研究課題/領域番号 |
23K26709
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補助金の研究課題番号 |
23H02016 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
小門 憲太 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40600226)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 多孔性結晶 / 高分子ゲル / 精密重合 |
研究開始時の研究の概要 |
持続可能な低炭素社会実現のために、超軽量で高強度の材料実現が渇望されている。当該研究者は、炭素のような軽元素でも緻密に三次元高分子網目を組み上げることができれば、これまでの材料作製技術では到達できなかった超軽量高強度材料が実現できる可能性に着目した。本研究では、多官能性モノマーを結晶化により三次元的に固定し、網目構造を精密制御しながら繋ぎ合わせ、三次元的に明確な繰り返し構造を有する高分子網目「精密三次元高分子網目」の合成法を確立し、材料の網目構造と力学特性の関係を調査する。
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研究実績の概要 |
2023年度は多孔性結晶である金属有機構造体(Metal-Organic Framework、MOF)として異方的な結晶構造を有するピラードレイヤー型MOFを用い、方向が規定された重合についての検討を行った。ピラードレイヤー型MOFのピラーにはダイトピック窒素配位子であるピラジンやDABCO、キノキサリン、フェナジン、4,4'-ビピリジンを用い、重合性のレイヤー配位子にはジアジ化ターフェニルジカルボン酸(Aztpdc)を用いた。中心金属に亜鉛(II)イオンを用いた場合は4,4'-ビピリジンを用いた場合のみピラードレイヤー型MOFが生成し、その結晶は銅(II)イオンを用いた場合よりも大きくなった。銅(II)イオンを用いた場合にはピラジンをピラー配位子に用いてもピラードレイヤー型MOFが生成した。これを銅(I)触媒存在下で多官能性のアルキニル化合物を共存させるとアジド-アルキン環化付加によるクリック反応が進行し、レイヤー配位子同士を連結することができた。加水分解に付したところ、4官能性の架橋剤を用いたものではアコーディオン状にゲルが膨潤・開裂していく様子が観察されたが、3官能性の架橋剤を用いたものでは全体が溶解する結果となった。このことから官能基の数によって結晶内部で架橋によって生成するクラスターサイズが大きく異なり、結果的に溶解性の差として現れたと考えられた。 また、ピラードレイヤー型MOFのみならず、等網目状のMOFの異方的な相互貫入構造にも着目し、これを原料とした異方膨潤ゲルの作製にも成功した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、さまざまなピラー配位子や金属イオンの組み合わせでピラードレイヤー型MOFの結晶作製を試行し、作製条件の最適化に成功した。ピラードレイヤー型MOFにおいては、通常のソルボサーマル条件で結晶にできるレイヤー配位子とピラー配位子、金属イオンの組み合わせは限られるものの、ピラジンの弱い配位力を利用してさまざまな配位子交換反応を試行でき、トポタクティック的な反応を介して新規のピラードレイヤー型MOFを作製できることを見出した。また、ピラーを用いずにレイヤー配位子と同じ有機配位子のみを用いてMOF作製を行うと等網目状MOFとなることが知られているが、等網目状MOFは相互貫入構造によっては異方性を有することを利用し、これを多官能性アルキニル化合物によって架橋を行うと、相互貫入構造の僅かな異方性によって異方膨潤ゲルを作製できることを見出した。反応性レイヤー配位子の合成では、アジド化の前段階である臭素化反応において、多置換体の副生成物が生成しやすいラジカル機構の反応を避け、より多段階にはなるものの酸塩基反応を重ねることによって望みの一置換体のみを生成するルートを新規に開拓し、より純度の高い反応性レイヤー配位子の合成に成功した。これらの結果から本研究はおおむね順調に進展していると見なすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
多官能性のホストモノマーの形状と反応、網目構造の関連を明らかにし、精密三次元高分子網目の系統的合成法を確立する。精密な三次元高分子網目の達成のためには、ゲストモノマーの結晶全体への均一な侵入が必須であり、そのためにはゲストモノマーを二官能性とし、結晶に固定するホストモノマーを多官能性とすることが最良の選択であると考えられる。 金属イオン(二次構造単位)と種々のホストモノマーを変化させて多孔性結晶を作製し、ホストモノマーの空間配置とゲストモノマーの反応部位間の距離・方位などの関係を調べ、精密三次元高分子網目の合成の学理を明らかにする。また、ゲストモノマーの均一な侵入を確実にするため、ゲストモノマーを最初に静電相互作用などの超分子的相互作用によって多孔性結晶内部に適切に配置した後に加熱によって相互作用部位同士を共有結合的に繋げる方法についても検討したい。また、精密三次元高分子網目の多様化を目指し、共重合体の作製を試みる。多孔性結晶の結晶成長を制御し、ホストモノマーの配置を変えることで精密三次元高分子網目の共重合化が可能であると考えられる。ランダム共重合体に関しては、二種類のホストモノマーの混合物からホストモノマー固溶体結晶を作製し、これを重合することでランダム共重合体の三次元高分子網目を合成する。一種類のホストモノマーに、二種類のゲストモノマーを導入することでのランダム共重合も試みる。また、種結晶を用いたエピタキシャル結晶成長を利用することでコアシェル型やヤヌス型のブロック共重合体の合成を試み、マルチブロック化の検討も行う。
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