研究課題/領域番号 |
23K26970
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補助金の研究課題番号 |
23H02277 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉原 浩 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (30210751)
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研究分担者 |
丸田 誠 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (30416763)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
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キーワード | 破壊力学特性 / クリープ / 疲労 / 木材 / 評価方法 / 繰り返し負荷 / 継続負荷 |
研究開始時の研究の概要 |
木造構造物の大型化や高層化により,大型台風や長周期地震動による構造物の強度低下がきわめて深刻な問題として危惧されている。破壊力学は,本質的にき裂を内在する材料である木材の強度特性の評価に効果的な手法であり,近年その評価方法が進捗かつ洗練されつつある。しかし,き裂を有する材料が地震や台風による繰り返し荷重や疲労負荷およびクリープなどの継続的な負荷を経た状態における強度特性についてはほとんど検討されていない。 本研究では,き裂を有する木材が疲労やクリープ等の継続的な負荷によってどのような影響を受けるかについて破壊力学に基づいて解析し,破壊力学特性の解明と評価方法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではき裂を持つ木材に繰り返し負荷や一定荷重を継続的に与えることでき裂を進展させ,負荷履歴の及ぼす影響について明らかにすることを目的とし,以下の①から③にしたがって強度評価への破壊力学の適用性を検討する。①数種の木材を使用し,き裂を導入した試験体を作成して通常の破壊力学試験を実施し,き裂進展開始時の荷重から破壊力学特性値を求める。②①の段階で得られた荷重および破壊力学特性値を基準とし,疲労試験ではその値よりも小さな一定荷重を多数回繰り返し与えてき裂を進展させ,繰り返し数とき裂進展開始時の荷重の関係を求める。また,クリープ試験でも同様に上述の荷重よりも小さな一定荷重を長期間負荷してき裂を進展させ,負荷時間とき裂進展開始時の荷重の関係を求める。③同一のモードでも,繰り返し荷重や一定荷重を長期負荷した際の破壊力学特性に試験方法が影響することが考えられるため,試験方法の影響について検討する。試験の結果から,継続的な負荷が木材の破壊力学特性の評価に与える影響について検討し,線形破壊力学の応用の可能性および非線形破壊力学の適用性について精査する。 このうち当該年度では①ついて,より安定化したき裂進展条件を実現しながら破壊力学特性が得られる試験方法の可能性について検討した。試験体(ベイツガ)の側面中央に長さ方向に沿った溝を切り,これを偏心3点曲げ試験(3EENF試験)を実施した。その結果,従来より汎用的に実施されている矩形断面試験体の中央集中3点曲げ試験(3ENF試験)よりも十分にき裂進展距離を延伸させることができ,4点曲げ試験(4ENF試験)で懸念されるようなはく離部分における曲げ破壊を避けながらき裂進展抵抗曲線(R曲線)の測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度においては夏に左化膿性手関節炎を発症してしまい,8月15日から9月16日まで入院を余儀なくされた。当初夏休み期間に多くの実験を計画していたが,この入院のために研究計画の遅れが発生した。また,退院後も後遺症で左手が十分に機能せず,その後の実験にも遅れが生じた。幸い左手の機能も十分に回復したため,今年度以後は順調に計画を遂行できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に得られた結果をもとに,疲労試験では一定荷重を多数回繰り返し与えてき裂を進展させ,繰り返し数とき裂進展開始時の荷重の関係(どの程度の荷重を何回負荷するとき裂が進展するか)を求める。また,クリープ試験でも同様に上述の荷重よりも小さな一定荷重を長期間負荷してき裂を進展させ,負荷時間とき裂進展開始時の荷重の関係(どの程度の荷重を何時間負荷するとき裂が進展するか)を求める。これらの試験はき裂成長時にも継続し,破壊力学特性値の変化について検討する。 また,繰り返し負荷やクリープ変形によってき裂が進展しなくても,き裂先端近傍は応力集中によって損傷を受けていることが予想される。したがって,令和6年度以後はき裂が進展しない程度の繰り返し負荷(予疲労)やクリープ変形(クリープ予ひずみ)を前段階で与えることによる木材の破壊力学特性の変化について検討する。繰り返し負荷では負荷する荷重の大きさ,繰り返し数および繰り返し負荷する時間を,クリープ変形では一定荷重の大きさおよび負荷する時間を様々に変化させて試験体に負荷し,その後に破壊力学試験を実施することで破壊力学特性に及ぼす影響について解析する。さらに,試験体を実際の構造物に使用するレベル(実大材)にスケールを上げ,繰り返し負荷やクリープ変形が実大材の破壊力学特性にいかなる影響を与えるかについて検討する。
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