研究課題/領域番号 |
23K26866
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補助金の研究課題番号 |
23H02173 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辰川 英樹 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (10565253)
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研究分担者 |
伊藤 圭祐 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40580460)
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90442954)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 線維化 / タンパク質架橋酵素 / 架橋修飾 / プロテオミクス / 細胞外基質 / 架橋酵素 / トランスグルタミナーゼ / 細胞外マトリクス / 線維芽細胞 / コラーゲン / デコイペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質間に共有結合を形成する架橋酵素は、表皮形成や臓器の線維化などの組織の硬化現象に関わる。しかしながら、架橋される特定のタンパク質(アミノ酸残基)の修飾がどのように組織硬化を引き起こすのか、その全容は未だ解明されていない。本研究では、申請者らが開発した“架橋されるタンパク質群の修飾を解析する新技術”を用いて、架橋反応が「いつ」「どこで」「どの程度」起こり、「組織硬化にどのように関与するか」の全貌について、細胞や動物レベルで解明する。さらに、組織硬化の制御法についても開発する。研究成果は、組織硬化のメカニズムの解明だけでなく、新規の治療法開発につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
架橋酵素TG2の欠損マウスが線維化を有意に抑制することから、本研究ではTG2により架橋修飾される分子に注目し、線維化の増悪に繋がる詳細な病態機構を解析する。2023年度には、TG2により架橋修飾される基質や修飾残基の解析法の最適化を目指した。これまでにTG2の修飾残基を網羅的に調べる解析系として、未固定組織切片を用いた解析手法を開発してきた。2023年度は当初の計画通り、生体マウスでTG2により架橋修飾される基質や残基を捉えるため、肺線維化モデルにおいて臓器回収前に気管からプローブを投与し、修飾された基質や残基を網羅的に解析した。結果として、肺線維化で増加する47個のタンパク質の特定の修飾残基を同定し、このうち、34個の特定の架橋修飾残基の増加はTG2依存的であった。これらの同定された架橋修飾残基は、組織切片を用いた実験結果とも一致し、2種の実験間でECMの架橋修飾残基に共通性が見られた。 さらに、ECMを効率よく抽出するための最適化として、高濃度SDSを用いた条件検討を行った。前述した未固定の組織切片を用いたプローブの架橋反応後に組織切片を高濃度SDSで抽出したところ、これまでとは異なる沈殿がほとんど見られない抽出液が作製できた。しかしながら、このような条件では、質量分析に用いる前処理が困難であるため、試薬調整法を再検討した。その結果、Single-Pot Solid-Phase-enhanced Sample Preparation(SP3)法を用いて、溶媒置換、タンパク質の抽出、トリプシン消化、アルキル化、分画をすべて同一チューブ内で行う実験系が構築できた。同手法により、総タンパク質や修飾残基の同定数は3倍程度に向上し、肺線維化で有意に増加する架橋修飾残基として663個所を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、TG2により架橋修飾される基質や修飾残基の解析法の最適化を実施した。当初の計画通り、生体マウスでTG2により架橋修飾される基質や残基を捉えるための新たな実験手法を開発し、生きたマウス個体において、肺線維化においてTG2依存的に増加する34個の特定の架橋修飾残基を見出した。これらの同定された架橋修飾残基は、組織切片を用いた実験結果とも一致が見られ、2種の実験間でECMの架橋修飾残基に共通性が見られた。さらに、ECMを効率よく抽出するための最適化として、高濃度SDSを用いた条件検討を行い、Single-Pot Solid-Phase-enhanced Sample Preparation(SP3)法を用いた質量分析のための試料調整を行う新たな実験系の構築に成功した。同手法により、総タンパク質や修飾残基の同定数は3倍程度向上し、肺線維化で有意に増加する架橋修飾残基として663個所を同定することができた。これらのことから、概ね予定通り実験計画を実施できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に肺線維化モデルにおいて実験条件の最適化を行ったが、生きたマウス個体での修飾基質や残基の同定解析手法は、他の線維化モデルである肝臓や腎臓には適応が難しい。本年度の研究により、生きたマウス個体と未固定組織切片を用いた解析結果には、同定された修飾残基においても共通性が見られたことから、組織切片を用いた人工的な解析系であっても結果の妥当性が担保された。そのため、臓器間で比較検討を行う実験手法としては、未固定組織切片を用いた解析系を用いることとし、今後の研究では、同手法を用いて異なる臓器の線維化組織における架橋修飾基質や修飾残基の比較検討を行う予定である。また、臓器間の比較実験のための生体マウスにより近づけた実験として、精密切断組織スライス(PCTS)法により、生体の外に取り出した組織スライスを培養したex vivoの線維化モデルを用いて同様の検討を行う予定である。 また、2023年度の実験において、TG2により架橋修飾される候補配列のデコイペプチドを作成し、これらの周辺配列が競合的に特定の架橋修飾反応に影響するかどうか、線維芽細胞を用いたin vitroでの線維化の病態解析系(コラーゲンの蓄積)を確立し、その関与について検証する予定である。
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