研究課題/領域番号 |
23K26923
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補助金の研究課題番号 |
23H02230 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
小区分39070:ランドスケープ科学関連
合同審査対象区分:小区分39060:生物資源保全学関連、小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤井 豊展 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40897485)
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研究分担者 |
池田 実 東北大学, 農学研究科, 教授 (70232204)
西谷 豪 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70450781)
北澤 大輔 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30345128)
鈴木 はるか 東北大学, 農学研究科, 助教 (00870966)
青木 優和 東北大学, 農学研究科, 教授 (70251014)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 生態系予測モデル / 植物プランクトン / 藻場・アマモ場 / 栄養塩 / 環境DNA / 沿岸環境モニタリング / 社会・生態システム / 地球温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、海と社会との関りが深い三陸沿岸の「社会・生態システム」において、海洋食物網の基盤となる一次生産者(植物プランクトン、大型藻類、アマモ類等)と、その生産力を支配する栄養物質(硝酸塩、リン酸塩、珪酸塩など)を中心とした環境モニタリングを実施し、沿岸生態系の変動メカニズムを理解することによって、今後の気候変動や社会活動の変化に対し、漁場環境がどのように応答するのかを高精度予測できる社会・生態モデルの構築を試みる。また地先の海を利用するステークホルダーとの協働を介し、現代の沿岸環境が直面する様々な問題点の解決策や最適な漁場管理手法の同定を試み、豊かで持続可能な沿岸共生社会の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
三陸沿岸は、植物プランクトンを中心とする天然餌料(一次生産)に依存したホタテガイ、マガキ、マボヤなどの養殖が盛んな海域である。また、岩礁域の藻場ではウニ、アワビ、ワカメ、根魚などの磯根資源を対象とした漁業も広く行われており、その合間に点在する砂泥域には多様な魚種の生育場として重要なアマモ場も分布している。しかし、この自然の恵み豊かな三陸沿岸においても、近年の地球温暖化に代表されるような人間活動由来の環境負荷による影響が深刻となり、一次生産や水産資源量の低下、生物分布域のシフト、磯焼けによる沿岸環境の劣化、養殖生物の斃死、貧栄養化など、水産資源の持続可能性に関わる様々な問題が持ち上がっている。 このような状況下、R5年度に始まった本研究では、三陸沿岸の女川湾において食物網の基盤をなす植物プランクトンや大型藻類・アマモ類(生物データ)と共に、水温、塩分、栄養塩等(物理データ)の観測を中心とする体系立てた環境モニタリングを開始した。また、2011年の震災後から継続的に取得してきた女川湾生態系調査データと、その他のより長期的な環境データ(女川原発温排水データ・気象・衛星画像・水産統計・土地利用データ等)を組み合わせたビッグデータを使用し、過去から現在に至る女川湾生態系の変動過程を把握するための統合解析も並行して行った。 本研究課題ではこれらのアプローチに基づき、将来の地球温暖化や社会活動の変化が、三陸沿岸生態系の一次生産量や漁場環境に与える影響を明らかにするための高精度な社会・生態システム変動予測モデルを構築することを目指す。R5年度は、得られた成果を地方自治体や漁業者等のステークホルダーと共有し、年々深刻化する漁業生産の低迷や磯焼け等の諸問題に対する科学的な解決方法の確立に取り組んでゆくための基盤を形成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【環境モニタリング調査】女川湾に設置された観測点(St. 1, 4, 8)において、2023年10月から調査船による物理・生物モニタリング調査を開始した。各観測点において、表層から底層までの複数の水深層(0, 10, 20, 30 mと海底上2 m)にて毎月以下の項目を鉛直観測した:(a)CTD観測(水温・塩分・溶存酸素・クロロフィルaなど);(b)栄養物質観測(硝酸塩・リン酸塩・珪酸塩・鉄分など);(c)環境DNA観測(環境メタゲノムデータによる藻類群集種組成);(d)多波長励起蛍光光度計観測(植物プランクトン群集組成と現存量)。また、2023年7月に潜水・水中カメラによる藻場・アマモ場調査を実施し、大型海藻・海草類の種組成・分布域の調査を行った。 【アーカイブデータの統合的解析】過去から蓄積されたアーカイブデータを利用し、主に以下の3つの環境変動プロセスを切り口に、女川湾の物理・生物・栄養物質・社会・水産資源量の相互作用と動態メカニズムの解明に取り組んだ:(i)CTDデータの解析により、外洋環境と生物・物理・水産データとの関係を調べた;(ii)北上川の流水量や周辺の気象データを解析し、北上川の流水と女川湾の物理環境・基礎生産量との関係を調べた;(iii)女川町人口動態、土地利用変化、養殖漁業活動の変化などを定量化し、人間活動の沿岸環境への影響を調べた。 【生物資源動向の未来予測と漁場管理への応用】R5年度は上記のアーカイブデータのみを使用し、気候変動や社会経済活動の影響に対して、植物プランクトンの一次生産量や養殖漁業の生産がどのように変動するのかを示すシンプルな統計モデルおよび物質循環シミュレーションモデルを構築した。得られた知見は学会等で発表し、また、地先の海を利用するステークホルダーと研修会等を通して共有し、水産資源の保全に関する様々な問題点の同定や協議を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策: 【女川湾生態系の環境モニタリング調査】女川湾に設置された観測点(St. 1, 4, 8)において、引き続き調査船による物理・生物モニタリング調査を継続して実施する。各観測点の複数水深層(0, 10, 20, 30 mと海底上2 m)においては、毎月以下の項目を鉛直観測してゆく:(a)CTD観測;(b)栄養物質観測;(c)環境DNA観測;(d)多波長励起蛍光光度計観測。また、春季に潜水・水中カメラによる藻場・アマモ場調査を実施し、大型海藻・海草類の種組成・分布域の調査を行う。 【女川湾アーカイブデータの統合的解析】過去から蓄積されたアーカイブデータを利用し、以下の4つの環境変動プロセスを切り口に、女川湾の物理・生物・栄養物質・社会・水産資源量の相互作用と動態メカニズムの解明に取り組む:(i)CTDデータの解析により外洋環境と生物・物理・水産データとの関係を定量化する;(ii)北上川の流水量や周辺の気象データを解析し、北上川の流水と女川湾の物理環境・基礎生産量との関係を明らかにする;(iii)女川湾沿岸域での社会経済指標を継続的に定量化・更新し、人間活動の沿岸環境への影響を算出する;(iv)栄養物質の供給量経時変化と供給経路の特定を行う。 【生物資源動向の未来予測と漁場管理への応用】上記①と②の結果を比較・統合することにより、未来の気候変動や社会経済活動の影響に対して、養殖漁業や沿岸漁業の生産がどのように変動するのかを高精度に明示できる社会・生態システム変動予測モデルの構築を目指す。また、得られた情報は、地先の海を利用するステークホルダーと共有し、地域参加型のアプローチで水産資源の保全に関する様々な問題点の同定や、科学に基づく対処方法の立案を行い、年々深刻化する漁業生産の低迷や磯焼けなどの諸問題の解決に貢献しうる、持続可能な漁場管理手法の確立に取り組む。
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