研究課題/領域番号 |
23K26817
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補助金の研究課題番号 |
23H02124 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
新谷 政己 静岡大学, 工学部, 教授 (20572647)
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研究分担者 |
鈴木 治夫 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40638772)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | プラスミド / 宿主 / IncP/P-1群 / 共進化 |
研究開始時の研究の概要 |
細菌のプラスミドは,種々の遺伝子群を水平伝播し,細菌に新たな生理的機能を付与する.しかし,プラスミド自体の性状(宿主内での安定性や,宿主間の接合伝達頻度,宿主域)を変化・多様化させる要因については解っていない.また,宿主細菌にとって必須でないプラスミドが,細菌群集内で長期にわたって淘汰されずに存続してきた機構についても不明のままである.本研究課題では,研究代表者らが発見したプラスミドを対象に,それらの性状の違いをもたらす要因を明らかにする.並行して,その性状の違いが,細菌群集内におけるプラスミドの動態にどのような違いを生じるのかを検証し,プラスミドと細菌の共存機構の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
細菌のプラスミドは,種々の遺伝子群を水平伝播し,細菌に新たな生理的機能を付与する.しかし,プラスミド自体の性状(宿主内での安定性や,宿主間の接合伝達頻度,宿主域)を変化・多様化させる要因については解っていない.また,宿主細菌にとって必須でないプラスミドが,細菌群集内で長期にわたって淘汰されずに存続してきた機構についても不明のままである.本研究課題では,研究代表者らが発見したプラスミドを対象に,それらの性状の違いをもたらす要因を明らかにする.並行して,その性状の違いが,細菌群集内におけるプラスミドの動態にどのような違いを生じるのかを検証し,プラスミドと細菌の共存機構の解明を目指す.今年度は,系統的には類縁なのに,宿主域や宿主内での安定性が著しく異なる8種類のIncP/P-1群プラスミド(それぞれ異なる亜群に属する)について,その一部の性状比較を行った.その結果,亜群の違いによって,宿主域や宿主内での安定性が異なることが示された.次に,こうした性状の違いを生む因子の特定を試みた結果,プラスミド上の遺伝子の有無によって,性状が変化する可能性が示された.また,各プラスミドと染色体の塩基配列の特徴に注目したところ,プラスミドと,宿主となる染色体の塩基配列の特徴が類似すること,また,プラスミドの塩基配列の特徴の違いによって,宿主域が異なることも示唆された.以上,プラスミドと宿主の共進化に重要な因子の候補を複数見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,IncP/P-1群プラスミド(それぞれ異なる亜群に属する)について,一部の性状比較を行ったところ,系統的には類縁なのに,宿主域や宿主内での安定性が著しく異なることが判明した.次にその性状の違いを生む因子の特定を試みた.遺伝子構成を比較した結果,性状が大きく異なる亜群のプラスミドは,他の亜群には存在する1本鎖DNA結合タンパク質Ssbをコードする遺伝子を含まなかった.そこで,ssbを含むプラスミドから,当該遺伝子を除いて複製の可否を検証したところ,形質転換体を得られない,という結果が得られた.現在より詳細な実験を試みている. また,他群のプラスミドについて,塩基配列の特徴について注目したところ,プラスミドと宿主になる細菌染色体における連続塩基の出現頻度が互いに類似することが示唆された.そこで,上記プラスミドを含む15種類のプラスミドについて,異なる門・綱に属する塩基配列既知の細菌に対し,各プラスミドが接合伝達するかどうか,接合実験を行って確かめた.その後,プラスミドと染色体の塩基配列の特徴と,接合伝達の可否について,機械学習を行い,プラスミドの塩基配列から,その宿主になるかどうかを予測できるかどうか検証した.まだ,予備データであるが,約80%の正答率を得ている.以上より,本課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き,異なる亜群に属する,8種類のIncP/P-1群プラスミドを用いて,異なる宿主内における性状(コピー数や安定性,異なる細菌間の接合伝達頻度)を,既存のIncP/P-1群プラスミドpBP136と比較する.このとき,宿主として用いる候補株はグラム陰性細菌のPseudomonas属と大腸菌を中心に行う.並行して,研究分担者の鈴木らは,各プラスミドの遺伝子レパートリー(相同遺伝子の有無)の比較,保存された遺伝子の塩基配列,アミノ酸配列の双方のアラインメントに基づく系統関係の推定,塩基組成(GC含量,連続塩基頻度,コドン使用頻度など)の比較を行うことで,性状の違いを生じる候補となるプラスミド上の因子を探索する.違いが認められた遺伝子・DNA領域については,別のプラスミドのものと入れ替えたり,相補したりすることで,宿主細菌の表現型が変化するか実験により新谷らが検証する.また,宿主候補については,鈴木らがその染色体の塩基組成を算出し,プラスミドの塩基組成と比較して,安定性や接合伝達頻度に違いが生じるかどうか推定し,新谷が実験による検証を行う. また,新谷らは各プラスミドのモデル細菌群集内における動態比較を行う.性状の異なるIncP/P-1群プラスミドの保持菌株を1種類ずつ,塩基配列の判明している124種類程度のモデル細菌群集と混合させる.その後,プラスミドと受容菌との塩基組成の類似度が,各プラスミドの宿主域にどのくらい影響するのかを,新谷・鈴木らが共同で機械学習等を用いて精査し検証する.
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