細胞の選択培養」の一連の操作を可能とする細胞チップの開発を行う.
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研究実績の概要 |
本提案は,完全ヒト抗体産生ハイブリドーマを,高効率,簡便,迅速に取得する方法の確立を最終目標とし,「1.多種類細胞の中から標的のB細胞の選択的アレイ化」,「2.B細胞-ミエローマ細胞のペアアレイの形成と高効率電気パルス融合」,「3.細胞のウェル内電気回転法を利用した標的B細胞の抗体産生能の評価と識別」および「4.不要な細胞の排除による高効率な抗体産生細胞の選択培養」を標的B細胞にラベル化することなく連続して行えるシステム構築を目的とする.マイクロウェルアレイ電極を用いた誘電泳動により,標的B細胞と標的外細胞を含む混合懸濁液の中から,標的B細胞のみをウェルに捕捉してB細胞アレイを構築できることを示した.ここでは,細胞への微粒子固定化を利用しているが,標的外細胞に免疫反応を介して微粒子を固定化し,有用なB細胞には一切の修飾が不必要である.これは,有用細胞の選択濃縮に直結するとともに,今後の細胞融合においてあらかじめ有用な細胞だけを選択しておく有効な前処理法となる.また,上記と同様のデバイスを用いると,ウェル内に異種細胞ペアを迅速で簡便に形成することができた.ここに矩形波電気パルスを印加することにより,細胞を融合することができる.また,ウェル電極表面への薄膜形成は高電圧パルスに曝された細胞の破砕抑制効果があることがわかった.今後,融合効率の向上のため,各種電圧パルス等の最適化が必要な状況である.さらに,このデザインの電極を用い,ウェル内に捕捉した細胞を縦方向に電気回転できた.3電極細胞電気回転および縦方向回転ともに,これまでに報告がない新規手法である.3電極により電極デバイスの作製が簡便になり,縦方向に回転させることによりウェル底面と接触する細胞表面位置を経時的に変更できるため,予定している細胞表面タンパク質と底面に固定化したタンパク質の相互作用調査が可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画で予定していた1-3項目に取り組んだ. 「1」では,複数種類の細胞が存在する懸濁液をマイクロウェルアレイ電極を有する流路型デバイスに導入するだけで標的のB細胞のみをウェル内に捕捉した.標的B細胞以外の細胞に発現する表面タンパク質群に対する抗体カクテルを修飾した微粒子と細胞懸濁液を混合し,標的B細胞以外に微粒子を固定化した.特定の周波数領域の交流電圧を印加すると強い誘電泳動力の作用するB細胞のみがウェル内に捕捉されてアレイ化された.また,微粒子固定化細胞に作用する誘電泳動挙動の理論計算と実験結果が一致した. 「2」では,正の誘電泳動を用いて長方形型のマイクロウェルアレイにB細胞―ミエローマ細胞ペアの形成と細胞ペアの電気パルス融合を行った.両細胞を順にデバイス内に導入し,正の誘電泳動を作用させるとウェル内の片側にB細胞をもう片側にミエローマ細胞を一選択的に捕捉しペア形成できた.ちなみに,このペア形成に要する時間はわずか1分程度である.ウェル内に配置したサイズの小さいB細胞に強電場パルスを印加することにより,サイズの大きなミエローマ細胞の破砕を抑制して両細胞の電気パルス融合が可能であることを示した. 「3」では,ウェル内に捕捉された細胞を3電極式の電気回転デバイスを用いて縦方向に電気回転することができた.正の誘電泳動による細胞捕捉の際に複数の細胞が捕捉されることがあるが,細胞のウェル内捕捉後に負の誘電泳動を用いて数秒で単一細胞アレイ化する方法を開発した.電気回転の周波数を交差周波数近傍にすることにより,経時的に安定した細胞回転が可能であった. また,ウェルアレイ電極を用いた誘電泳動によるリポソームの捕捉と放出に関する研究を遂行し,電気化学計測を組み合わせることにより免疫測定が可能であることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,初年度実施した3項目について下記の通り展開する. 「1」では,標的細胞以外の細胞に微粒子を固定化することにより、誘電泳動を用いた標的細胞と微粒子固定化非標的細胞の分離を行った。今年度は、印加電圧、印加周波数、懸濁液送液速度に対する分離効率について最適化を行い理論計算との比較検討を実施し学術論文発表を行う。これを免疫化マウスから摘出した脾臓細胞に適用し、抗体を発現したB細胞のみをマイクロウェル内に選択的に捕捉する手法を確立する。 「2」において,マイクロウェル内への異種細胞(ミエローマ細胞とB細胞)のペア形成を達成した。電気パルスの印加に伴う細胞の破砕を軽減するために,ウェルアレイ基板上にPDMSエマルジョンの薄膜を形成し,細胞と電極エッジの直接接触を防止した.すると,破砕率は低減したが、細胞の融合効率は極めて低かった。そこで,ウェルサイズの最適化およびペア形成後に負の誘電泳動を利用して細胞接触状態を維持する手法の効果を検証する.また,細胞表面に金ナノ粒子等で導電性をもたせ,電極により形成される外部電場を異種細胞の接触領域に集中させて融合効率の向上を図る予定である. 「3」では,マイクロウェルアレイを用いた細胞の電気回転において,特定の細胞表面抗原に対する抗体を固定化したウェルを用いると,細胞の回転速度が減少する可能性を示した.この現象を追跡するためには,細胞回転中心のウェル内z方向位置が極めて重要である.そこで,今年度は,細胞の電気回転における回転中心のz方向位置制御を行う.これをデバイス上面に設置した電極への印加電圧制御で達成し,電圧強度と回転中心位置の関連を調査し理論計算と比較する.これにより,各種細胞の発現抗原を調査し分化誘導と表面抗原の連関調査へと展開する. 今年度は,4つめの研究対象であるウェル内での細胞培養およびウェルから回収した単一細胞の培養を行う.
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