研究課題/領域番号 |
23K26803
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補助金の研究課題番号 |
23H02110 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 奈通子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60708345)
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研究分担者 |
浜本 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10533812)
横井 彩子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (10760019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | マグネシウム / 液胞 / イオン選択性 / マグネシウム濃度 |
研究開始時の研究の概要 |
生細胞には細胞質内マグネシウム濃度を検知し、それを一定の範囲に維持するメカニズムが存在すると考えられる。このメカニズムの主要な構成要素と考えられるのが液胞である。液胞は、元素が過剰にある環境時に蓄えた元素を、欠乏時には細胞質に再供給すると考えられ、これを担う分子こそが、細胞質内マグネシウム濃度維持の鍵となる要素であると予想される。そこで本研究では、液胞から細胞質へのマグネシウムの再取り込みを担うマグネシウム輸送体がマグネシウム濃度を検知してマグネシウムを選択的に輸送する仕組みの理解を目指し、植物や微生物の変異体を作出して生理学的、蛋白質化学的な解析を行う。
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研究実績の概要 |
生細胞には細胞質内マグネシウム濃度を検知し、それを一定の範囲に維持するメカニズムが存在すると考えられる。このメカニズムの主要な構成要素と考えられるのが液胞である。液胞は、元素が過剰にある環境時に蓄えた元素を、欠乏時には細胞質に再供給すると考えられ、これを担う分子こそが、細胞質内マグネシウム濃度維持の鍵となる要素であると予想される。本年度は、シロイヌナズナの液胞に局在して液胞から細胞質へのマグネシウム輸送を担うタンパク質AtMRS2-1およびAtMRS2-10の構造と機能の解析を進めた。シロイヌナズナ変異体の表現型を、AtMRS2-1の単独変異株とAtMRS2-1/-10二重変異株を用いて詳細に解析したところ、既往の知見と異なり、AtMRS2-1単独の欠損によって植物体内マグネシウム動態が変化し、その結果、低マグネシウム環境での生育が抑制されることが分かった。特に、AtMRS2-1が、根から地上部へのマグネシウム輸送に必要であり、AtMRS2-1の欠損によって、根に蓄えられたマグネシウムの地上部への供給が滞ることが証明された。大腸菌でのイオン輸送活性測定についても準備を進め、予備実験を終えることができた。植物体内での細胞質マグネシウム濃度測定を実現するためFRETシステムを使ったMARIOタンパク質を細胞質に局在させることに成功した。プロトプラストでの一過的発現に続き、年度後半からは形質転換によってMARIOをゲノムに導入した植物の作出を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画ではシロイヌナズナの液胞局在タンパク質に加えて、イネの液胞局在タンパク質を同定することになっていたが、今年度ではこれに至らなかった。この点については計画から遅れているが、一方で、シロイヌナズナの解析に必要な変異体の作出が順調に進み、AtMRS2-1の欠損変異体に加えて、これにAtMRS2-1を導入した相補変異株を取得することに成功した。これにより、本研究計画の後半で予定しているタンパク質機能解析に必要な植物材料が揃い、予定よりも早く表現型解析を開始することができた。機能解析に使用するマグネシウムの放射性同位体Mg-28も年間2回の供給を受けることができ、AtMRS2-1の表現型解析の予備実験を実施することができた。また、細胞質でMARIOタンパク質を発現させることができ、現在は植物変異体の作出が進んでいることから、研究全体として、進捗は概ね順調であると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度に完了しなかったイネの液胞局在MRS2タンパク質の同定を進めるため、イネのプロトプラストを使った一過的発現実験を早期に実施する。なお、候補であるMRS2遺伝子のcDNAクローンは入手済みであり、一過的発現の実験系も確立済みである。そして、液胞局在MRS2の配列と、予測される立体構造の比較から、マグネシウムのSelevtivityとSensingに必要なアミノ酸の候補を選定する。なお、当初予定ではマグネシウム濃度検知に必要なマグネシウム結合部位が判明している微生物のマグネシウム輸送体CorAを比較参照し、植物のMRS2タンパク質においてマグネシウム結合部位となる候補を複数選定する計画であったが、現在、シロイヌナズナAtMRS2-1の結晶構造解析も進んでいる状況であるため、この結果も考慮してアミノ酸残基を最終決定する方策とする。選定したアミノ酸残基を変異させ、それがイオン輸送活性に与える影響を、大腸菌変異株や酵母の液胞膜を用いた電気生理学実験により定量的に評価する。
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