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Ash diebackの病原菌に対する葉圏菌類の拮抗作用メカニズムおよび生態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K26940
補助金の研究課題番号 23H02247 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分40010:森林科学関連
研究機関筑波大学

研究代表者

山岡 裕一  筑波大学, 生命環境系, 研究員 (00220236)

研究分担者 玉井 裕  北海道大学, 農学研究院, 教授 (50281796)
岡根 泉  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60260171)
石賀 康博  筑波大学, 生命環境系, 助教 (50730256)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
キーワード植物病理学 / 樹病学 / 葉圏菌類 / 拮抗微生物 / 植物寄生菌 / 内生菌
研究開始時の研究の概要

北海道では、Ash diebackの病原菌Hymenoscyphus fraxineusが広く分布し、大量の感染源が存在する環境でありながら、本来本菌に感受性であるはずのセイヨウトネリコの植栽木が複数本生存している。その原因として、無発病のセイヨウトネリコに生息する葉圏菌類の拮抗作用が本菌の生長を抑制していると考えられた。そこで本研究では、拮抗性葉圏菌類をAsh diebackの防除や被害拡大の抑制に活用するための基盤研究として、拮抗性葉圏菌類の拮抗作用メカニズムおよび拮抗性葉圏菌類の生態の解明、ならびに拮抗性葉圏菌類のトネリコ類や他の植物に対する影響を評価することを目的とした。

研究実績の概要

1.拮抗性葉圏菌類の拮抗作用メカニズムの解明:Hymenoschyphus fraxineus子嚢胞子の発芽抑制効果がin vitroで確認されているAureobasidium pullulans(菌株No. 5029)については、生葉上でも本菌の子嚢胞子の発芽を抑制すること、細胞懸濁液接種から4週後でも生葉表面に生存することが確認できた。しかし、本年度実施した接種試験ではH. fraxineus子嚢胞子の接種による病徴の再現ができなかった。原因を調べた結果、本菌の宿主への侵入や菌糸伸長は、黄化が始まった古い葉では起こるが、緑色の若い葉では殆ど起こらないことが分かった。また、セイヨウトネリコの若い葉のメタノール抽出物には、H. fraxineus子嚢胞子の発芽を抑制する成分が含まれることが示唆された。
2.拮抗性葉圏菌類の生態の解明:北海道で無発病のセイヨウトネリコ実生の根系から次世代シーケンサーを用いて網羅的な菌類の検出を試みた。rDNAのITS1領域を用いて解析した結果、これまでにH. fraxineusに対する拮抗性が確認されている葉圏菌類は検出されなかったが、拮抗性を有する可能性がある菌類が新たに検出された。
H. fraxineusの子実体形成時期以前に本菌のDNAがヤチダモの枝や冬芽から検出され、本菌が枝茎内で無病徴で生存できることが分かった。このことから、枝茎内での拮抗性微生物の調査の必要性が出てきた。
3.拮抗性葉圏菌類のトネリコ類やその他の植物に対する影響評価:A. pullulansの細胞懸濁液、またはColletotrichum fioriniae(菌株No. 7148)およびTalaromyces marneffei(菌株No. 8193)の分生子懸濁液をセイヨウトネリコ若木に接種したが、これまでのところ顕著な病徴は見られていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概ね良好と考えている。「拮抗性葉圏菌類の拮抗作用メカニズムの解明」の接種試験で、H. fraxineus子嚢胞子のみを接種した区で病徴が再現できなかったという問題が発生したが、その原因を調べる中で、子嚢胞子が感染可能な条件が限定的であることや、葉に含まれる何らかの物質がH. fraxineus子嚢胞子の感染に大きく影響している可能性があることなど、新たな知見が得られた。
Aureobasidium pullulansが、セイヨウトネリコ生葉上でもH. fraxineus子嚢胞子の発芽抑制効果を発揮することが確認でき、そのメカニズムの解明や特性調査を進める上での基礎となるデータが得られたと考える。
「拮抗性葉圏菌類の生態の解明」については、調査対象とする部位が葉のみでなく、冬芽や枝茎も対象とする必要性が明らかになり、今後対象とする部位等を絞り込むことができた。
これまでの成果は、5月に開催される日本菌学会大会、ならびに8月にオランダで開催される国際菌学会で発表の予定である。

今後の研究の推進方策

1.拮抗性葉圏菌類の拮抗作用メカニズムの解明:A. pullulansについては、セイヨウトネリコ生葉上での発芽抑制効果の持続性やそのメカニズムの解明をめざす。A. pullulansが生産する抗菌性物質が関与している可能性が高いと思われるが、同時に宿主の抵抗性を誘導していないか調査する。また、Colletotrichum fioriniaeおよびTalaromyces marneffeiについても生葉上での挙動とH. fraxineusに対する抑制効果について調査する。
H. fraxineus子嚢胞子の感染可能な葉の状態がかなり限定的であることが分かったため、人工的に葉を老化させる方法を確立して接種試験を行うか、または秋に集中的に接種試験を行い拮抗性葉圏菌類の効果を評価する予定である。また、現在、トネリコ類の苗をH. fraxineusの子嚢盤が多数形成されたフィールドに設置し、自然感染による発病の確認を行っている。その結果によっては、拮抗性葉圏菌類を接種した苗を野外で自然感染させて効果を評価する。
セイヨウトネリコの葉のメタノール抽出物のH. fraxineus子嚢胞子に対する影響については引き続き調査を進め、H. fraxineusの感染前にセイヨウトネリコに備わる抵抗性要因が存在するかを調査する。
2.拮抗性葉圏菌類の生態の解明:本年度も継続して、北海道で無発病のセイヨウトネリコ個体(実生)を中心に、冬芽、葉、枝茎、根系から次世代シーケンサーを用いて拮抗性葉圏菌類を網羅的に検出する。また、無病徴のセイヨウトネリコの生息地周辺に分布する主要な樹種の葉圏からも、拮抗性葉圏菌類の検出を試みる。
3.拮抗性葉圏菌類のトネリコ類やその他の植物に対する影響評価:拮抗性葉圏菌類のトネリコ類やその他の植物に対する影響評価については、上記の接種試験と並行して評価を行う。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] ヤチダモの枝幹部および冬芽へのHymenoscyphus fraxineusの定着2024

    • 著者名/発表者名
      繁森 有紗・岡根 泉・玉井 裕・山岡 裕一
    • 学会等名
      日本菌学会第68回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Aureobasidium pullulans inhibiting germination of ascospores of Hymenoscyphus fraxineus2024

    • 著者名/発表者名
      Izumi Okane, Yuichi Yamaoka, Rieko Ichimura, Yutaka Tamai
    • 学会等名
      The 12th International Mycological Congress (IMC12)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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