研究課題/領域番号 |
23K26931
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補助金の研究課題番号 |
23H02238 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
小区分39070:ランドスケープ科学関連
合同審査対象区分:小区分39060:生物資源保全学関連、小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
平井 規央 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (70305655)
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研究分担者 |
上田 昇平 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (30553028)
矢後 勝也 東京大学, 総合研究博物館, 講師 (70571230)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 外来植物 / 絶滅危惧種 / チョウ類 / 生物多様性 / 寄主植物 / 食草 |
研究開始時の研究の概要 |
絶滅危惧種のチョウ、クロツバメシジミでは、幼虫が主に在来植物のツメレンゲを利用するが、近年は外来種のメキシコマンネングサなどにも進出している。申請者らの研究によって、このチョウは幼虫期に食べた植物種によって成虫の翅色が変化することが明らかになった。本研究では、外来植物を利用することによる生活史や形態などの変化が繁殖や遺伝的多様性に与える影響を検証するために、各地個体群の外来食草の利用状況、食草別の翅色、サイズ、発育期間、隣接する在来と外来植物食個体群の集団遺伝構造などの項目について、野外調査と室内実験を行い、結果を照合して絶滅危惧チョウ類の繁殖への影響について解明する。
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研究実績の概要 |
2023年に長野県北部のツメレンゲ群落で採集した雌成虫から採卵し、得られた幼虫にツメレンゲまたはツルマンネングサいずれか一方を与え、25℃16L-8Dの条件下で飼育した個体を用いた。羽化した成虫の左後翅裏面中央の黒斑に囲まれた部分が、厚紙に空けた一辺5 mmの正方形の穴の中央になるように設置してクリップで固定し、分光光度計(島津製作所UV-2600i)に設置した。波長250~800 nmの分光光度を1 nmごとに測定し、寄主植物間で反射スペクトルを比較した。その結果、紫外域を含む300~420 nmでツメレンゲ個体がツルマンネングサ個体より吸収が大きかったため、その中心付近の360 nmの反射率を比較したところ、ツメレンゲ個体はツルマンネングサ個体よりも有意に反射率が小さかった。また、寄主植物間で顕著な違いが見られた420 nm付近での傾きを比較するために、分光光度計で測定した全個体の波長スペクトルに一次微分を行い、ピーク時の波長と反射率を算出したところ、ピーク値はツメレンゲ個体の方が大きかったが、ピーク時の波長はツルマンネングサ個体の方が長かった。紫外域の違いを視覚的に確認するために、紫外線写真を用いて翅の反射光を調べた。一眼レフカメラに50 mmのマクロレンズと紫外域を透過するフィルターを装着し、暗黒下でブラックライトを約30 cmの距離から照射し、翅の裏面を撮影した。その結果、ツメレンゲ個体はツルマンネングサ個体と比較して紫外域を強く吸収して翅の地色が濃く写り、分光光度計の測定結果の傾向と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロツバメシジミの生息調査を行い、在来と外来の食草を用いた産卵選好性の実験を行った。卵は継続して飼育し、それぞれの食草での発育日数、蛹体重を記録した。羽化した成虫については、ケージに入れて、食草による組み合わせを変えた配偶行動の実験を行った。羽化した成虫の斑紋や色彩を詳細に観察し、変異の有無を記録する。分光光度計を用いて波長スペクトルを解析し、食草ごとに比較した。また、同じ条件下で撮影し、画像解析ソフトで色相を比較した。このように、1年目に予定していた調査研究はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、クロツバメシジミの3亜種を中心に絶滅危惧チョウ類の生息調査を中部地方、近畿地方、九州地方などで行う。すべて多化性で年に3~4回発生するため、各地で個体数が増加する春から秋季にかけて年1~2回ずつ成虫の密度調査を行う。調査は食草群落とその周辺で見られた成虫の個体数を記録する。現地の個体数に影響を与えないように、発見した個体は一旦昆虫網で捕獲し、斑紋等を撮影してDNA解析用に鱗粉等を採取した後、速やかにその場で放す。また、食草上の卵、幼虫、蛹の密度調査も同時に行う。野外から持ち帰った雌成虫を用いて、在来と外来の食草を用いた産卵選好性の実験を行う。卵は継続して飼育し、それぞれの食草での発育日数、蛹体重を記録する。飼育条件は、休眠性の確認を合わせて行うことを想定し、温度・日長の異なる6条件とする。羽化した成虫については、室内のケージに入れて、食草による組み合わせを変えた配偶行動の実験を行う。羽化した成虫の斑紋や色彩を詳細に観察し、変異の有無を記録する。分光光度計を用いて波長スペクトルを解析し、食草ごとに比較する。また、同じ条件下で撮影し、画像解析ソフトで色相を比較する。 採集した個体について、マイクロサテライトマーカーを用いた解析によって遺伝的多様性を調査し、サンプリングの近隣にあった食草ごとに比較する。また、必要に応じてMIG-seq法を併用する。遺伝子解析については、次世代シークエンサーを使用してマーカーを開発し、個体ごとの解析を行う。Wolbachia 感染については、既存のマーカーを用いて同じサンプルでPCRを行うことにより、検証する
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