研究課題/領域番号 |
23K26735
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補助金の研究課題番号 |
23H02042 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宮内 雅浩 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60443230)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2027年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 光触媒 / 金属酸化物 / 炭化水素 / 合成ガス / メタン / 水蒸気改質 / チタン酸ストロンチウム / 酸化タンタル / 半導体 / 水素 / 一酸化炭素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、炭化水素を二酸化炭素まで完全酸化することなく、資源として有用な水素や一酸化炭素に選択的に転換できる光触媒を創製することを目的とする。一酸化炭素への選択的酸化のため、半導体のバンド構造、格子酸素の反応性を制御する。また、In-situ分光分析と同位体を用い、格子酸素イオンの追跡をおこなうことでメカニズムを明らかにする。本提案の計画初期では、炭化水素として気相メタン、酸化剤として水蒸気を用いた反応系から検討を進めるが、計画の中期および後期では、炭化水素としてヘキサンなどの液体、酸化剤として酸素等に展開し、様々な有機系廃棄物の資源化に向けた光触媒の設計指針を確立する。
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研究実績の概要 |
電子源となる炭化水素としてメタン(CH4)、酸化剤として水蒸気(H2O)を用いた光触媒反応をおこない、合成ガス(水素(H2)と一酸化炭素(CO)の混合ガス)の生成特性を評価した。光触媒材料として、最もよく使われている市販の二酸化チタン(TiO2、P-25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、そして、酸化タンタル(Ta2O5)等の金属酸化物粒子に、金属ロジウム(Rh)のナノ粒子を担持した材料に対して評価をおこなった。光触媒反応生成物の評価として、メタンの水蒸気反応で生成する水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)に注目し、それぞれの生成量を測定するとともに、CO/CO2比も測定し、合成ガスの生成に優れた光触媒を探索した。 金属Rhナノ粒子は含浸法によって各種金属酸化物粒子に担持した。Rhを担持した各種光触媒粉末20mgをフローリアクター中の多孔質セラミックスカップに仕込み、CH4/ H2O/ Arの比が 1/ 1/ 98の混合ガスを10mL/ minでリアクターに流し、リアクター上部の石英窓を通して水銀・キセノンランプで触媒に光照射した場合の出口側ガスの組成、濃度の分析をおこなった。この結果、Rh/SrTiO3、Rh/Ta2O5の方が、Rh/TiO2よりも水素生成量は高く、合成ガスが多く生成した。SrTiO3、Ta2O5は伝導帯のレベルがTiO2よりも高く、電子の還元力が高いために効率的に水素生成が進んだものと考えられる。また、各触媒によって生成したCOとCO2の合計量に対するCOの割合を評価した結果、Rh/TiO2(P-25)、Rh/SrTiO3、Rh/Ta2O5における値はそれぞれ、9%、18%、22%であった。すなわち、SrTiO3やTa2O5において、選択的にCOを多く含む合成ガスが生成していることがわかった。各触媒においてCO/CO2比が異なっていた原因として、触媒中の格子酸素の拡散や反応性が関わっていると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においてメタンを電子源とした水蒸気改質反応に適した光触媒材料の探索が計画よりも早く進行した。水蒸気改質反応による合成ガス生成に優れた光触媒として、ロジウムを担持したチタン酸ストロンチウム(Rh/SrTiO3)が有効であることを見出し、無加熱の条件で合成ガスを生成できた。次年度において、2023年度に見出したRh/SrTiO3等の光触媒をメタン転換以外の有用な反応(例えば、液体炭化水素の転換)へ適用することを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度において、まずは2023年度で検討した光触媒(例えばロジウムを担持したチタン酸ストロンチウム(Rh/SrTiO3)など)の詳細なキャラクタリゼーションを実施する。具体的には、透過型電子顕微鏡・走査型電子顕微鏡による微細組織観察、蛍光X線分析による化学組成分析、紫外・可視分光測定による光学的吸収などの評価をおこなう。また、触媒反応における格子酸素の役割についても同位体分析などを用いて詳細な解析をおこなう。 また、2023年度においてメタンを電子源とした反応に適した光触媒材料の探索が計画よりも早く進行したため、2024年度においては、メタン転換に高活性であった光触媒群に対し、液体の長鎖炭化水素の転換活性を評価する。すなわち、長鎖炭化水素としてヘキサデカンなどの液体、酸化剤として酸素分子を用いた反応系に評価を拡張する。光照射によって液体の長鎖炭化水素から合成ガスの生成が確認できれば、本技術による廃油等の再資源化への可能性も視野に入る。2023年度のメタン転換活性の評価において合成ガス生成選択性の高かったRh/SrTiO3などの光触媒粉末について、これらの粉末を液体のヘキサデカン中に分散し、酸化剤となる酸素を導入しながら光照射をおこない、生成するガス成分と液相成分について、それぞれガスクロマトグラフ、液相クロマトグラフで分析する。また、反応メカニズムを明らかにするため、中間体としてアルデヒド類やカルボン酸類の生成を想定し、それらの分子が共存した場合のヘキサデカン転換活性を評価し、どちらの中間体を経由して反応が進行するかどうかを考察する。これらの評価・考察によって、本研究で開発した光触媒がメタン以外の液体炭化水素の電子源にも適用できるかどうかを明らかにする。
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