研究課題/領域番号 |
23K26955
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補助金の研究課題番号 |
23H02262 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北尾 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353661)
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研究分担者 |
田中 亮一 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20311516)
矢崎 健一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353890)
原山 尚徳 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353819)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 寒風害 / 通水阻害 / 仮道管 / 蒸散 / 光合成 |
研究開始時の研究の概要 |
亜寒帯に属する北海道では土壌凍結に起因する寒風害(=冬季乾燥害)が森林管理上の大きな問題となってきた。冬季乾燥害の感受性に関して,光合成を旺盛に行う陽樹ほど仮道管の直径が大きくなり,冬季の凍結・融解にともなう通水阻害が生じやすくなると考えられる。一方で,耐陰性が高い陰樹では,庇陰下での冬季の休眠状態が不十分なため,光合成にともなう蒸散量が多くなり,乾燥ストレスを受けやすくなる可能性がある。本研究では,耐陰性の異なる北海道の主要針葉樹4種を対象として,これまで測定されることがなかった冬季の光合成反応に焦点を当て,冬季の乾燥害感受性の樹種間差を決定するメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
樹木の葉の形態や生理特性は芽を形成する際の光環境によって影響を受ける。そこで,全天と庇陰(相対照度約10%)の光環境に順化した芽を形成し,翌年春に展開した針葉を測定に供するため,トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツ,カラマツの針葉樹4樹種のポット苗を作成した。トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツの苗木は森林総合研究所北海道支所実験林で採取した種を2017年12月に播種し,苗畑で生育させたものを用いた。苗木は2023年4月のポット(4L)への植替え時には6年生であり,苗高はおよそ20cmであった。カラマツはポットで種から生育させた2年生(苗高約15cm)のものを用いた。 土壌の凍結状態をモニターするためにペンダント型データロガーをポットの約5cmの深さに埋め込み,冬期の土壌温度の変化を10分間隔で記録した。その結果,光環境にかかわらず12月上旬より土壌温度が0℃以下となり,土壌凍結が生じていることが示唆された。一方で,土壌温度が0℃以上となるのは,全天環境のポット苗では3月上旬であるが,庇陰環境では3月下旬であり,全天環境の方が土壌凍結の解除のタイミングが早かった。さらに,シュートの水分状態への土壌凍結の影響を調べるために,9月12日,1月29日‐2月1日(厳寒期),3月30日(融雪期)および4月20日(回復期)に,全天および庇陰下で生育したトドマツ,エゾマツ,アカエゾマツの苗木を対象として,プレッシャーチャンバー法により夜明け前の水ポテンシャルを測定した。その結果,厳寒期の土壌凍結状態では,いずれの樹種・処理においても水ポテンシャルが大きく低下したが,土壌凍結が終了した直後の融雪期には水ポテンシャルの上昇が見られ,回復期では9月のレベルまで回復した。厳寒期において全天個体より庇陰個体で水ポテンシャルが低くなる傾向が見られたが,トドマツは他の2樹種に比べて高い水ポテンシャルを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森林総研北海道支所実験林苗畑で育成した常緑針葉樹3種(トドマツ,エゾマツ,アカエゾマツ)および種子から生育させた落葉針葉樹1種(カラマツ)のポット苗を作成し,全天と庇陰処理(相対照度約10%)の異なる光環境で生育させてそれぞれの光環境に順化した実験材料を作成した。また,土壌温度のモニタリングにより土壌の凍結時期についての情報とそれに対応する水ポテンシャルのデータを得たことから,次年度の水ポテンシャルおよび蒸散測定の時期について綿密な計画を立てることが可能となった。また,予備実験として,水ポテンシャルの低下に対する幹の通水能力の変化(脆弱性)をキャビテーションチャンバー(メイワフォーシス社製)による加圧法で調べて,比較的小さいポット苗を測定する際に必要となる測定条件の検討をおこなった。以上のことから,本課題は次年度の本実験に向けて順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
光合成を含めた生理活動がほぼ停止していると思われる厳寒期において水ポテンシャルの低下が見られたことから,水ポテンシャルの低下が土壌凍結初期の段階で生じたものなのか,それとも土壌凍結解除まで累積して低下していくものかを明らかにする必要がある。そのために,次年度はより多くのタイミングで水ポテンシャルの測定を行う。水ポテンシャルの低下が累積していく場合には,全天区では3月上旬,庇陰区では3月中旬の凍結解除の直前に水分ストレスがもっとも強くかかることになる。さらに,気温上昇による光合成活性の上昇と蒸散速度の上昇が生じているとすれば,その時期が最も冬季の乾燥ストレスを受けやすい時期となると考えられる。そこで,土壌凍結解除の直前(3月)のシュートの水分状態,光合成活性および蒸散速度について重点的に測定をおこなう。また,冬季の水ポテンシャルの低下が通水能力へ与える影響を評価するために,水ポテンシャルの低下に対する幹の通水能力の変化(脆弱性)をキャビテーションチャンバー(メイワフォーシス社製)による加圧法で調べる。
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