研究課題/領域番号 |
23K26696
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補助金の研究課題番号 |
23H02003 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
船曳 一正 岐阜大学, 工学部, 教授 (50273123)
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研究分担者 |
松尾 豊 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00334243)
萬関 一広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30379135)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 赤外光吸収色素 / 有機系太陽電池 / 色素増感型太陽電池 / 赤外光吸収有機色素 / 酸化物半導体 / 単層カーボンナノチューブ |
研究開始時の研究の概要 |
従来の太陽電池は、可視光を吸収し光電変換するため、黒、青に着色している。しかしながら、目に見えない赤外光のみを光電変換できれば、「無色」太陽電池が可能になる。この「無色」太陽電池の実現は、従来の概念を覆し、景色などの可視光をそのままの色で透過させつつ、発電することである。申請者は、既に独自に開発した赤外光のみを吸収する可視光透過型有機色素と無色透明有機レドックス対によって、世界初の無色透明DSSCを開発・発表し、注目された。本研究では、この赤外光のみを利用する無色太陽電池の光電変換効率を大きく飛躍させるには、何が必要かを明らかにし、独自に開発した「無色透明」DSSCの高性能化に挑戦する。
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研究実績の概要 |
従来、未利用の赤外光を変換する可視光透過型の赤外光有機太陽電池は、その性能が十分でない。本研究ではその高性能化を目的とする。まず、長波長の近赤外光を吸収できる新規ヘプタメチンシアニン(HMC)色素の開発に成功した。この新規なHMC色素を用いた色素/酸化チタン複合薄膜の長波長側の吸収端は、これまでの薄膜より150 nm長波長シフトし1000 nmまで吸収可能な色素/半導体複合電極の調製に成功した。半導体として、電子移動度が高く、かつHOMO-LUMOギャップが小さい赤外光色素分子との組み合わせに適する酸化物半導体として酸化スズを選択し、光電極の基盤材料となる酸化スズナノ粒子の化学合成を進めた。その結果、有機のナノ構造制御試薬(Structure Directing Agent: SDA)を酸化スズ合成の際に共存させる溶液プロセスおよびSDA不要の溶液合成法の2種の反応ルートを新しく構築できた。さらに、ヨウ素アニオンを対アニオンに持つ近赤外光吸収HMC色素を新規p-ドーパントとして導入した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、何もドープしていないSWCNTに比べて、高性能ペロブスカイト太陽電池の金属電極の代替品として十分に機能することをあきらかにしただけでなく、その高性能化にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子供与性置換基を有するヘプタメチンシアニン(HMC)色素の開発に成功した。この新規HMC色素を酸化チタンに吸着させたところ、600~1000 nmの近赤外光を非常に幅広く吸収できる色素/半導体複合電極の調製に成功した。 半導体薄膜の調製に関しては、L-フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩をSDAとして利用し、塩化スズ(IV)を用いて、サイズ分布が小さいシングルナノメートルスケール酸化スズ微粒子の溶液合成に成功した。特に、反応温度を制御することで、酸化スズ微粒子が高分散した溶液を電極の製膜原料として得ることができた。一方、同じスズ塩の原料を用い、SDA不要の低温微粒子合成プロセスも確立した。 近赤外光のみを吸収できるHMC色素を新規p-ドーパントとして導入した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、導電率の向上、透過率の向上、フェルミ準位の下方移動などの優れた特性を示し、従来の正孔輸送層を持たないペロブスカイト太陽電池の金属電極の代替品として機能するだけでなく、EQE、電流値、ffの向上により、変換効率の向上を達成できた。 すべての項目において、十分な成果を見出しており、研究は当初の計画以上に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
合成したHMC色素の酸化電位、還元電位、光安定性、熱安定性(TG-DTA)を測定し、合成した赤外吸収色素をナノ構造半導体に吸着、および、共吸着させた色素/半導体複合電極の調製、陽電池セルの作成、太陽電池特性を評価する。 見出した2種類の合成法で得られた半導体微粒子の微細構造を明確化するとともに、ナノ粒子の製膜法を確立する。新規色素の最適吸着条件を見出すため、微粒子サイズ・熱処理条件を系統的に変えた多孔質酸化スズ薄膜基板を作製する。さらに、発電の制限因子となる電荷再結合を効果的に抑制するため、酸化チタンを被覆した酸化スズ薄膜基板の作製を進める。 HMC色素をドープした単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用いた高性能ペロブスカイト太陽電池の結果を整理し学術論文として発表するとともに、他の近赤外吸収有機色素、例えば、スクアリリウム色素やクロコ二ウム色素を新規な有機太陽電池やペロブスカイト太陽電池に利用展開する。
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