研究課題/領域番号 |
23K26875
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補助金の研究課題番号 |
23H02182 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 宏和 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50755212)
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研究分担者 |
関 光 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30392004)
藤 佑志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (90847815)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | トリテルペノイド / ダイズ / 耐湿性 / 二次通気組織 / イメージングMS |
研究開始時の研究の概要 |
体内酸素循環の役割を果たす二次通気組織にはトリテルペノイドが蓄積し,二次通気組織の酸素輸送能の維持に貢献していることを明らかにしている.しかしながら,トリテルペノイドは配糖体を含めると非常に多様な化合物で構成されることから,二次通気組織で機能する化合物の実態は不明なままである.そこで,二次通気組織に蓄積するトリテルペノイドを同定し,その局在や機能を明らかにする.また,トリテルペノイドが耐湿性獲得のために普遍的に重要であることを示すとともに,トリテルペノイドがダイズ耐湿性向上の育種素材として利用可能であるかを明確にすることを目指す.
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研究実績の概要 |
日本においてダイズは主に排水性の悪い水田転換畑で栽培されることから,湿害が問題となっており,ダイズの耐湿性向上は重要な育種目標である.ダイズ耐湿性向上のためには,二次通気組織を利用する必要があるものの,その知見は少ない.申請者らはこれまでに,ダイズの Lupeol synthase1(GmLUS1) 遺伝子が,二次通気組織におけるトリテルペノイドの蓄積に関与し,結果として二次通気組織の酸素輸送能の維持に貢献していることを明らかにしている.しかしながら,トリテルペノイドは配糖体を含めると非常に多様な化合物で構成されることから,二次通気組織で機能する化合物の実態は不明なままである.そこで本研究課題では,二次通気組織に蓄積するトリテルペノイドを同定し,その局在や機能を明らかにする.本研究課題では二次通気組織の耐湿性機能に関わる有用トリテルペノイドの実態とその植物体内での役割を明らかにし,育種利用のための知見を得ることを目的としている.2023年度は,CYP716A38および40の二重変異体の作出に成功した.そこで,この変異体の二次通気組織におけるトリテルペノイドの蓄積を調査したところ,想定通りルペオールのみを蓄積し,ベツリン酸の蓄積は検出されなかった.これにより,二次通気組織において,ルペオールとベツリン酸の両方を蓄積しない,lus1変異体と,ルぺオールのみを蓄積するcyp716a二重変異体が得られたことから,今後はこれらの変異体を用いて比較解析を行なっていく予定である.また,本年度のLC/MS/MS解析によりルペオールやベツリン酸の配糖体は検出されなかったことから,ルペオールやベツリン酸は,修飾されずに機能している可能性が高いと考えられる.今後は,得られた変異体を中心に解析を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次通気組織にルペオールとベツリン酸の両方が蓄積している.当初利用可能であったlus1変異体は,二次通気組織にトリテルペノイドを蓄積しない変異体であることから,ルペオールとベツリン酸の役割を分けて解析することはできなかった.しかし,CYP716A38および40の二重変異体の作出に成功し,さらに想定通り二重変異体はルペオールのみを蓄積し,ベツリン酸の蓄積は検出されなかったことを明らかになった.これにより今後は二次通気組織における分子種ごとのトリテルペノイドの役割を明らかにすることができると考えられる.また,LC/MS/MS解析により,ルペオールやベツリン酸の配糖体は検出されなかったことから,二次通気組織においてルペオールとベツリン酸は配糖化されるずに機能している可能性が高いことが明らかとなった.さらに,ダイズ以外の二次通気組織に蓄積するトリテルペノイドの分子種の構成を明らかにするために,まずセスバニアの二次通気組織に蓄積するトリテルペノイドを測定したところ,ダイズとは異なることが明らかになった.今後エゾミソハギに加え,今年度オールトラリアから輸入したMelilotus siculusの種子を利用して,植物種後のとの二次通気組織におけるトリテルペノイドを解析していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
CYP716A38および40の二重変異体が得られたことから,ルペオールのみを蓄積するこの変異体を用いて細胞表面のwax構造,二次通気組織の空隙率,二次通気組織の呼吸活性,根への酸素輸送能を評価し,トリテルペノイドを蓄積しないlus1変異体と比較することで,ルペオールやベツリン酸が二次通気組織において役割の違いがあるかどうかを検証する.さらに,二重変異体における呼吸活性の結果次第になるが,lus1変異体および二重変異体の二次通気組織におけるRNA-seq解析を行うことで,トリテルペノイドがどのように細胞の呼吸活性を低下させているかについての手がかりを探る予定である.また,二次通気組織において,ルペオールやベツリン酸の配糖体が検出されなかったことから,今後はイメージングMSを用いて,ルペオールとベツリン酸を対象にその組織局在を明らかにする予定である.ダイズ以外の二次通気組織においても,セスバニアでは,ルペオールとベツリン酸以外のトリテルペノイドの蓄積も検出されたことから,今後はエゾミソハギ,Melilotus siculusの二次通気組織におけるトリテルペノイドの解析を行う予定である.また,198系統のダイズにおけるトリテルペノイド生合成遺伝子のハプロタイプ解析を進める予定である.
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