研究課題/領域番号 |
23K26910
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補助金の研究課題番号 |
23H02217 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田中 茂幸 摂南大学, 農学部, 准教授 (30785481)
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研究分担者 |
竹下 典男 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20745038)
芳本 玲 摂南大学, 農学部, 講師 (70595652)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 細胞外小胞 / エクソソーム / 超解像顕微鏡 / 植物病原菌 / lincRNA / トウモロコシ黒穂病菌 / 長鎖ノンコーディングRNA |
研究開始時の研究の概要 |
植物病原糸状菌は分泌タンパク質などを用いて植物への感染を確立するが、高分子であるタンパク質が植物細胞膜をどのように通過するかはよくわかっていない。本研究では、トウモロコシ黒穂病菌を材料に、菌が分泌する細胞外小胞を介してタンパク質などの物質輸送が行われるという仮説の検証を試みている。特に、細胞外小胞膜上のタンパク質と相互作用する植物分子を同定することで、小胞膜と植物細胞膜の融合機構を明らかにしたい。また、タンパク質以外の病原性関連分子の同定や、超解像顕微鏡による小胞の動態観察を行う。
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研究実績の概要 |
植物病害の原因である病原性糸状菌は、感染時にエフェクタータンパク質とよばれる分子を分泌する。これが植物細胞内で機能することで、植物細胞の機能変化を引き起こし、糸状菌の感染を促進する。特に、生きた植物細胞に感染する活物寄生を行う糸状菌は、植物細胞膜を破壊しないため、侵入した菌糸は植物細胞膜に包まれている。これまで、このような関係において、なぜエフェクタータンパク質が植物細胞膜を通過し細胞内へ移行できるかは不明であった。本研究では、トウモロコシに感染する活物寄生性の糸状菌であるトウモロコシ黒穂病菌を実験材料にして、本菌が分泌する細胞外小胞に着目した研究を行う。 細胞外小胞にはエフェクタータンパク質や機能未知長鎖ノンコーディングRNA(lncRNAs)が含まれ、また植物細胞膜との膜融合を介して内容物を細胞内へ送り込んでいる可能性が示唆されている。さらに、細胞外小胞上のインテグリン様膜タンパク質ILP1が、この膜融合を媒介することが示唆されている。そこで、2023年度では、①このILP1と相互作用する植物タンパク質の同定、②病原性に寄与するlncRNAの同定、③超解像顕微鏡による細胞外小胞の動態観察用の形質転換体構築を試みた。結果として、①については、植物細胞膜上に局在することが期待される植物タンパク質を得ることはできなかった。②については、病原性への関与が期待されるlncRNAを2種同定することに成功した。③については、ILP1-mEosFPを発現するコンストラクトを構築していたが、複数の想定外の問題により年度内には完成できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度では、①ILP1と相互作用する植物タンパク質の同定、②病原性に寄与するlncRNAの同定、③超解像顕微鏡による細胞外小胞の動態観察用の形質転換体構築、を試みた。①については、植物感染葉からILP1の共免疫沈降を行い、免疫沈降物のプロテオーム解析を通じて、相互作用タンパク質の検証を行った。しかし、植物細胞膜上に局在する分子を見つけることはできなかった。原因として、タンパク質が量的に少ない、結合が一過的である可能性などが考えられた。②については、高度に発現するlncRNA8種について、発現している遺伝子間領域の欠損株を作出し、病原性試験を行った。その結果、2種について、病原性の低下が観察されるものを同定することができた。③については、細胞外小胞に含まれるILP1をマーカーとして、超解像顕微鏡観察用の蛍光タンパク質であるmEosFPを融合したタンパク質を発現する菌株を作出することを試みた。しかし、得られた形質転換体でタンパク質の発現が見られなかった。原因追及を行ったところ、構築したプラスミドのプロモーター領域に欠損が存在していたことに起因することがわかった。現在は新規にプラスミドを構築し、形質転換体の作出を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度で行った、①ILP1と相互作用する植物タンパク質の同定、②病原性に寄与するlncRNAの同定、③超解像顕微鏡による細胞外小胞の動態観察用の形質転換体構築、については、今後以下のように進める。 ①:ILP1を一過的にベンサミアーナタバコで大量発現させ、これと相互作用する分子を同定する方法を試みる。また、TuboIDを用いた近接標識法を利用した相互作用タンパク質の同定を試みる。 ②:lncRNAと結合する分子を同定するため、lncRNA配列を合成し、感染葉ライセートからのプルダウン実験・プロテオーム解析・シーケンス解析を行う。 ③:ILP1-mEosFP発現株の作出を行い、超解像顕微鏡により細胞外小胞の動態観察を行う。
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