研究課題/領域番号 |
23K26800
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補助金の研究課題番号 |
23H02107 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
古田 寿昭 東邦大学, 理学部, 教授 (90231571)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | ケミカルバイオロジー / 細胞老化 / ケージド化合物 / 光薬理学 / 遺伝子指向性 / 光スイッチ / 老化細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
光遺伝学とケミカルバイオロジー両者の利点を併せ持つ光機能性分子ツールを設計・合成して,老化細胞の選択的除去,老化の促進,あるいは阻害を可能にする手法への展開を目的にする。我々のグループで開発した遺伝子指向性ケージド化合物を要素技術にして,培養細胞,単離臓器,さらに,モデル生物個体において,標的細胞選択的に,任意の生理機能を任意のタイミングで光操作できることを実証する。
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研究実績の概要 |
光遺伝学とケミカルバイオロジー両者の利点を併せ持つ光機能性分子を開発することで,モデル生物を用いる老化研究を加速する分子ツール群と,これを用いる新規研究手法を生命科学研究者に提供することを目指す。これまでの研究で,任意の細胞種および組織をターゲットにできる遺伝子指向性ケージド化合物を開発してきた。哺乳動物細胞において,特定の酵素を発現する標的細胞選択的に,細胞内シグナル伝達やエピジェネティクスを光制御できることも報告した。この手法を要素技術として,老化細胞選択的な光操作の実現を指標にしてコンセプトを証明する。 令和5年度は,我々のグループで開発した遺伝子指向性ケージド化合物を要素技術にして,哺乳動物培養細胞を用いて,標的細胞選択的に,任意の生理機能を任意のタイミングで光操作する方法に展開することを目指した。ケージド化合物に遺伝子指向性を付与する鍵酵素として,老化細胞選択性を付与するβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal),癌細胞選択性を付与するニトロレダクターゼ(NTR),遺伝子組み換えにより任意の細胞種選択性を付与する豚肝臓エステラーゼ(PLE)の3種を選び,それぞれに対応する遺伝子指向性ケージド化合物の候補分子を設計・合成した。ペプチジルトランスフェラーゼを阻害することで新規タンパク質合成を止めるアニソマイシン,リアノジン受容体の活性化剤である4-CmCおよび選択的阻害剤であるFLA365を遺伝子指向性ケージド化合物に変換し,その光物理学的・化学的性質を明らかにした。さらに,対応する鍵酵素との反応性を検証することで,鍵酵素作動性と光作動性のいずれをも備えるケージド化合物であることを実証した。このうち,リアノジン受容体の活性化剤を用いて,哺乳動物培養細胞中のリアノジン受容体を光照射で活性化できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化細胞選択的に光活性化できるβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)作動性を付与したケージド化合物群を合成し,その光物理学的,化学的性質の検討を終えた。さらに,β-Galとの反応性を明らかにして,老化細胞選択的な光活性化を期待できる成果が得られた。遺伝子指向性ケージド化合物に変換した化合物は,細胞死,細胞内シグナル伝達,エピジェネティクスなどを制御する分子で,修飾する官能基にバリエーションがあるので,コンセプトを証明するための化合物レパートリーを拡張することができた。このうち,リアノジン受容体の選択的な活性化剤と阻害剤のケージド化合物は初めての例で,その遺伝子指向性ケージド化合物の開発と併せて論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度の研究実施計画に基づき,引き続き,研究目的を達成すべく研究を進める。以下の2つの研究項目を実施する。研究項目1: 任意の生理機能を光制御する遺伝子指向性ケージドドラッグの開発:細胞老化に関与する生理機能を光制御する遺伝子指向性ケージド化合物群を設計・合成する。操作する生理機能として,アポトーシス誘導(細胞死),タンパク質合成阻害,DNA複製の阻害,オートファジー,エピゲノムリモデリングを選択する。いずれも,老化細胞の除去,細胞老化の促進や抑制に関与するとともに,生物種を問わず,広く生命現象全般に関わる現象を対象にすることから,本研究の目的に適う。各現象を選択的に制御できる既存の小分子性プローブを,beta-ガラクトシダーゼ(beta-Gal)と光作動性を付与したプロドラッグ,遺伝子指向性ケージドドラッグに変換する。哺乳動物の老化細胞では,SA-beta-Gal活性の上昇がその検出の第一選択マーカになっているので,beta-Gal作動性は,遺伝子指向性ケージドドラッグに老化細胞選択性を付与する。老化細胞の光除去や,老化細胞選択的な細胞周期,オートファジー,遺伝子発現の光操作が可能になる。合成した化合物群は,光反応性,鍵酵素反応性,暗所安定性,水溶性,細胞膜透過性等を確認した後,哺乳動物培養細胞を用いて,老化モデル細胞選択的に目的の機能を光操作できることを実証する。
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