研究課題/領域番号 |
23K26711
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補助金の研究課題番号 |
23H02018 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桑折 道済 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80512376)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 構造色 / 微粒子 / 表面ラフネス / メラニン粒子 / クラックレス / 水和層 / メラニンアップサイクル / 角度依存性 / 色材 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、任意の表面ラフネスを有するメラニン粒子を作製し、粒子が溶媒分散状態から乾燥を経て粒子集積状態を形成する過程のリアルタイム観察を軸として、表面ラフネスが粒子配列に与える影響を解明する。さらに、温度を外部刺激として粒子の表面ラフネスの大きさの制御を行い、溶媒中での粒子の分散/凝集挙動の理解に基づき、単一粒子材料で多彩な構造色を表現可能な塗装/デバイス開発へと展開する。基礎研究に軸足を置きつつ、構造色に関する応用研究への道筋を示すことを目指し研究を遂行する。
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研究実績の概要 |
微細な周期構造に由来する構造色は、退色がなく独特の光沢を有することから、次世代型の色材として期待されている。機能向上の鍵となる重要な技術が、単一粒子材料で構造色の角度依存性を制御する技術と材料表面に生じるクラックを抑制する技術である。本研究では、人工メラニン粒子を素材としてこれらの課題に取り組む。最終的には、外部刺激によりメラニン粒子の表面ラフネスの度合いを人為的に制御することで、単一粒子材料で構造色の角度依存性を自在に調整する技術を確立し、構造色によるクラックレスな塗装/デバイス開発へと展開する。これらの研究を通して、構造色を基盤とする色材開発の学理と技術革新に貢献することを目的とする。 本年度は、ポリドーパミンをシェル層に有するコア-シェル型メラニン粒子を用いて、各種添加剤を用いて、クラックレスで角度依存性が有る、あるいは無い構造色材料を作製した。角度依存性を維持したクラックレス材料においては、低分子量の水溶性イオン液体の添加が有用で有ることがわかった。一方で、角度依存性のないクラックレス材料の作製には、高分子量の生体高分子であるケラチンの添加が有効で有ること見出した。また、人工メラニン粒子表面のポリドーパミン層の厚みやラフネスの違いが、粒子集積挙動に与える影響を精査した。その結果、シェル層の厚みに伴って表面で水和層が構築されやすく、これに伴い粒子分散液の粘性が向上して、溶媒乾燥後の粒子配列が変化することが新たにわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水溶性イオン液体の添加による角度依存性を維持したクラックレス構造色材料の作製に関する内容は、原著論文として報告した(Langmuir, 2023, 39, 8725)。ケラチンを添加した角度依存性の軽減されたクラックレス構造色材料に関しては現在論文としてまとめている。本年度は、メラニン粒子表面での水和層の存在とそれらが粒子集積構造に与える影響についての知見を得ることができた。さらに、実験の過程で、人工メラニンであるポリドーパミンを適切に分解・回収し、新しい高分子として再生する手法についても新たな知見を得た。これにより、使用後のメラニン系構造色材料の有効利用・資源循環が可能になる可能性がある。当初予定していた研究成果に加えて、メラニンのアップサイクルに関する新しい知見も得ることができ、当初の計画以上に研究が推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、メラニン粒子表面での水和層の存在を見出した一方で、どのくらいの水和層が構築されており、それがどのように粒子集積に影響しているかの詳細については不明なままであった。そこで次年度は、中性子散乱測定により、メラニン粒子表面の水和層の詳細な解析と、メラニン粒子が集積してコロイド結晶構造あるいはアモルファス構造が形成される過程の追跡を実施する(JRR-3 RING:課題No.2024A-A30)。また、クラックレス材料とメラニンアップサイクルに関する内容についても論文として報告できるように検討を進める。
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