研究課題/領域番号 |
23K26821
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補助金の研究課題番号 |
23H02128 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | NAD / ニコチンアミドモノヌクレオチド / 好熱菌 / 酵素 / ニコチンアミドヌクレオチド / Thermus thermophilus / サルベージ合成 / 耐熱性酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、NAD類縁化合物のひとつであり、高い商業価値を有するニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の生産技術の開発に取り組む。NMN生合成に関わる好熱性酵素を組み合わせ、de novo合成とサルベージ合成が同時に進行するユニークなNMN生産酵素カスケードを構築する。熱安定性に乏しいNMNに対し、「壊れたら、また作る」という新たな発想に基づいた生産技術を提供する。 また、本カスケードの鍵酵素ともなる高度好熱性ニコチンアミドホスホリボシル化酵素(NPRT)の取得のため、同酵素の探索と分子育種を行う。これにより、NADサルベージ合成経路の多様化を通じた好熱菌の温度適応機構の一端を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、NAD類縁化合物のひとつであり、高い商業価値を有するニコチンアミドヌクレオチド(NMN)の新規生産技術の開発に取り組む。好熱菌のNADサルベージ合成経路(NADをその熱分解物から再合成する代謝経路)に関する先行研究の成果をヒントに、組換え好熱性酵素を用いて、de novo合成とサルベージ合成が同時に進行するユニークなNMN生産酵素カスケードを構築する。安定性の低さにより効率的生産が妨げられてきたNMNに対し、「壊れたら、また作る」という柔軟な発想に基づいた生産技術を提供する。また、本カスケードの鍵酵素ともなる高度好熱性ニコチンアミドホスホリボシル化酵素(NPRT)の取得のため、同酵素の環境ゲノムからの探索ならびに適応進化実験による分子育種を行う。好熱性NPRTの探索・育種は、新規NMN生産技術の開発に資するだけでなく、NADサルベージ合成経路の多様化を通じた好熱菌の温度適応機構の一端を明らかにするものともなる。当該年度は、NADサルベージ合成経路の多様性の検証を目的とした高度好熱菌Thermus thermophilusの適応進化実験、ならびにNMN生産酵素カスケードの構築への足掛かりとして、多段階酵素反応によるNADの生産に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(i) 好熱菌のNADサルベージ合成経路の分子多様性を検証すると、また(ii)ここで見いだされた好熱性酵素を用いて、NADの類縁化合物のひとつであるニコチンアミドヌクレオチド(NMN)の合成に利用可能な多段階酵素反応(カスケード)をデザイン・構築することを目標とする。当該年度は、まず高度好熱菌Thermus thermophilusのNADサルベージ合成経路の一部をノックアウトし、好熱性が低下した遺伝子破壊株(Taniguchi et al, J Bacteriol, 2017)に対する適応進化実験を行うことで、実験的に同経路の分子多様性を創出することに取り組んだ。NADサルベージ合成経路能の欠失により本破壊株は、高温域で細胞内NAD濃度の恒常性を保つことができず、野生株に比べて低い生育温度上限を示す。本破壊株を徐々に高温培養条件に適応させていくことで、同株が本来生育できない高温域においても野生株と同程度の生育を示す生育復帰株を複数取得することができた。またNMN合成カスケードの構築に先立ち、ニコチンアミドとアデニンを基質としたNADのsemi de novo合成カスケードを構築し、ここにサルベージ合成酵素群を添加したものとの間で生産性の比較を行った。この結果、サルベージ合成酵素群を添加した系においてのみNADの合成を確認することができ、「(熱分解により)壊れたら、また作る」という本研究のコンセプトの一端を実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに獲得された生育復帰株のゲノム解析を行い、原因遺伝子の同定を行う。そのためのアプローチとして2つの方策を計画している。ひとつは、複数の復帰株で共通してみられる変異を抽出するバイオインフォマティブなアプローチである。もうひとつはThermus thermophilusの高いnatural competency(自然形質転換能)を利用するものである。具体的には、復帰変異株のゲノム断片を元株であるNADサルベージ合成経路破壊株に導入することで、同様の表現型(高温域での生育)を示す組換え株を再取得し、そのゲノムを解析するものである。後者により実験的な裏付けを行うことで、目的とする変異点の同定をより高精度に絞り込むことができる。 NMN合成カスケードの構築に向けては、鍵酵素となる高度好熱性ニコチンアミドホスホリボシル化酵素(NPRT)の取得を進めつつ、前年度までに構築されたNAD合成カスケードの反応条件の最適化を進める。NMNおよびNAD合成カスケードを構成する酵素の多くは互いに重複していることから、NAD合成カスケードを用いた試験で得られた情報の大部分は、NMN合成のためにも転用可能である。
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