研究課題/領域番号 |
23K26890
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補助金の研究課題番号 |
23H02197 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
松村 篤 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (30463269)
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研究分担者 |
李 鋒 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 主任研究員 (30770375)
内海 ゆづ子 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 講師 (80613489)
岩田 雄二 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (80704965)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | ダイズ / 低リン耐性 / GWAS / RNA-seq |
研究開始時の研究の概要 |
将来的にリン肥料の供給が不安視される中,世界各地で作付面積が拡大しているダイズに低リン耐性を付与することが求められている.光合成による自立時期に入ったダイズでは多様なリン獲得戦略の存在が報告されているが,これら戦略を包括的に解析してリン獲得能を評価した研究はない.本研究では,想定される全ての戦略を系統間で比較し,優劣を決定する機構を遺伝的解析によって明らかにする。さらに,解明した機構の有効性評価をフィールド条件下で行い,ダイズの低リン耐性付与に向けて強固な基盤を確立する.
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研究実績の概要 |
2023年度はダイズの金属結合型リンの利用能評価と圃場での低リン耐性評価を実施した。ダイズの金属結合型リンの利用能評価については、学内ハウスにて、対照区・FePO4区・AlPO4区の3処理区からなるポット試験を実施した。様々な成長パラメータを計測し、これらを指標としてGWAS解析を実施し、難溶性リン施用に対する生育応答に関連するSNPを探索した。各形質において処理区間および品種間で有意な差がみられ、難溶性リン施用に対する生育には品種間で優劣が認められた。GWAS解析の結果、有意となり、形質への影響が比較的大きいと考えられる4、8、13番染色体上のSNPsに着目した。4番染色体上のSNPsが座乗する領域には、ホスホエノールピルビン酸/リン酸輸送体をコードすると推定される遺伝子があった。8番染色体上で有意となったSNPsは、ダイズ黄色モザイク病耐性に関与するとの報告がある遺伝子のミスセンス変異であった。また13番染色体上のSNPsはリンゴ酸の滲出に関与している可能性が考えられた。次に、世界のダイズコアコレクションを用いて、圃場における低リン耐性評価を行い、GWASを実施した。圃場にリン無施肥区とリン施肥区を設け、ダイズを栽培した。得られた乾物重及び測定値より、低リン耐性評価のための指標を算出した。これらの得られたデータを基に、GWAS解析を行った。根粒乾物重及び光合成速度を除く全ての形質において、リン無施肥区でダイズの生育が抑制された。また、低リンに強い品種も見出された。GWAS解析を行った結果、乾物重などと有意に関連し、形質への影響が比較的大きいとされる3つのSNPを検出することができた。これらのSNPはレクチン受容体様キナーゼ、エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素 (XTH)、WD40リピートタンパク質をコードする遺伝子上にそれぞれ位置していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度はアーバスキュラー菌根菌の接種効果をダイズ品種間で比較する実験を予定していたが、接種源の状態が悪かったため実験に取り組むことができず次年度に延期する結果となった。難溶性リン利用能を評価する実験は2か年の実験結果で再現性を確認することができ、2回の実験データで共通したSNPをGWASで検出することはできなかったものの、2か年の平均データから低リン耐性に寄与している可能性が高い有望な遺伝子の存在を確認することができた。圃場での低リン耐性評価試験は、当初計画通りリン施肥区とリン無施肥区で明らかな生育差が認められ、ダイズ遺伝資源の中から低リン耐性が高い品種を選定することができたのは大きな成果であると考えている。また圃場データを用いたGWASにおいても低リン耐性に関与している可能性があるSNPをいくつか検出することができた。根系構造の解析については、サンプルから取得した画像を用いて解析に必要な条件設定を調整しているとことである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施できなかったアーバスキュラー菌根菌の接種効果のダイズ品種間比較する実験に加えてこれまで未着手であった有機態リンの利用能を評価する実験と圃場での低リン耐性評価実験を2024年度に実施する.また2023年度の試験でGWASにより検出されたSNP近傍の遺伝子について発現量解析を行うとともに、難溶性リン利用能の評価試験ではRNA-seqを行う。圃場で栽培したダイズ遺伝資源のショベロミクスによる根系解析については現在解析手法を確立中である。ダイズの低リン耐性を多様な戦略から評価する必要があるため各実験を担当する人材あるいは実験をサポートする人材の確保が最優先事項である。また、サンプル数が多いため効率よくデータを入手できる手法を確立する必要がある。
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