研究課題/領域番号 |
23K26780
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補助金の研究課題番号 |
23H02087 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
遠藤 玉樹 甲南大学, フロンティアサイエンス研究科, 准教授 (90550236)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | RNA / 異種分子 / 相互作用 / データベース化 / 創薬 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、モジュール化されたRNAの二次構造領域に焦点をあて、そこに相互作用する異種分子(低分子化合物やペプチドなど)の包括的なデータベースとして、RNA-interactive Chemicals Database(RinC(リンク)データベース)を構築する。そして、構築したRinCデータベースを基に、任意のRNAに相互作用してその機能を制御できる分子の選定、合理的な設計を可能にする。これにより、従来のスクリーニングを中心とした創薬からデータベースに基づいた合理的な創薬へ、RNAを標的とした創薬研究を発展させる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、RNA-異種分子間の相互作用を包括的に抽出するための基盤技術開発を行った。二次構造モジュールとしてバルジおよびループ構造を有するRNAライブラリを設計し、微粒子上にライブラリ由来のDNAとRNAが個別に固定化されているRNAキャプチャー微粒子群(RNA-capturing microsphere particles; R-CAMPs)を調整した。異種分子のライブラリとして、個別の化合物にバーコード化されたDNAが結合しているDNA-encoded library (DEL)を蛍光分子で修飾したライブラリを調整した。RNAのライブラリであるR-CAMPsと化合物のライブラリであるDELを混合し、微粒子上の蛍光シグナルに基づいてRNA-異種分子間の相互作用を選別して回収した。回収した微粒子およびDELの配列解析を行った結果、DELに修飾されている蛍光分子のシグナルが強く確認されたサンプルにおいて、より多くのDEL由来配列を得ることができた。このことは、本研究課題で目的とするライブラリ同士の掛け合わせの中から、特定のRNAと異種分子の相互作用を抽出して解析できることを示している。現在、それぞれのRNAに相互作用した化合物に共通して見られる化学的な特徴を解析すると共に、より明確にRNAに相互作用した化合物を獲得できるように、選別操作の実験条件を最適化している。 2023年度は、RNAに相互作用する化合物を獲得後、RNAを標的とした創薬研究へ展開することを念頭に、RNA結合性の化合物に対して人工的な化学修飾を加えることでRNAに対する結合親和性を高めることも試みた。植物由来の代謝産物であるベルベリンにグアニジノ基を化学修飾した化合物を合成し、ベルベリンが結合するRNA二次構造への結合親和性が上昇すること、その結果として、mRNAからのタンパク質翻訳をベルベリンより強く抑制できることを確かめた(New J. Chem., 48, 8529 (2024))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、配列がライブラリ化されたRNAの二次構造モジュール、および構造がライブラリ化された異種分子を組み合わせ、その中から特異的に相互作用する組み合わせを包括的に抽出してRNA-異種分子間の相互作用データベース(RNA-interactive Chemicals Database; RinC(リンク)データベース)を構築していく。 2023年度は、RNAに相互作用する異種分子を、RNAを固定化した微粒子であるR-CAMPsを用いて、包括的に抽出する基盤技術を「作る」研究を進めた。RNAに相互作用させる異種分子のライブラリとして、計画していたペプチドライブラリから、実際の創薬研究への展開が見込まれる低分子化合物のライブラリを用いることにした。バーコード化されたDNAが結合しているDNA-encoded library (DEL)を蛍光分子で修飾したライブラリ調整することで、微粒子上での蛍光シグナルに基づいて、特定のRNAに相互作用している化合物群を抽出して網羅的に解析できることができた。つまり、本研究課題での基盤となるライブラリとライブラリの掛け合わせから、RNAと異種分子の相互作用を包括的に抽出、解析する技術が確立されつつある。加えて2023年度は、当該研究課題以前の研究で明らかにしたベルベリンとRNA二次構造との複合体構造を基に、ベルベリンに対する化学修飾を加えてRNAに対する結合親和性を高めることも試みた。その成果として、RNAへの結合性を高め、mRNAからの翻訳反応をベルベリンより強く抑制できる新規化合物の合成に成功した。本研究成果は、RNAに相互作用する化合物を獲得したのちに、RNA機能を制御するために化合物を改変していくことができることを示した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、当初の研究計画に従い、 1. RNAと異種分子の相互作用を抽出する基盤技術を「作る」 2. 包括的に相互作用を抽出してRinCデータベースを「得る」 3. RinCデータベースを疾患関連RNAの機能制御に「活かす」 という3つの研究課題を段階的に遂行する。これにより、従来のスクリーニングを中心とした創薬戦略とは全く異なる、RinCデータベースを基盤とした合理的な分子設計による、RNAを標的とした創薬戦略を確立する。 2023年度の研究計画を推進する中で、RNAと異種分子の相互作用を抽出する基盤技術を「作る」技術が確立されつつある。「研究実績の概要」にも記したように、個別のRNAに相互作用した化合物に共通して見られる化学的な特徴を解析し、RinCデータベースを「得る」研究を推進する。また、DEL選別後の配列解析結果として様々な配列がアウトプットされてくる状況にあることから、より明確にRNAに相互作用した化合物の情報を取得できるように、選別操作の実験条件を最適化していく。RinCデータベースを構築した後は、標的RNAに相互作用できる分子をデータベースに基づいて選定、あるいは合理的に設計する。本研究では、疾患に関連する二次構造モジュールとして、mRNAのスプライシング部位に形成されるRNA二次構造およびmiRNAを標的とし、これらのRNA機能を制御できることを細胞内で示す。
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