研究課題/領域番号 |
23K26929
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補助金の研究課題番号 |
23H02236 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
小区分39070:ランドスケープ科学関連
合同審査対象区分:小区分39060:生物資源保全学関連、小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
広渡 俊哉 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (20208896)
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研究分担者 |
小川 浩太 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (40733960)
屋宜 禎央 九州大学, 農学研究院, 助教 (50878080)
田代 幸寛 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90448481)
外村 俊輔 徳島県立博物館, その他部局等, 学芸員 (90980277)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 鱗翅目 / 系統分類 / 腐食性 / 適応放散 / 腸内フローラ |
研究開始時の研究の概要 |
鱗翅目昆虫(チョウやガの仲間)の一部のグループでは、幼虫が枯葉や朽ち木、キノコ類、動物遺体などを食べる腐食性を獲得している。これらの腐食性鱗翅類は、採集や同定が困難であることから分類学的研究は遅れているものの、多様なニッチに適応しており非常に高い種多様性をもつと考えられる。本研究では、まず、日本列島における腐食性鱗翅類の多様性および本グループの適応放散の実態を明らかにする。さらに、幼虫の腸内フローラを分類群ごとに網羅的に調査することで、多様な腐食性の獲得を可能にした消化メカニズムについて明らかにするとともに、難分解性物質の分解などに応用可能な有用微生物群の発見に努める。
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研究実績の概要 |
本年度は日本各地で腐食性鱗翅類のサンプリングを行い、一部の種は飼育を試みた。 まず、ヒロズコガ上科(Dryadaula属、Erechthias属)、マルハキバガ科、ヒゲナガガ科などに関しては分類学的研究を行い、日本新記録種や未記載種が確認されたため、一部について成果を国内の学会大会において発表するとともに論文を作成し投稿した。ヒロズコガ科シロナガヒロズコガ亜科のイッテンシロナガヒロズコガ Micrerethista denticulataについては亜科レベルで幼生期の生態が不明だったが、和歌山県橋本市でナラ枯れによって伐採されたコナラから幼虫を確認し、世界で初めて幼虫が木材に穿孔することを明らかにして、幼虫と蛹の形態を記載した。また、中国のみから知られていたハイマダラヒロズコガ(新称)Crypsithyris efflexa (Yang & Li, 2006)を日本(北海道,本州,四国)から確認し記録した。ヒゲナガガ科については、未記載種を韓国南部で発見し新種として発表した。さらに、東京都高尾山麓でヒゲナガガ科の未記載種を確認していたが、新種として記載した論文を投稿し受理された。 次に、生態的情報の蓄積と腸内フローラを解明するために、屋外で多くの個体数が得られた種について累代飼育を試みた。現在、一部の種は半年以上維持できており、飼育を継続している。また、食性、サンプリングや飼育の容易さなどをもとに、菌叢解析に用いる種の選定を行った。さらに、小蛾類を対象としたDNA抽出・解析方法を模索するために、ヒロズコガ上科、キバガ上科を用いて試験的に16Sアンプリコン解析を行った。その結果、サンプルごとに大きく異なる菌叢が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はサンプリング、分類学的研究、予備的な系統解析、飼育、予備的な菌叢解析を行った。それぞれ進捗状況に違いはあるが、おおむね順調に進展している。まずは、採集した腐食性鱗翅類を用いて、分類学的研究ならびに生態学的情報の収集を行った結果、ヒロズコガ科やヒゲナガガ科などで未記載種や幼生期の生態に関する新知見が得られ、その一部は学会発表とともに論文を作成し公表することができた。 また、クロスジツマオレガやマダラマルハヒロズコガ(ヒロズコガ科)など多数の個体を採集できた種については、累代飼育を試みて現在も飼育を継続している。菌叢解析については、累代飼育を試みている種を含め、次年度以降に解析に用いるサンプルの蓄積を行った。また、その中でも十分なサンプルがある個体について、中腸を取り出して、DNA抽出と予備的な菌叢解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年同様、南西諸島を含む日本各地で調査を行う。その際、採集の効率化を目指すために、成虫の採集が難しいヒロズコガ科の種などを対象として新規のトラップを設計し設置する。 得られたサンプルのうち、分類学的な新知見があれば随時論文化を進める。また、腐食性鱗翅類には系統関係が明らかとなっていない種が多いので、十分なサンプルが収集できたグループについてはDNA解析を行い、得られた配列をもとに系統解析を行いそれらの系統位置を明らかにする。 飼育がうまくいかなかった種、飼育できなかった種(キバガ上科など)に関しては累代飼育を試みる。昨年度は十分なサンプルが集められなかったケラチン食性などの鱗翅類についても採集と飼育を行う。 今後は本格的に細菌叢解析を進める予定であるが、細菌以外の微生物が幼虫の食餌物の分解に寄与している可能性も考慮して、補助的に真菌叢解析を行う。
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