| 研究課題/領域番号 |
23K26938
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| 補助金の研究課題番号 |
23H02245 (2023)
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
小区分39060:生物資源保全学関連
合同審査対象区分:小区分39060:生物資源保全学関連、小区分39070:ランドスケープ科学関連
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| 研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
井田 秀行 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (70324217)
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| 研究分担者 |
土本 俊和 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (60247327)
廣田 充 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90391151)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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| キーワード | 茅場再生 / 茅葺き文化 / 地域資源循環 / 植生管理 / 植物多様性 / 文化的景観保全 / 絶滅危惧種保全 / バイオ炭 / 茅場 / 里山資源利用 / 伝統文化 / 半自然草地 / 炭素循環 / 里山景観 / 茅葺き / 伝統的生態学的知識 / 地域文化 |
| 研究開始時の研究の概要 |
茅資源の伝統的な循環利用(茅場から屋根の役目を経て土壌に還る茅資源のライフサイクル)の観点から、茅場がもたらす生態学的・社会的価値を再評価し、茅場の維持・再生の円滑化を図る。具体的には、茅場の存続意義と茅資源の持続可能性を改めて見直すため、以下の3つの機能に着目し、それぞれの生態学的・社会的な価値を物的・人的資源の視点も交えて評価する。そして、実効性の高い茅資源の循環利用の在り方を提案する。 ①茅場の生物多様性と炭素貯留機能(生息・生育地や温室効果ガス削減に関わる機能) ②茅場の管理が茅の品質および生産量に及ぼす機能 ③古茅の再資源化に資する炭素循環・貯留機能(屋根の役目を終えた茅の機能)
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| 研究実績の概要 |
本研究は、茅葺き文化を支える茅場の生態的・文化的価値を明らかにし、持続可能な管理の方策を多地域比較によって検討することを目的としている。令和6年度は、長野県飯山市・小谷村、富山県南砺市五箇山、広島県北広島町芸北地域、茨城県つくば市などを主なフィールドとし、調査と分析を実施した。 飯山市では、旧スキー場跡地を茅場として再生し、茅の販売収益を保全活動に循環させる仕組みが構築されており、その管理効果と課題を評価した。継続管理地ではクララの優占が確認され、絶滅危惧種オオルリシジミの生息環境としての有効性が示唆された。一方、管理放棄地では樹木の侵入が進み、草原の遷移とともに多様性が低下していた。 五箇山では、カリヤスを屋根材とする茅場と合掌造り家屋との関係を現地調査と聞き取りにより明らかにした。現在のカリヤス供給量では集落内すべての茅葺き維持は困難であること、住民との関係性の希薄化が課題であることが確認された。 芸北地域では、地域通貨など新たな仕組みにより茅場の社会的価値が再評価され、若年層の関与も見られるなど、持続的利用の可能性が示された。 小谷村と五箇山の茅場を対象に、火入れと手刈りという異なる管理手法による植生への影響を比較した結果、火入れでは地表や地下に芽をもつ多年草が優占し、比較的均質な植生が形成されていたのに対し、手刈りでは小低木や矮性草本を含む多様な生活形が維持されていた。 つくば市の造成茅場では、ススキ個体の茎に見られた穿孔性鱗翅目の幼虫がテンオビヨトウであることを同定し、農業害虫としては既知ながら、ススキでは初の幼生期記録となる新知見を得た。さらに、古茅を用いたバイオ炭の施用試験では、葉面積の増加や土壌水分保持の向上など、農地への応用可能性が示された。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、伝統的茅葺き文化を支える茅場の保全と持続可能な管理のあり方を多地域比較により検討するものであり、令和6年度は飯山市、五箇山、芸北地域を中心に調査を進めた。各地での聞き取り調査や植生調査を通じて、茅場管理の実態とその生態学的・文化的意義を明らかにしつつある。また、小谷と五箇山の茅場における火入れと手刈りの管理手法の違いによる植生構造の比較も実施し、管理目的に応じた手法の選択が重要であることが示唆された。加えて、つくば市の造成茅場でススキを穿孔するテンオビヨトウの幼生期を初めて記録し、農業害虫研究にも貢献し得る成果を得た。バイオ炭活用や建築材との関連も含め、計画通り概ね順調に進行している。
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| 今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、茅場の生態学的価値と文化的意義を総合的に捉えることを目的とし、これまで全国各地において、植生調査、管理手法の比較、伝統建築との関係性の分析を進めてきた。今後は、既存の調査地での分析を深めつつ、茅場の多様な保全・活用の実践を通じて、持続可能な草原管理モデルの構築を目指す。 具体的には、広島県北広島町(旧芸北町)で展開されている茅場再生プロジェクトを対象に、地域住民による管理の実態とその生態学的成果、ならびに茅葺き民家の保存・活用の実態を調査し、地域資源の循環利用の観点から茅場の位置づけを評価する。また、長野市鬼無里では再生から約10年を経た茅場の現況を調査し、管理方法や頻度が植生や茅の品質に与える影響を明らかにする。さらに、計画にはなかった新たな展開として、富山県五箇山で進行中の新規茅場造成プロジェクトに研究者として関与し、造成初期の生態的推移や地域との連携プロセスを記録・評価する。 これらの活動を通じて得られる多地域比較の知見は、伝統的土地利用の継承と生物多様性保全の両立に資するものであり、今後の研究の展開に不可欠である。国内外の関連学会での発表や論文投稿を積極的に進めるとともに、研究成果の整理と理論的枠組みの構築を図り、最終年度を待たずに次期科研費申請に向けた準備を進める。 特に、文化と生態系管理を統合的に扱う応用研究としての展開を意識し、実践現場との協働体制の強化に取り組むとともに、学際的な展開を模索していく。
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