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植物が揮発性化合物刺激を「記憶」し、次の刺激で「想起」するメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K26833
補助金の研究課題番号 23H02140 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分38030:応用生物化学関連
研究機関山口大学

研究代表者

松井 健二  山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)

研究分担者 杉本 貢一  筑波大学, 生命環境系, 助教 (00511263)
高林 純示  京都大学, 生態学研究センター, 名誉教授 (10197197)
塩尻 かおり  龍谷大学, 農学部, 教授 (10591208)
本庄 三恵  京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
吉村 大輔  龍谷大学, 農学部, 助手 (50973913)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
キーワード揮発性物質 / 誘導抵抗性 / エピゲノミクス / プライミング / 香り受容 / 構造活性相関 / みどりの香り / トウモロコシ
研究開始時の研究の概要

研究代表者らは植物がVOC刺激を数十日間「記憶」し、その間に次の刺激を受けると「記憶」を「想起」して、より早くより強く防衛応答を誘導することを確認した。本研究ではこうした「記憶」メカニズムを明らかにすることで植物の生存戦略の基盤を理解する。そこで植物がVOC刺激を「記憶」し、「想起」するメカニズムを明らかにすることを目的とし、トウモロコシを対象に、植物「記憶」の「想起」がもたらす効果の理解、「記憶」担体の解明、「記憶」符号化機構の解明、圃場での「記憶」の有効性評価を実施する。

研究実績の概要

植物が香り化合物に応答することは知られているが往々にして生理生態学的にありえない高濃度の香り化合物を用いて研究されている。そこで、論文検索により、低濃度の香り化合物に再現性良く応答する系としてトウモロコシ実生とヘキセニルアセテート (HAC) 蒸気が有望と考え、トウモロコシ実生へのHAC曝露実験系を構築した。この実験系を用いた検討によりトウモロコシはHAC曝露によりシスタチン遺伝子の発現誘導など顕著な応答を示すことを確認した。そこで、シスタチン遺伝子発現量をマーカーに構造活性相関解析を実施し、トウモロコシ実生は3-ヘキセノール構造を厳密に認識しており、例えば、炭素が一つ長くなった3-ヘプテノールが応答を引き起こさないことが明らかとなった。そこで、ヘキセノールとヘプテノールを用いてトウモロコシ実生の応答の時間経過を観察すると、曝露初期にはトウモロコシ実生はどちらの化合物に対しても応答するが、2時間後にはヘキセノールにだけ応答していることを見出した。つまり、トウモロコシ実生は香り化合物に対する早い応答と遅い応答があり、前者は構造特異性が低いが後者は構造特異性の高い応答であることが示唆された。またこうした香り化合物曝露で細胞内のMAPKタンパク質のリン酸化が一過的に進行することを確認した。MAPKリン酸化が構造特異的か否か確認する必要がある。一方、トウモロコシ実生をあらかじめセイタカアワダチソウ葉由来の香り化合物に曝露しておき、食害模倣処理を行うと前処理したトウモロコシ実生でジャスモン酸などの植物ホルモン類の生成が無処理植物に比べて素早いことを確認した。これはプライミング現象と考えられ、より精細な実験系の最適化を進め、プライミングを受けたトウモロコシ実生についてトランスクリプトーム解析を進めていく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の最終目標は香り化合物による植物プライミング現象をエピゲノム解析により紐解くものである。そのためには再現性良く植物にプライミングを引き起こす実験系を構築する必要がある。2023年度までにトウモロコシ実生が生理生態学的にあり得る濃度のヘキセニルアセテート曝露に応答することを確認し、その上で構造活性相関解析を進めて究極構造として3-ヘキセノールを確定することに成功した。このときはシスタチン遺伝子発現を指標に応答を見ているためプライミングとは言えないが、こうした構造活性相関解析を通じてトウモロコシ実生が持つ香り受容因子に関する知見を得ることでプライミングを引き起こす最初のイベントの理解に繋がることが期待できる。一方、セイタカアワダチソウ由来香り化合物への曝露実験系を構築し、1週間にわたって香り曝露したのちに食害模倣を施してプライミングを観察した。これまでにオキソフィトジエン酸などの防衛関連植物ホルモン生合成がプライミングによってより素早く、より強く誘導されることを確認している。ただ、セイタカアワダチソウ葉由来の香り化合物の組成と濃度を制御することが困難で、プライミングの様式にやや再現性が乏しい場合があり、実験系の改善の必要がある。このようにプライミングの分子機構に迫る予備的な検討は概ね完了しており、最終的な再現性の確認を通じて2024年度以降はトランスクリプトーム解析を実施できる段階に至っていると判断できる。

今後の研究の推進方策

トウモロコシ実生についてヘキセノール受容機構の解明を進める。今までにMAPKリン酸化を確認しているのでMAPKリン酸化を指標にしてリン酸化プロテオームを実施することでトウモロコシ実生における香り受容信号伝達経路に関わる因子を特定する。
一方、セイタカアワダチソウ曝露実験ではセイタカアワダチソウ由来香り化合物を人工的に作成し、徐放性資材を用いた香り曝露模倣実験系を構築する。その上で香り曝露、食害模倣実験を繰り返し、実験系の最適化と再現性の確認を進める。プライミングを受けたトウモロコシ実生についてはまずはトランスクリプトーム解析を進め、応答している遺伝子のプロファイリングを進める。その上で、CHIP-Seqを進め、エピゲノム解析によりプライミングによる環境シグナルの記憶機構を解明する。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (21件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Chiang Mai University(タイ)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [国際共同研究] University of Tennessee(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] Green leaf volatile sensory calcium transduction in Arabidopsis2023

    • 著者名/発表者名
      Aratani Yuri、Uemura Takuya、Hagihara Takuma、Matsui Kenji、Toyota Masatsugu
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 6236-6236

    • DOI

      10.1038/s41467-023-41589-9

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Structure-activity relationship of volatile compounds that induce defense-related genes in maize seedlings2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yasuhiro、Fujita Kenya、Date Minori、Watanabe Bunta、Matsui Kenji
    • 雑誌名

      Plant Signaling Behavior

      巻: 18 号: 1 ページ: 2234115-2234115

    • DOI

      10.1080/15592324.2023.2234115

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of a tomato UDP-arabinosyltransferase for airborne volatile reception2023

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto Koichi et al.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 677-677

    • DOI

      10.1038/s41467-023-36381-8

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Potential of endophytic Trichoderma in controlling Phytophthora leaf fall disease in rubber (Hevea brasiliensis)2023

    • 著者名/発表者名
      Sirikamonsathien Thamakorn、Kenji Matsui、Dethoup Tida
    • 雑誌名

      Biological Control

      巻: 179 ページ: 105175-105175

    • DOI

      10.1016/j.biocontrol.2023.105175

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] キノコの主要成分、マツタケオール(1-オクテン-3-オール)はどのように作られるのか?2023

    • 著者名/発表者名
      手嶋琢、松井健二
    • 雑誌名

      香料

      巻: 299 ページ: 29-39

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] トウモロコシ実生のみどりの香り受容に関する構造活性相関解析2024

    • 著者名/発表者名
      松井健二, 鷹取雄介, 田中康大, 藤田賢也, 伊達みのり, 渡辺文太
    • 学会等名
      日本農芸化学会2024年度大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 香り化合物を用いた植物の環境適応戦略2024

    • 著者名/発表者名
      松井健二
    • 学会等名
      第39回 資源植物科学シンポジウム 及び 第15回 植物ストレス科学研究シンポジウム 植物科学の 基礎から応用まで
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] トマトにおける灰色かび病感染特異的揮発性化合物マーカーの探索2024

    • 著者名/発表者名
      柴﨑悠史, 松井健二
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部第67会講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Linalool exposure enhanced defense against a herbivore and caused accumulation of linalyl diglycoside2023

    • 著者名/発表者名
      Ntoruru, J. M, Ohnishi, T, Matsui, K
    • 学会等名
      The 9th Asian-Oceanian Symposium on Plant Lipids
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Characterization of enzyme system responsible for the production of mushroom volatile compound, 1-octen-3-ol2023

    • 著者名/発表者名
      Nagata,Y, Teshima, T, Matsui, K
    • 学会等名
      The 9th Asian-Oceanian Symposium on Plant Lipids
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Effects of disruption of ABC transporter genes on metabolites associated with oil bodies in Marchantia polymorpha L.2023

    • 著者名/発表者名
      Kawaguchi, T, Moriwaki, Y, Kanazawa, T, Matsui, K
    • 学会等名
      The 9th Asian-Oceanian Symposium on Plant Lipids
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Ca2+-induced activation of lipoxygenase 2 accounts for green leaf volatile-burst in Arabidopsis leaves2023

    • 著者名/発表者名
      Nakayama, K, Tanaka, M, Mochizuki, S, Matsui, K
    • 学会等名
      The 9th Asian-Oceanian Symposium on Plant Lipids
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] トウモコロシ実生はみどりの香りを少なくとも二つの独立した仕組みで受容している2023

    • 著者名/発表者名
      田中 康大, 鷹取 雄介, 伊達 みのり, 松井健二
    • 学会等名
      第35 回植物脂質シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] カルシウムによるシロイヌナズナリポキシゲナーゼ2の活性化はみどりの香りバーストに関与するか?2023

    • 著者名/発表者名
      Kenji Matsui
    • 学会等名
      第33回国際シロイヌナズナ会議
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 植食者に対する直接防衛、間接防衛に対するみどりの香りの機能2023

    • 著者名/発表者名
      小澤理香、松井健二
    • 学会等名
      第33回国際シロイヌナズナ会議
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 植物の葉を潰すと青臭いのはどうして?2023

    • 著者名/発表者名
      松井健二
    • 学会等名
      東京理科大学総合研究院生物環境イノベーション研究部門セミナー
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ゼニゴケ油体への代謝物輸送に関わるABCトランスポーターの機能2023

    • 著者名/発表者名
      川口智子, 森脇祐太, 金澤建彦, 松井健二
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部大65回講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] みどりの香りバーストはリポキシゲナーゼのCa2+による活性化に依存する2023

    • 著者名/発表者名
      田中萌菜, 松井健二
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部大65回講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [備考] 山口大学農学部農産製造学研究室

    • URL

      https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~matsui/member.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

URL: 

公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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