研究課題/領域番号 |
23K26766
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補助金の研究課題番号 |
23H02073 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
平原 将也 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90609835)
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研究分担者 |
八木 政行 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00282971)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 人工光合成 / 外部刺激応答 / 光反応 / 光異性化 / 金属錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
化石資源に代わるエネルギー源として、人工光合成が期待されている。高度な人工光合成の実現において、反応の機能ユニットの融合と、複数の物質変換反応の同時駆動は乗り越えるべき課題である。本研究では、外部刺激に応答して分子の構造・触媒活性が変化する分子触媒を用いる。本課題ではこのような「一石二鳥型」の触媒を「スマート分子触媒」と定義し、複数の物質変換反応を同時駆動する反応系の開発をめざす。具体的には外部刺激に応答して構造が可逆もしくは非可逆的に変化する分子触媒を用いて、種々の反応条件下でも高いパフォーマンスを示す触媒反応系の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
研究期間初年度にあたる2023年度は、外部刺激(光・熱)に応答して触媒活性を完全にオン・オフできる触媒の創製を目的とした。側鎖にカルボキシル基を有するN^N窒素キレート二座配位子Lを用いて単核ルテニウム錯体の合成を行った。得られた金属錯体1は単結晶X線構造解析から、二つの窒素原子に加えて末端のカルボキシル基がルテニウムに配位していた。すなわち触媒活性部位であるルテニウムアクア部位がカルボキシル基に置換されていることが確認された。この錯体は熱的に安定であり、水溶液中に酸および塩基を加えても吸収スペクトルに変化はなく、アクア錯体の生成は確認されなかった。一方、錯体1に光照射を行うと、カルボキシル基の光解離と異性化によってアクア配位子が配位した錯体2が得られた。光照射で得られた錯体2のサイクリックボルタンメトリーを測定するとプロトン共役電子移動に伴う電位のpH応答性が確認された。この錯体は熱を加えると元の錯体に定量的に戻った。 上記の研究と並行して、側鎖にジエチルアミノ基、ナフチリジン部位を有する錯体3の合成を行った。この錯体は外部刺激に応答して、反応点近傍にジエチルアミノ基、ナフチリジン部位といった異なるプロトンアクセプター性の置換基を配置した反応場を与えることができる。得られたアクア錯体の単結晶X線構造解析を行った結果、ルテニウムアクア部位の近傍にジエチルアミノ基が存在し、両者の間で分子内水素結合があることが確認された。予備的にこの錯体の水の酸化触媒活性を測定したが、過電圧が0.5V程度と非常に大きかった。 現在二つの研究テーマについては学会発表2件を行っており、追加データを加えた上で論文を投稿する予定である。さらに、研究構想段階で用いた刺激応答型金属錯体について、エチルグアニンとの反応性を調べた結果、反応速度定数が異性化によって一桁変化することがわかり、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、外部刺激(光・熱)に応答して反応活性点を被覆できる触媒を合成し、その刺激応答性や電気化学的評価を行っている。並行して異なるプロトンリレー構造もつ錯体を合成し、刺激応答性や触媒活性評価を行っている。刺激応答性触媒については二座配位子の構造を変えることによって応答性に顕著な違いがあることが実験的に明らかになってきた。本補助金で導入した光照射装置の導入によって、錯体の刺激応答性評価が円滑に行えるようになり、順調に研究が進展した。他方、刺激応答性の反応場をベシクルを用いて構築を試みている。現段階では予備的ながら膜内の光エネルギー移動過程に刺激応答性があることを見出している。しかしながら触媒活性の刺激応答性の評価にはまだ至っておらず反応系の最適化がまだ必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目にあたる2024年度は、刺激応答性の分子触媒を用いた反応性評価を行う。2023年度においては、刺激応答性の分子触媒につて予備的な水の酸化触媒評価にとどまっていたが、2024年度はプロトン還元、アンモニア酸化、バイオマス由来の5-ヒドロキシメチルフルフラールの酸化といった広範囲の触媒反応について検討を行う。同時に2024年度導入予定の計算機を用いて、Gaussian 16による最適な触媒構造の探索も並行して行う。触媒活性の電気化学的な評価および議論については、研究分担者と共同して推進する予定である。
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