研究課題/領域番号 |
23K26928
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補助金の研究課題番号 |
23H02235 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
小区分39070:ランドスケープ科学関連
合同審査対象区分:小区分39060:生物資源保全学関連、小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
堀之内 正博 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (30346374)
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研究分担者 |
加納 光樹 茨城大学, 地球・地域環境共創機構, 教授 (00527723)
山口 敦子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (10310658)
今 孝悦 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (40626868)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2026年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ジュゴン / 沿岸浅海域/潮間帯 / 小型水棲動物 / 生物多様性 / タイ / 潮間帯 / ジュゴントレイル / タイドプール / 海草藻場 / 砂泥地 / 魚類・大型無脊椎動物 / 沿岸浅海域・潮間帯 / 魚類 / 無脊椎動物 |
研究開始時の研究の概要 |
ジュゴンは海草藻場内で移動しながら海草を底質ごと掘り起こして摂餌するため、海草藻場内には食痕すなわちジュゴントレイルと呼ばれる溝状の裸地が形成される。本研究はタイ南部の潮間帯においてジュゴントレイルを利用する動物群集構造を精査、また、トレイル周囲の海草藻場や砂泥地、エイ類の食痕における群集構造との比較やこれらのハビタットにおける捕食リスクパターンを詳しく調べることなどにより、ジュゴンが沿岸域の高い生物多様性や様々な種の資源量維持等にどのように寄与しているのか解明し、さらにその包括的な保全のあり方を探っていく。
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研究実績の概要 |
絶滅危惧種ジュゴンは潮間帯を含む沿岸域の海草藻場において海草を掘り起こして摂餌するため、摂餌場所にはジュゴントレイルと呼ばれる溝状の食痕が形成される。本研究期間はまず、タイ南部沿岸域の潮間帯において干潮時にジュゴントレイル、タイドプール(エイ類の食痕など深く窪んだ形状のもの)、Halophila ovalis海草藻場および砂泥地にどのような魚介類が出現するのかを調べた。研究期間を通じ、ジュゴントレイルとタイドプールではそれぞれ少なくとも魚類が15種および18種、エビ・カニ類が6種および7種記録された。出現したのはすべて体の小さな各種の仔稚あるいは小型種の個体であった。また、それらの中にはキス科やフエダイ科、フエフキダイ科などに属する地域漁業の重要な対象種の稚魚が含まれていた。一方、干潮時に海草藻場および砂泥地の地上部で確認されたのは数種のエビ・カニ類と巣穴に共生するハゼ類のみであった。これらの結果はジュゴントレイルやタイドプール(エイ類の食痕など)が沿岸生態系の高い種多様性の維持や地域漁業の持続性に貢献している可能性を示唆するものである。また、各種の仔稚がジュゴントレイルやタイドプールを利用する理由を明らかにするため、各マイクロハビタットの捕食リスクパターンについての予備調査を開始したほか、市場で購入した魚類の耳石を調べ、輪紋の形成時期に季節的な周期性がみられるかなどの検討を行った。 また、サブテーマとして日本国内すなわち多摩川河口域の潮間帯に存在する様々なマイクロハビタットにおけるマイクロプラスチック汚染の実態調査や、石垣島沿岸域の潮間帯においてマイクロハビタットを魚介類の仔稚がどのように利用しているのか調査を行った。 これらの調査で得られた成果の一部は研究集会における口頭発表などの形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイ南部の調査地はHad Chao Mai国立公園の保護区域内に位置する。本課題では、ジュゴントレイルなどの機能を解明するために人工ジュゴントレイル造成実験や糸つなぎ実験などを行う予定であり、タイ役所の要求に従い、それらの野外実験や採集を行うために必要な、実験動物のwelfareに関するライセンスを前もって取得しておいた。ところが最近、異常気象のため調査地周囲の環境が急速に悪化し、潮間帯海草藻場の大規模な衰退などが起こってしまったため、国立公園を管轄するタイ国のDNPから、環境に負荷を与えるため本課題の野外実験や動物の採集を禁止する旨通達があった。そのため現場で標本を採集することや、来年度行う予定であった野外実験を前倒して実施することが現時点では不可能になってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり、タイ国政府から野外における野外実験や採集が禁止されてしまった。 しかし、各マイクロハビタットにおける魚類・大型無脊椎動物群集構造の解明については、標本採集に頼らずとも、目視観察によって十分実行可能である(実際、今年度の群集構造調査は目視観察で行ったが、十分に精度の高いデータがとれることが分かった)。人工ジュゴントレイル造成実験等については、日本国内におけるサブテーマの実施により補助的なデータの収集に努める予定である。糸つなぎ実験によって調べる予定であった捕食リスクパターンについては、固定式動画撮影装置あるいはドローンなどを利用した捕食者出現パターンを調べることなどによって解明していくことにする。禁止が解除されるまでは上記のような非侵襲的な方法で研究を進めていく。
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