研究課題/領域番号 |
23K26954
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補助金の研究課題番号 |
23H02261 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
末吉 昌宏 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80435586)
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研究分担者 |
中村 祥子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60896546)
北島 博 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353662)
木下 晃彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70533983)
渡辺 恭平 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (70710474)
向井 裕美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70747766)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 特用林産物 / 特用林産 / 天敵 / 食用きのこ / キノコバエ / 害虫 |
研究開始時の研究の概要 |
害虫キノコバエ類の寄生蜂を利用した総合的生物防除技術を以下の方法で開発する。 ①各地の栽培現場とその周辺で害虫キノコバエ類と寄生蜂を採集し、これらのDNA バーコードを蓄積する。これらの成果は、環境DNAによる、栽培現場の害虫および天敵の検出方法の開発に用いられる。 ②栽培現場で見られる寄生蜂が誘引活性を示す化学物質や光波長を抽出する。これらの成果は寄生蜂の捕獲・モニタリング用のトラップの開発に用いられる。 ③栽培現場で得られた害虫キノコバエ類とそれらに寄生した寄生蜂の増殖率、生涯産卵数、発育期間などを求める。これらの成果は栽培現場に寄生蜂で維持させる必要寄生数の判断に用いられる。
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研究実績の概要 |
害虫キノコバエ類の総合的生物防除技術を開発するため、以下の方法で原木・菌床シイタケ害虫キノコバエ類の天敵寄生蜂群集と発生生理およびシイタケの匂い物質を調べた結果、生物防除で利用する寄生蜂類とシイタケ揮発成分の候補が挙げられ、フタマタナガマドキノコバエの発育零点および有効積算温度を解明した。これらは害虫キノコバエ類の増殖モデルの構築につながる。
①北海道から九州までの8道府県17箇所の林内に設置された原木ほだ場から食害を受けたシイタケ子実体を持ち帰り、キノコバエ類および寄生蜂類の成虫を羽化させた。寄生蜂類による寄生率はおおむね1割程度であるが、それが4割を超えるほだ場もあった。シイタケ害虫キノコバエ類およびこれらの寄生蜂類(シリボソクロバチ類、ヒメバチ類)のDNAバーコーディングを11種14個体を登録した。さらに、栽培施設における環境DNAから害虫キノコバエや天敵寄生蜂の存在を検出する技術を開発するため、施設内の水や沈殿汚泥からDNA抽出試験を行い、COI領域のアンプリコンシーケンス解析から、菌床に寄生するキノコバエ類の増幅を確認した。オーストリアとドイツの研究機関に赴き、上記害虫キノコバエ類の天敵ヒメバチ科昆虫のタイプ標本を検鏡し、既存の情報以外の形態的特徴を把握した。 ②シイタケが放出する匂い物質を捕集する作業を行うため、九州支所内に試験地を2箇所設定し、シイタケのホダ木を各30本、20本設置した。各試験地で粘着シートを4枚ずつ、4日間設置し、キノコバエ類および寄生蜂を採取した。同時に生育ステージの異なる6個の子実体(成菌、亜成菌)、および子実体発生のないホダ木部分からSPMEによるマイクロ固相抽出法によって揮発性成分を採集した。 ③フタマタナガマドキノコバエの温度と発育期間との関係を飼育試験で調べ、発育零点および有効積算温度をそれぞれ8.1℃および223.3日度と求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「天敵寄生蜂の行動解析」を担当していた研究分担者が令和5年度末までの育児休暇取得により研究に参画できなくなった。また、研究遂行上、シイタケが発する匂い成分の分析調査が必要となった。そこで、この担当部分の当年度研究計画を8月に追加した研究分担者が担当する「シイタケ匂い成分の採取・分析」により達成した。したがって、研究期間内の 研究計画を進捗し、目的を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題開始時に害虫キノコバエ類の寄生蜂を利用した総合的生物防除技術に繋がる、3つの達成目標を挙げた。これらのうち、寄生蜂を誘引する刺激として光波長を挙げたが、より簡易に色彩波長を利用した誘引を検討する。また、寄生蜂の増殖モデルの確立を挙げたが、次年度はキノコバエ類の増殖モデルの確立を優先する。 ①北海道から沖縄までの栽培現場とその周辺の森林を調査地とし、新たに得られた害虫キノコバエ類とそれらの寄生蜂のDNA バーコードを蓄積する。これらの成果を元に、栽培現場で害虫キノコバエ類とそれらの総合的生物防除に有用な寄生蜂の環境 DNA を採取する手法を確立する。これまでに集積された情報を元に、生物防除に利用できる寄生蜂の候補種を一覧化し、現場で活用できる同定資料を作成する。 ②栽培現場に寄生蜂を誘引・導入し、かつ定着させるため、寄生蜂が誘引活性を示す化学物質や色彩波長を抽出し、それらへの誘引特性を明らかにする。これらで抽出された有用化学物質や色彩波長を利用した、寄生蜂の捕獲・モニタリング用のトラップを試作する。 ③栽培現場に寄生蜂を導入・維持し、定着させる際に寄生蜂の必要寄生数が必要となる。その必要寄生数を求めるため、栽培現場で得られた害虫キノコバエ類の産卵数、孵化率を明らかにし、それらを用いた増殖モデルを構築する。 8月に京都で行われる国際昆虫学会議でこれまでに行ってきた菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエ類の防除についてポスター発表を行う。その他、本課題の成果を日本森林学会、日本生態学会などの年次大会で発表する。
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