研究課題/領域番号 |
23K26702
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補助金の研究課題番号 |
23H02009 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
井本 裕顕 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (40744264)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 有機元素化学 / 高分子材料 / 触媒化学 / 高分子化学 / 光化学 / 電気化学 / 構造有機化学 |
研究開始時の研究の概要 |
高分子材料に求められる性能・機能が高度化するにつれて、有機無機ハイブリッドの研究は右肩上がりに増え、様々な無機元素が高分子に組み込まれてきた。特に光・電子材料では、金属錯体を含んだ高機能高分子が開発されたが、稀少な貴金属に代わって機能と耐久性を両立できる元素が探索されている。本研究では、高分子材料に高度な機能と高い安定性を付与できることが期待される「ヒ素」に着目し、これまでに確立してきた有機ヒ素化合物の合成ルートを駆使して全く新しい高分子材料を開発する。発光色素・光触媒・有機電池としての機能を探索し、革新的な材料設計指針を確立する。
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研究実績の概要 |
a高分子材料に求められる機能が高度化するにともなって、有機無機ハイブリッドが盛んに研究され、様々な無機元素が高分子に組み込まれてきた。特に光・電子材料では、金属錯体を含んだ高機能高分子が開発されたが、稀少な貴金属に代わって機能と耐久性を両立できる元素が探索されている。本研究では、ヒ素を活用した革新的高分子材料を開発することを目的とする。 2023年度は、共役ヒ素ユニットを開発するとともに、高分子化と機能開拓に取り組んだ。新たな共役系として、ヒ素とホウ素が共役系に共存したアルサボリン誘導体を初めて合成することに成功した。特に、チオフェン縮環アルサボリンではモノマー発光・エキシマ―発光・燐光の3種類の強度比が温度によって鋭敏に変化し、室温以下の低温域で多彩な発光色を示すことが分かった。また、ジチエノアルソールに溶解性を付与するための長鎖アルキルを導入する新たな合成法を開発し、共役系高分子を合成した。コモノマーとして電子アクセプターの共役系を用いることで、発光極大が近赤外領域にまで至った。 共役ヒ素ユニットであるジピリジノアルソールを配位子として亜鉛と金属有機構造体(MOF)を合成した。その結果、MOF内部のゲスト分子を放出することで孔が閉じ、ガス圧をかけることで孔が開いて吸着が起こる”Breathing現象”を示すことが分かった。リン類縁体では同様の挙動は観測されず、ヒ素に特有であることが分かった。 さらに、本研究で開発するヒ素材料の懸念として、使用後に廃棄する際の環境影響が挙げられる。そこで、最も用いられる共役ヒ素ユニットであるアルソール骨格からのヒ素のケミカルリサイクルプロセスについて検討した。その結果、光照射によってアルソール誘導体の分解・元素回収可能に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、ヒ素を含んだ新たな共役ユニットの開発・汎用性の高いモノマー設計と機能性高分子の開発・共役ヒ素ユニットのMOFへの新たな展開・社会実装を見据えたリサイクル技術開発を行った。新たな共役ヒ素ユニットであるアルサボリンは、様々な誘導体を合成することができ、温度応答性発光などのユニークな特性が見つかっている。重合性官能基の修飾も可能であることから、新たな高分子材料へと発展することが期待できる。優れた発光性や光触媒機能をもつことがわかっているジチエノアルソールに対して、溶解性付与と平面性確保が同時に可能となるモノマーを設計する手法が確立できたため、組み合わせることのできるモノマーの幅が大きく拡大した。特に、電子アクセプターとの組み合わせで近赤外発光を示すことが明らかとなり、他の元素では到達しない領域まで発光が長波長化することは特筆すべき点である。この知見を活かした高分子の設計が期待される。さらに、共役ヒ素ユニットに配位点を導入したジピリジノアルソールでMOFを合成すると、極めて興味深い包接挙動を示すことが分かった。この現象は、元素や置換基に大きく影響を受けることも分かり、元素の特徴を活かした新たな機能性高分子材料といえる。元素種や置換基の異なる誘導体について、今後、さらに展開していく予定である。社会実装を見据えた懸念点であるヒ素の廃棄については、共役ヒ素ユニットからヒ素成分を抜き取って再利用するリサイクルプロセスを提案し、その解決を図っている。まだ基質に制限はあるものの、光照射と沈殿の回収という単純な手法でありながら最大で91%のヒ素成分を回収・再利用することができている。以上、本研究は滞りなく進んでおり、2023年度の進捗状況を「(2)おおむね順調に進展している」とした次第である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、前年度に得られた知見を整理・発展させる。前年度は共役系高分子の発光機能を中心として評価してきたが、今年度は光触媒や電池といった新たな機能展開を検討して、共役ヒ素ユニット含有高分子材料の可能性を拡げる。まず、ジチエノアルソールポリマーについて、一重項酸素・水素・過酸化水素を生成する光触媒能を評価する。様々なコモノマーとの組み合わせを検討して、分子構造との相関を明らかにする。得られた結果を構造にフィードバックすることで、優れた光触媒能をもつ高分子材料を開発する。他元素との比較も行い、ヒ素が機能に与える効果についても併せて検証する。Breathing MOFについては、元素をアンチモンやゲルマニウムに変化させた系を合成し、詳細な構造解析とガス吸着評価を行ってヒ素の役割を明らかにする。必要に応じて動的挙動の直接観察等の評価も加えて、多面的にヒ素のもたらす効果を調査する。
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