研究課題/領域番号 |
23K26720
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補助金の研究課題番号 |
23H02027 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 幸一郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30888889)
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研究分担者 |
藤ヶ谷 剛彦 九州大学, 工学研究院, 教授 (30444863)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | ポリマーインフォマティクス / 高分子電解質膜 / 粗視化シミュレーション / 機械学習 / パーシステントホモロジー |
研究開始時の研究の概要 |
近年、マテリアルズインフォマティクス(MI)の台頭が目覚ましい。しかし、高分子材料は社会生活を支える基幹材料であるにも関わらず、MI適用事例は無機材料や低分子と比べると限定的である。特に、高分子特有のメゾスケール(10~100nm)の組織構造に基づいた高度機能(イオン伝導など)に対するMIは未踏領域となっている。本研究では、粗視化シミュレーション・トポロジカルデータ解析・説明可能AIの技術を用いて、様々な高度機能に展開可能な深化した高分子MIを世界に先駆けて実現する。
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研究実績の概要 |
近年、マテリアルズインフォマティクス(MI)の台頭が目覚ましい。しかし、高分子材料は社会生活を支える基幹材料であるにも関わらず、MI適用事例は無機材料や低分子と比べると限定的であり、高分子特有のメゾスケール(10~100nm)の組織構造(以下ではメゾ構造と呼ぶ)に基づいた高度機能(イオン伝導など)に対するMIは未踏領域となっている。本研究では、メゾ構造をデータ科学的に取り扱うために必要となる“特徴量”を抽出する手法の確立がブレイクスルーの鍵であると考え、高分子電解質膜における高度機能(イオン伝導)を題材に、①粗視化シミュレーションによる精度の高いメゾ構造生成技術の確立②得られたメゾ構造からの特徴量抽出技術の確立③メゾ構造特徴量を加味した説明可能AIモデルの構築と新材料探索の3ステップを、実験・シミュレーション・データ科学を密に連動しながら進めている。 2023年度は①および②を実施した。①においては、散逸粒子動力学法(DPD)を用いることでNafionなどのポリマー材料に対して実験と矛盾しないメゾ構造の生成に成功した。②においては、①で得られたメゾ構造に対してパーシステントホモロジーと呼ばれる手法を適用することで、人間には複雑すぎるデータの中に潜む秩序を探索した。その結果、プロトン伝導度の高い材料のみに現れる特徴的な水粒子の分布を見出すことができた。さらに、得られた特徴をベクトル化した上で教師無し機械学習の説明変数に用いることで、プロトン伝導度の予測に利用可能であることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、高分子電解質膜における重要な高度機能(イオン伝導)を対象に、①粗視化シミュレーションによる精度の高いメゾ構造生成技術の確立②得られたメゾ構造からのトポロジカル特徴量抽出技術の確立③トポロジカル特徴量を加味した説明可能AIモデル構築と新材料探索のうち、①および②を実施した。①では粗視化シミュレーションとして散逸粒子動力学法(DPD)を用いることで、大きな時間・空間スケールでダイナミカルに生じるメゾ構造(電解質膜の場合には相分離構造)を生成した。また、得られたメゾ構造を可視化することで3次元TEMと比較し、散乱関数を計算することで小角X線散乱(SAXS)と比較し、実験とも矛盾しないメゾ構造の生成に成功した。②では①で得られたメゾ構造の粗視化粒子座標を点集合とみなしてパーシステントホモロジー解析を行った。パーシステントホモロジーは、点集合の中でトポロジー的に同等とみなせる「穴」の生成と消滅をマルチスケールに捉えることが可能な手法である。人間には複雑すぎるデータの中に潜む秩序を見つけ出すことが可能な手法として知られているが、材料データへの適用事例はごく僅かである。DPDでは、水成分と高分子成分が複雑に相分離した構造が得られる。この中から水粒子座標のみを取り出して、「水粒子の座標データの集合」=「点の集合」と捉えなおすことで、相分離した構造の中に隠された特徴的な構造の抽出を進めた。パーシステントダイアグラムの逆解析により、プロトン伝導度の高いポリマーのメゾ構造の持つ特徴を抽出しただけでなく、パーシステントダイアグラムのベクトル化した上で教師無し機械学習の説明変数に用いることで、プロトン伝導度を予測可能であることを示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高分子電解質膜における重要な高度機能(イオン伝導)を対象に、①粗視化シミュレーションによる精度の高いメゾ構造生成技術の確立②得られたメゾ構造からのトポロジカル特徴量抽出技術の確立③トポロジカル特徴量を加味した説明可能AIモデル構築と新材料探索のうち、初年度に実施した①および②の更なる高度化と③に着手する。①では粗視化シミュレーションとして散逸粒子動力学法(DPD)を用いることで、大きな時間・空間スケールでダイナミカルに生じるメゾ構造(電解質膜の場合には相分離構造)が生成可能であることを初年度に実証した。今後は更に、イオン伝導を担う電解質膜用高分子の側鎖末端のイオン化状況を加味することで、より高度なメゾ構造生成技術を確立する。また、これら技術は現在プロトン伝導高分子を対象に実証を進めているが、アニオン伝導高分子にも展開する。②では①で得られたメゾ構造の粗視化粒子座標を点集合とみなしてパーシステントホモロジー解析を行う。初年度は粗視化水分子座標に着目したパーシステントホモロジー解析により、プロトン伝導度との相関を見出すことに成功した。今後は更に、イオン伝導を担う電解質膜用高分子の側鎖末端粒子座標に着目したパーシステントホモロジー解析など、多角的な解析を行い、相分離した構造の中に隠された特徴的な構造の抽出に挑む。
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