研究課題/領域番号 |
23K26742
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補助金の研究課題番号 |
23H02049 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
梶原 浩一 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (90293927)
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研究分担者 |
石島 政直 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (60965573)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | 無濃度消光発光 / 励起移動 / シリカガラス / 希土類イオン / ナノ結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
発光中心の濃度が高くなると発光効率が著しく下がる現象は濃度消光とよばれる。励起状態が発光中心間を移動し、発光前に消光中心に捕獲されることが原因である場合は、濃度消光は消光中心をなくせば防げると期待されるが、申請者らはこの指針に従い、独自に見出した希土類リン酸塩ナノ結晶含有透明結晶化ガラスで、自由な励起移動と無濃度消光紫外・可視発光が共存できることを示してきた。 本研究では、自由な励起移動を伴う無濃度消光発光が、赤外発光も含めて普遍化できる概念であることを示す。これまで前例のない自由な励起移動と共存した無濃度消光赤外発光を実現し、励起移動を積極的に利用した赤外発光デバイスへの応用に道を拓く。
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研究実績の概要 |
発光中心の濃度が高くなると発光効率が著しく下がる現象は濃度消光とよばれる。励起状態が発光中心間を移動し、発光前に消光中心に捕獲されることが原因である場合は、濃度消光は消光中心をなくせば防げると期待されるが、申請者らはこの指針に従い、独自に見出した希土類リン酸塩ナノ結晶含有透明結晶化ガラスで、自由な励起移動と無濃度消光紫外・可視発光が共存できることを示してきた。 本研究では、自由な励起移動を伴う無濃度消光発光が、赤外発光も含めて普遍化できる概念であることを示す。現在までの研究で、主に代表的な消光中心であるSiOH基濃度の低減によって、シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスの赤外発光、シリカ-EuPO4透明結晶化ガラスの赤色発光、シリカ-(M,Ce)PO4 (M=La,Gd,Y)透明結晶化ガラスの紫外発光の内部量子効率をいずれも~0.85以上まで向上させることができた。また、シリカ-(Gd,Pr)PO4透明結晶化ガラスの狭帯域UVB発光で粉末蛍光体に比べて優れた温度特性を確認でき、これをKrClエキシマランプの窓材として用いることで狭帯域UVBランプを作製できた。他方、試薬の種類や純度はこれらのガラスの発光の内部量子効率に対して鈍感であることが明らかとなった。今後の研究で発光の内部量子効率のさらなる向上を図りつつ、SiOH基濃度低減の再現性を改善し、これまで前例のない自由な励起移動と共存した無濃度消光赤外発光を実現し、励起移動を積極的に利用した赤外発光デバイスへの応用に道を拓く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
波長313nmでの狭帯域UVB無濃度消光発光が確認されているシリカ-(Gd,Pr)PO4ガラスの温度特性を調べ、このガラスが類似の粉末蛍光体((Lu,Gd,Pr)PO4)より温度消光しにくく、良好な温度特性をもつことを示した。ナノ結晶をガラスに包接することで粉末蛍光体より消光中心を低減できたためと考えられる。また、このガラスとKrClエキシマランプの窓材として用いることで、狭帯域UVBランプが構築できることを示した。 シリカ-EuPO4透明結晶化ガラスでは、SiOH基濃度を10^18cm-3以下まで低減することで赤外発光の内部量子効率が~0.9まで向上したが、より高い内部量子効率を実現するために必須である10^17cm-3台のSiOH基濃度を安定的に再現できる条件の確立に課題が残った。 シリカ-EuPO4透明結晶化ガラスでは、Eu源の種類や純度(3N、4N)、P源の種類および合成条件と赤色発光の内部量子効率との関係を調べ、試薬の種類や純度は内部量子効率とほとんど相関がないことが確認された一方で、SiOH基濃度が消光への寄与が大きいことを見出し、その低減によって内部量子効率を~0.6から~0.85まで向上させることができた。 シリカ-(M,Ce)PO4透明結晶化ガラスでは、M=Laに加え、M=Gd,Yでもガラスが合成でき、5d-4f許容遷移であり減衰時定数が短いと期待されるCe3+イオンからの高効率紫外発光が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き下記の課題を実施する。 1. シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスによる無濃度消光赤外発光材料の開発:シリカ-YbPO4透明結晶化ガラスは波長1μmで発光し、赤外発光材料として有望であるが、消光中心であるSiOH基の濃度を十分に下げることが難しかった。昨年度、SiOH基濃度を10^18cm-3以下とできる合成条件を確立したが、内部量子効率は~0.9とまだ不十分であるため、内部量子効率がほぼ~1になると考えられるSiOH基濃度10^17cm-3台の試料を安定して作製できる条件の探索に取り組む。 2. シリカ-EuPO4透明結晶化ガラスの発光効率向上:Eu3+イオンは代表的な赤色発光中心である。Eu3+イオンの濃度消光については多数の報告があるが、無濃度消光発光は申請者らの知る限り知られていない。他方、申請者らはシリカ-EuPO4透明結晶化ガラスの赤色発光効率向上に取り組み、昨年度の研究で内部量子効率が~0.85まで向上した。発光効率改善の取り組みをさらに進め、無濃度消光発光の実現を目指す。 3. シリカ-(M,Ce)PO4透明結晶化ガラスによる高効率紫外発光の開発:Ce3+イオンを発光中心とするシリカ-(M,Ce)PO4透明結晶化ガラスが、希土類種MがLaのとき内部量子効率がほぼ1の高効率紫外発光を示すことを見出し、自由な励起移動が可能と考えられるGdを含むM=Gd, Yでもガラスの作製に成功している。本年度は、これらのガラスを用い、Mの変化による発光特性の評価、シンチレーター材料としての適用可能性を調べる。
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