研究課題/領域番号 |
23K26891
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補助金の研究課題番号 |
23H02198 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
飯嶋 盛雄 近畿大学, 農学部, 教授 (60252277)
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研究分担者 |
庄司 浩一 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10263394)
大門 弘幸 龍谷大学, 農学部, 教授 (50236783)
牛尾 昭浩 兵庫県立農林水産技術総合センター, 農業技術センター, 課長 (60463353)
廣岡 義博 近畿大学, 農学部, 准教授 (80780981)
泉 泰弘 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (90305558)
岩間 憲治 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (60269727)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | ダイズ / 亀裂施肥 / 接触混植 / 亀裂処理 / 湿害緩和 / 超微細気泡 / イネ / 根粒着生制御 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化の進行により、水田転換畑の一時的な土壌湛水や干ばつが常態化することが予見できる。イネとダイズの根系を密に絡み合わせる接触混植では、イネが根圏に放出する酸素がダイズに供給され、湿害ストレスを緩和される。ダイズが放出する水はイネに受け渡され乾燥ストレスが緩和されることが期待できる。いっぽうダイズの中耕時に心土破砕を実施し、亀裂に沿って根系の一部を切断すると、開花期前後には旺盛な発根が促され、水ストレスが緩和される。超微細気泡を混和した農業用水は、種々の環境ストレス緩和効果を発揮するという仮説を設定した。本研究では、以上の萌芽技術を複合し、転換畑ダイズの環境ストレス耐性を強化することを目指す。
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研究実績の概要 |
温暖化の進行により、水田転換畑の一時的な湛水が常態化することが予見できる。本研究では、イネ/ダイズ接触混植群落に亀裂処理を施すことにより、ダイズの一時的な湛水ストレスを緩和しうる新規な栽培技術を提案することを目指す。加えて、超微細気泡水の灌漑がダイズの湛水ストレスを緩和しうるかについても検討する。ダイズは、普通ダイズに加えて付加価値の高い極大粒黒ダイズを研究対象とする。イネは、陸稲と水稲を対象とする。イネは、① 転換畑に設置済みの農業用水を利用し、節水栽培による子実生産を目指すか、② 中耕時~出穂期に薬剤・機械除草する。直播による接触混植と、混植苗の移植とを比較し、混植における機械化も検討する。圃場試験として、近畿大学、神戸大学付属農場、龍谷大学、滋賀県立大学、兵庫県立農林水産技術総合センター(以下、兵庫農技)の、近畿地方の3県、5地点において異なる圃場試験を実施する。近畿大では小規模コンクリート製のモデル水田において、接触混植したイネを手刈りすることによりダイズが受ける競合作用を低減することができるかどうかを検討する。神戸大では、亀裂処理用深耕アタッチメントを試作するとともに、イネとダイズの直播、中耕時亀裂処理-培土、収穫のための機械化などを検討する。龍谷大ではエダマメを用いた亀裂処理試験を実施するとともに、ダイズの生理機能を評価する。滋賀県大では、湛水処理区と対照区を設けて、亀裂処理と接触混植による湛水ストレス緩和試験を実施するとともに超微細気泡水の投与試験を実施する。超微細気泡水の諸効果を検証するため、水田での灌漑試験も実施する。兵庫農技ではLiCとLの土性の異なる圃場で亀裂処理と接触混植実験をそれぞれ実施し、湛水処理区も設ける。さらに播種時期や機械化の検討も行う。以上から、気候変動に伴う水環境の著しい変動に対処しうるダイズとイネ栽培を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
滋賀県大では、湛水処理区と対照区を設けて、亀裂処理と接触混植による湛水ストレス緩和試験を実施した。対照区では、単植と混植ともに亀裂処理により主茎長と収量の増加傾向を示した。LER(土地等価比率)を見ると全処理区とも1.27~1.56の範囲内にあり、イネとダイズの混植が成立することを示した。湿害環境ではイネの成長が促進されたため、LERが高くなった。いっぽう亀裂区ではイネの根を切断することによりLERが低下する傾向を認めた。超微細気泡水のフィールド土壌や作物に与える影響を検討するため、露地条件で実験水田に超微細気泡水を灌漑した。兵庫農試ではLiCとLの土性の異なる圃場で実験を行った。亀裂処理試験と接触混植試験を別々に実施した。亀裂処理試験では、処理により土壌の通気性が増した。このことにより、開花期では、湛水区における主茎節数が亀裂区で有意に増加した。根粒数は湛水処理間および亀裂処理間で有意な差は見られなかったが、亀裂処理により増加する傾向が見られた。蔓化傾向となった対照区よりも、生育抑制された湛水区ではむしろ収量が増加した。接触混植区の子実重は、強亀裂処理区と比べ有意に増加した。龍谷大では露地栽培したエダマメを用いて亀裂処理試験だけを実施した。エダマメでは亀裂処理から収穫までの日数が1か月程度と短かったため、亀裂処理はむしろマイナスの影響を与えた。品質の指標となる、⼀莢内粒数の割合にも差を認めなかった。グロースポ―チを用いて根系発達を検討した結果、断根した部位からの発根がみられることを確認した。プラントボックス栽培では、サイトカイニン処理によりエダマメの莢数が増加した。近畿大では小規模コンクリート製のモデル水田において、接触混植したイネを手刈りしたところ、地上部乾物重は増加傾向を認めたが、収量には顕著な影響を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
全体会議を実施し、各試験地における初年度の結果を議論した。その結果、次年度には以下の研究方針で検討を進めることとした。神戸大農場では畑地において、播種機を用い直播による接触混植を実施し、亀裂処理も複合した試験を実施する。同時に、機械化について兵庫農技と連携しながら検討を進める。龍谷大ではハウスでのエダマメ栽培における亀裂処理実験を実施する。ダイズの生理機能についても引き続き検討を進める。兵庫農技ではLiCでのみ亀裂試験と接触混植試験を実施する。蔓化軽減のため播種期を遅らせる。神戸大と連携し、培土作業と亀裂処理が同時に実施可能な試作機を作成する予定である。滋賀県大では、初年度と同様に接触混植と亀裂処理の融合試験を、湿害区を設けて継続実施する。次年度はセルトレイで接触混植苗を作成し、畑地圃場へ移植し亀裂処理を実施する。さらに、露地の実験水田への超微細気泡水灌漑試験を継続実施し、土壌物理性への影響に関する成果を取りまとめる。ダイズへの超微細気泡水の潅水処理を開始し、接触混植と亀裂処理への超微細気泡水の適用の影響を考察する。近畿大では超細気泡水の適切な灌漑時期を検討するためのポット試験も実施する。小規模コンクリート製圃場では出穂期イネを刈り取ることにより接触混植したダイズへの競合作用の低減効果を検討する。全体会議で今後の研究方向を議論しながら研究を遂行する。
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