研究課題/領域番号 |
23K26718
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補助金の研究課題番号 |
23H02025 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 秀人 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20283872)
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研究分担者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40314504)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 高分子微粒子 / コロイド構造体 / 水素結合 / コロイド / 粒子構造体 / 非真球状粒子 / マクロ物性 |
研究開始時の研究の概要 |
疎水性相互作用や水素結合などの非共有結合により,低分子が自己組織化したものは超分子と呼ばれており,低分子だけでは成し得ない多くの機能が発現され,「超分子化学」としての新しい学問領域として発展してきている。同じように,微粒子が組織化した「コロイド構造体」は,三次元構造のコロイド結晶など古くから知られている一方,一次元や二次元等,その他の構造を含めた体系的な検討は行われていない。本研究では,高分子微粒子の構造制御を基盤とし,分散安定剤間の水素結合を利用した独自のコロイド構造設計法の確立,および構造体が発現する機能について体系的検討を行い,新たな材料設計概念を構築することを目指している。
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研究実績の概要 |
ヤヌス粒子は,半面ずつに異なる化学的・物理的性質の表面を有した粒子のことであり,その異方性から粒子状界面活性剤や電子ペーパーへの応用がなされている。ところで,粒子を配列・組織化したコロイド構造体は一粒子では得られない物性を発現することから注目されており,ヤヌス粒子はコロイド構造体のビルディングブロック粒子としても用いられる。さらに非真球状のヤヌス粒子は真球状粒子とは異なる配列挙動を示すことから,そのコロイド構造体は新規な特性を発現することが期待される。当研究グループでは分散安定剤であるポリアクリル酸(PAA)とポリビニルピロリドン(PVP)がpH 4.0以下において水素結合を形成することを利用し,粒子の片面にPAA,もう片面にPVPを導入した真球状ヤヌス粒子を用いて一次元鎖状コロイド構造体の作製に成功している。この報告ではミクロンサイズの粒子を用いておりブラウン運動が制限されたことから,サブミクロンサイズの粒子の方がよりコロイド構造体を形成しやすいと期待される。ところで,最近,当研究グループではボールミルを用いたミクロンサイズの円盤状粒子の作製法を見出した。さらに,ポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる形状に異方性をもった雪だるま型ヤヌス粒子を用いていて扁平状の蝶型ヤヌス粒子の作製にも成功している。本年度は,これらの手法をサブミクロンサイズ粒子への拡大を目指し,サブミクロンサイズの蝶型ヤヌス粒子の作製を試み,その会合挙動についても検討を行った。 さらに,形態制御によるコロイド構造体の構造制御の検討を行うため,シリンダー状高分子微粒子の効率的合成法として,機械的応力による合成を行った。本方法は高分子のガラス転移点(軟化点)より低い温度で粒子が変形しており,メカニズムについては未解明であるが,非常に大きさ,形状の揃ったシリンダー状粒子の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリビニルピロリドン(PVP)を分散安定剤に作製したサブミクロンサイズのポリスチレン粒子を用いて,メタクリル酸メチルのシード分散重合をポリアクリル酸(PAA)を分散安定剤として行ったところ,複合粒子の合成に成功し,それら複合粒子を乳化剤存在下での溶媒吸収放出法により,雪だるま型雪だるま型ヤヌス粒子の合成を計画通り作製することができた。さらに,雪だるま型ヤヌス粒子をはボールミル攪拌を様々な条件で行ったところ,ミクロンサイズの粒子と同様に扁平状へと変形させることができた。さらに非常に興味深いことに,塩酸を用いて分散液をpH 1.0に調整したところ,扁平前の雪だるま型ヤヌス粒子では粒子間の会合はほとんど観察されなかったのに対して,攪拌後の蝶型ヤヌス粒子では瞬時に会合した。また,分散液を再びpH 4.0を上回るように調整すると粒子は再び分散状態に戻ったことより,PAA-PVP間の水素結合により会合していることを確認した。 さらに,当研究グループは,ポリスチレン(PS)などの真球状粒子をPVP水溶液中で,ガラス容器とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)撹拌子を用いて室温にて撹拌するだけで,シリンダー状へと変化させる撹拌法を見出しているが,得られるシリンダー状粒子は,これまで報告されている棒状粒子と比べ,両端が平面な棒状であり,その変形メカニズムについては明らかになっていない。本研究中において,2枚のガラス板にPS粒子エマルションを挟み,往復運動させることにより,撹拌法と同様の両端が平面の棒状であり,より短時間で撹拌法で得られた粒子と同様の棒状へと変形し,導入したFE-SEMによりより詳細な解析が可能となった。これらの結果より,撹拌法のメカニズムが粒子への直接的な機械適応力によるものであると結論づけ,粒子に対して直接応力をかけることによる棒状粒子の新しい作製方法を提起することができた。
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今後の研究の推進方策 |
サブミクロンサイズの扁平状ヤヌス粒子において,初年度は,扁平前(球状ヤヌス粒子)と比較して,扁平化したヤヌス粒子は効率的に粒子が会合することを明らかにした。これは,扁平化することにより,相互作用面積が増加するためだと考えている。しかし,その会合は瞬時に起こっており,コロイド構造体という観点からは,制御については未だ達成されていていないと考えている。今後は,粒子の相互作用となる分散安定剤であるPVPとPAAの分子量の制御や扁平率,さらにはヤヌス粒子の濃度などを条件を検討することにより,構造が制御された規則正しく自己集合するコロイド構造体の構造制御に挑戦する。 さらにシリンダー状粒子については,その機械的応力による変形は,これまで考えられてきたガラス転移以上の変形ではなく,学術的にも非常に興味深い点を残している。今後は,粒子を構成する高分子の絡みあいの観点から,継続的な応力と粒子変形のメカニズムについて,明らかにする。具体的には,粒子径が同じで構成高分子の分子量を変化させた粒子を作製し,変形率の違いにより絡みあいとの相関をとる。また,粒子変形がどこから始まるかなど明らかにするため複合粒子(例えばコアシェル構造粒子)における機械的応力による変形挙動についても検討を行う。それぞれの成分の変形挙動により,機械的応力の伝達メカニズムを明らかにする。 さらに申請時の計画どおり,ヤヌス粒子のコロイド構造体がマクロ物性を発現させるために,粒子片側の一成分がコロイド構造体における連続性を有するかどうかのモデル実験およびシミュレーションなどを行い,実際に機能を発現させるため逐次重合系ポリマー(ポリイミド,ポリオキサゾール,ポリチオフェンなど)粒子のヤヌス複合化についても着手する予定である。
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