研究課題/領域番号 |
23K26746
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補助金の研究課題番号 |
23H02053 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
永井 武彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (70415719)
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研究分担者 |
反保 衆志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20392631)
村田 秀信 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (30726287)
川村 史朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主幹研究員 (80448092)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 光電子分光 / 配位数制御 / 太陽電池 / 有効配位数 / バンドギャップエネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
ほぼ全ての4面体配位の半導体では、「格子定数とバンドギャップ(Eg)」が負の相関を持つ。ところが、結晶対称性の低い斜方晶系のSnSやGeSにおいては、この関係が正の相関となる事を理論計算から見出た。現状、我々は、この現象が有効配位数の変化と関係があると考えているが、実際の配位状態および電子構造がどのように変化し、正の相関となるのか特定・実証するに至っていない。本研究では、先行して研究を始めている(X,Sn)S;(X=Ca,Sr,Ba)を試料とし、①構造解析と配位状態の特定、②価電子帯と伝導帯の電子構造の独立評価、さらには、KKR-CAP法を用いた③電子構造の理論計算を実施する。
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研究実績の概要 |
本研究では、通常の4配位系半導体と正反対の挙動となる「格子定 数とバンドギャップ(Eg)」が負の相関(格子定数が大きくなるとEgが小さくなる)を持つ(Ba,Sn)Sをはじめとする(X,Sn)S;(X=Ca,Sr,Ba)を試料とし、X組成を変化させた際の格子間距離、配位状態、電子構造の関係を実験から明らかにし、配位状態とEgの関係解明を目的としている。 上述の目的達成に向け、今年度、申請者らは (Ba,Sn)S薄膜をスパッタ法および分子線エピタキシー(MBE)法にて作製し、X線回折法による構造解析、正・逆光電子分光法を用いた価電子帯(V.B.)と伝導帯(C.B.)の電子構造に関する独立評価、透過・反射スペクトルを用いた光学吸収スペクトル測定を実施し、適正に配位状態とEgの相関を議論できるBa組成の上限を明らかにした。X線解析の結果、両手法で作られた試料共に、Ba組成の増大に伴い、SnS(111)の回折ピークが低角側にシフトする事を確認した。但し、Ba組成が0.3を超える試料に関しては、同回折ピークのシフト量がBa組成の増大に対し飽和傾向を示すと同時に、半値幅の急激なブロードニングも観測された。また、吸収スペクトルにおいてもBa組成0.3を超える試料では、EgのBa組成に対するシフト量が飽和傾向を示した。これらの事から、(Ba,Sn)S薄膜を用い、配位状態とEgの関係を調べるためには、Ba組成0.3未満の試料作製が必要である事が明らかになった。さらに、(Ba,Sn)S試料に実際に圧力を加えるためのダイヤモンドアンビル装置の手配が完了し、同機器を用いたラマン測定の目途が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(Ba,Sn)SはBa組成が低い領域では直方晶系結晶構造であるが、Ba組成の高い領域では岩塩構造となる事が予想され、有効配位状態とEgの関係を議論するためには、まずは適正なBa組成の範囲を明らかにする必要がある。今年度、様々な手法により作製した(Ba,Sn)S薄膜において上限となるBa組成が明らかになり、かつ、Ba組成の増大に伴う格子定数の増大とEgの増大(格子定数とEgに正の相関)を確認することが出来た。また、正・逆光電子分光法による価電子帯および伝導帯の電子状態測定にも取り掛かっている。さらに、計画書で予定していた高圧条件下のラマン測定のためのダイヤモンドアンビルと実験系の構築も完了した。これらの事を考慮すると、実施計画に記載した内容を順調にクリアしており、進捗状況としてはかねがね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、配位状態評価のため、分子科学研究所の軟X線(UVSOR BL02A)を用いた放射光実験を実施し、Ba組成増大に伴うSの配位状態変化の観測を試みた。Ba組成増大に伴うS-k端変化については観測に成功したが、EXAFSによる配位状態計測では、ベースラインの掃引困難であったため解析できなかった。そこで、次年度、試料厚みを薄くした試料を用意し、再度、Sの配位状態計測を試みる。また、今年度既に始めている正・逆光電子分光法を用いた価電子帯と伝導帯の電子状態が、Ba組成に対しどのような変化を示すのかに関する実験・解析を進め、配位状態との相関を明らかにする。さらにダイヤモンドアンビルを用い、高圧条件下の発光ならびにラマン測定を実施し、これら物性評価結果と配位状態との相関解明を進める予定である。
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