研究課題/領域番号 |
23K26794
|
補助金の研究課題番号 |
23H02101 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺井 琢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00508145)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | タンパク質工学 / 蛍光イメージング / バイオセンサー / 有機合成 / 指向性進化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではタンパク質工学と有機合成化学を巧みに連携させることで、「タンパク質」と「合成低分子」の2つの構成要素から成る高性能の化学遺伝学蛍光センサーを創成する。その標的としては、金属イオンや細胞内低分子代謝物を複数選択する。さらに、開発した蛍光センサーを別の化学遺伝学センサーあるいは既存の遺伝子コード型センサーと併用し、生きている細胞を使った多色・多標的イメージングを実現する。
|
研究実績の概要 |
2023年度は以下の3項目に取組み、いずれにおいても顕著な進捗があった。 ①赤色蛍光タンパク質を基盤とするカルシウムセンサー:研究代表者らは最近、蛍光タンパク質と低分子キレーターの組合せからなる化学遺伝学蛍光センサーHaloGFP-Ca1を報告している。本センサーは緑色蛍光タンパク質GFPを蛍光団としているが、多色イメージングやin vivoイメージングへの応用には長波長のセンサーも必要である。そこで本項目ではGFPの代わりに赤色蛍光タンパク質(RFP)を用いたカルシウムセンサー開発を行った。まず複数のRFPに対してHaloTagとの連結位置およびリンカーの長さや種類をスクリーニングした。そこで得られた有望なプロトタイプに対して、変異誘発PCRを中心とする指向性進化を行う事で、カルシウム依存的蛍光変化が10倍を超える高機能なセンサー開発に成功した。 ②カリウムイオンを検出する近赤外蛍光センサー:低分子蛍光団と標的認識タンパク質を組合わせた化学遺伝学センサーの標的はカルシウムイオンや膜電位に限られており、標的の拡大が急務である。そこで本項目では、カリウム結合タンパク質と近赤外蛍光色素を組合わせたセンサーの開発を行った。前年度までに大きな蛍光変化を示すセンサーの開発自体には成功していたが、今年度は親和性の調整や細胞イメージング実験によってその有用性を向上・検証した。 ③PYPタグを基盤とする長波長カルシウムセンサー:既存の多くの化学遺伝学センサーはHaloTagを共通の基本骨格に用いているため、夫々の間に直交性が無く併用が困難である。そこで本項目では他の自己ラベル化酵素であるPYP tagを用いたセンサー開発に取り組んでいる。今年度は赤色リガンドの合成とタンパク質改変によってセンサーの長波長化を試み、少なくともin vitroでは十分な性能を示すセンサー開発に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標は化学遺伝学蛍光センサーの「標的」および「基本骨格」の拡充、ならびに「性能」の向上であるが、上述の通り、いずれにおいても研究は順調に進展している。さらにPYP tagを用いたセンサー開発においてはカルシウム依存的に色素が波長変化を起こすという興味深い現象も見られており、これを端緒に、これまで前例が全くないタイプのレシオ型化学遺伝学蛍光センサーが開発できる可能性もあると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発したセンサーのイメージング応用を進めると共に、更なる標的の拡充(ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、重金属イオン、活性酸素種など)に取り組む。基本骨格についてはジヒドロ葉酸還元酵素など他のタンパク質の利用も試みる。またこの3項目に加えて、センサーの動作原理を精査し合理的な分子設計の指針を得るための研究も行う。具体的には、タンパク質への変異導入・分子シミュレーション・X線結晶構造解析等によって、開発したセンサーの動的立体構造変化と蛍光発光メカニズムに関する知見を取得する。
|