研究課題/領域番号 |
23K26816
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補助金の研究課題番号 |
23H02123 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (20401888)
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研究分担者 |
紺野 宏記 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80419267)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 細菌オルガネラ / 表面物性解析 / 高速原子間力顕微鏡 / 生体ナノ磁石 / 生物磁気センサー / 磁鉄鉱 / 微粒子 / 原子間力顕微鏡 / 磁性細菌 / 高速AFM |
研究開始時の研究の概要 |
マグネトソームは磁石を内包しているのに、なぜか磁気相互作用で凝集しない。これは、マグネトソームが地磁気を感知する磁気センサとして働くための重要な特性である。マグネトソームを覆う蛋白質層マトリクスは、表層を機能化し、磁気凝集を防ぎ、細胞重心軸への配置にも寄与すると考えられる。本研究では、マトリクスでどの分子がどのように働き生体磁気センサーとして特性を付与するのかを明らかにする。得られる成果は、生物の磁気感知やマグネトソームの分子機構を明らかにするだけでなく、細菌オルガネラ全般に適用できる解析法を整備する。さらに、有用微粒子の表面物性を制御するナノテクノロジーへの応用も期待できる。
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研究実績の概要 |
磁性細菌は、磁鉄鉱結晶を内包するマグネトソームを形成し、これを細胞の長軸方向に沿って鎖状に固定することで地磁気センサとして利用する。マグネトソームは、磁石を内包するにも関わらず磁気相互作用で凝集せず、溶液中では直鎖状構造を維持したまま分散する。これは、細胞内でマグネトソームが磁針として働くための重要な特性である。本研究では、マグネトソームを覆う蛋白質層であるマトリクスで、どの分子がどのように働きマグネトソームを分散させるのかを明らかにすることを目的とした。 本研究では、マトリクスに最も多く含まれる蛋白質であるMamAに注目する。MamAはTPRモチーフから構成される可溶性蛋白質で、マグネトソームの最外層を覆っており、マグネトソームの活性化に関わるとの報告がある。しかし具体的な機能や分子機構は明らかにされていない。本年度は、まず野生株及びmamA遺伝子欠損株を60Lの液体培地で大量培養し、得られた細胞からマグネトソームを磁気精製した。本研究では、高速原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ顕微鏡技術を用いて、マグネトソームの表面物性を測定し、その分散活性への寄与を評価する。本年度は、マグネトソームの高速AFMでの測定条件を決定した。次に、マグネトソームの分散活性を評価する磁気沈降法を確立した。本法では、磁気コイルを設置した分光光度計を用いて磁界中でのマグネトソームの沈降速度を測定した。野生株のマグネトソームとMamA欠損株やアルカリ処理でマトリクス蛋白質を部分的に除去したマグネトソームを比較したところ、欠損株由来やアルカリ処理したマグネトソームでは沈降速度が著しく増加した。このことから、MamAが分散活性に寄与することが示唆された。また、野生型マグネトソームは塩濃度の高い溶液中で沈澱することから、静電的な相互作用がマグネトソームの分散に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初の計画であった①マトリクス蛋白質の網羅的同定、②マトリクス蛋白質欠損マグネトソームの調製、③マグネトソーム表層物性解析法の開発のうち、②③については、計画通り実施した。①については、野生株から単離したマグネトソームのマトリクス蛋白質をトリプシン処理する条件を検討した。マトリクス蛋白質MamAとマグネトソーム膜蛋白質MamCをマーカー蛋白質としてイムノブロッティングによりMamAが優先的に消化される反応条件を調べた。その結果、膜蛋白質もやや分解されるもののマトリクス蛋白質を優先的に消化できる条件を決定した。今年度は、マトリクス蛋白質の網羅的同定には至らなかったが、来年度以降にマトリクス蛋白質の部分消化によって得たペプチドを質量分析器で調べることでマトリクスに存在する蛋白質を同定する。一方、マグネトソームの分散活性を簡便かつ定量的に評価できる磁気沈降法を確立し、マグネトソームの分散活性を定量化するなど当初計画よりも進展している研究項目もあることから、当初の計画通り概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、マトリクスに存在するMamA蛋白質がマグネトソームの分散を担う可能性が示された。2024年度は、in vivoでの補完実験やin vitroでの再構成実験を行うことで、MamAの機能を検証する。補完実験では、mamA遺伝子欠損株に、野生型MamAや各種変異型MamAをプラスミドから発現させ得られた菌株からマグネトソームを調製する。得られたマグネトソームの分散活性を磁気沈降法で調べることで、MamAの分散活性への寄与と、その分散活性に必要なアミノ酸残基の同定を目指す。また、精製マグネトソームからアルカリ処理でMamAを除去したマグネトソームやmamA遺伝子欠損株から得たマグネトソームに、MamA蛋白質を再構成する実験にも挑戦し、in vivoとin vitroの実験からMamAの分散活性への寄与を確かめる。また、高速AFM位相イメージング法を用いてマグネトソームの局所表面物性を測定し、野生株とmamA遺伝子欠損株由来のマグネトソームの表面物性を比較する。これによりどのような表面物性がマグネトソームの分散に寄与するかについての情報を得る。
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