研究課題/領域番号 |
23K26979
|
補助金の研究課題番号 |
23H02286 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 惇也 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (30762554)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
|
キーワード | カイアシ類 / ウイルス / 広域分布 / 共生寄生 / 動物プランクトン |
研究開始時の研究の概要 |
カイアシ類は魚類の重要な餌料として海洋生態系を支える存在であるが,そのウイルスに関わる知見は圧倒的に不足し,近年検出されつつあるカイアシ類のウイルスの存在意義は謎に包まれている.そこで,本研究は地球規模に分布するカイアシ類に着目し,ウイルス相と遺伝的集団の関係性,感染性ウイルス・常在性ウイルス・内在性ウイルス様配列(ホストのゲノムに組み込まれた配列)の有無,またウイルス感染に対する免疫機構や生理応答を調査し,これまで見過ごされてきたカイアシ類のウイルス研究に光を当てことを目的とする.
|
研究実績の概要 |
本課題は広域に分布する浮遊性カイアシ類に着目し、ウイルス相とカイアシ類の遺伝的集団の関係性、感染性ウイルス・常在性ウイルス・内在性ウイルス様配列(ホストのゲノムに組み込まれた配列)の有無、またウイルス感染に対するカイアシ類の応答を調査し、これまで見過ごされてきた動物プランクトンのウイルス研究を推進することを目的としている。初年度は広域の試料を利用してカイアシ類の集団構造を把握することが予定され、主な研究対象である熱帯・亜熱帯性のカイアシ類であるCosmocalanus darwiniiを対象として研究を進めた。過去に行われた2017年、2018年、2019年の学術船白鳳丸航海で得られたノルパックネット試料(RNAlater保存)を利用し、北太平洋、南太平洋、東部インド洋のC. darwiniiからDNAおよびRNAを抽出した。得られた各個体のDNAを用い、ミトコンドリアDNAのCOI領域の配列の取得し、MIG-seq法によるゲノムワイドな一塩基多型解析を行い、広域に分布するC. darwiniiの隠蔽種の有無や集団構造を明らかにした。RNAは各集団におけるウイルス配列のリストを作成するため、複数個体のRNAを合わせてRNA-seq解析用とした。また、C. darwiniiに加え高緯度域の広域に分布する大型の浮遊性カイアシ類Calanus glacialisについても広域試料の解析を進め、集団遺伝解析の解析を行い、RNAについてもウイルス配列検出のために抽出を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は所属研究室でゲノムワイドな一塩基多型解析であるMIG-seq法を行う環境を整え、予定されていたC. darwiniiの集団遺伝解析を進めることが出来た。準備された個体全ての解析は完了してないが、ミトコンドリアDNAのCOI領域とMIG-seq法を組み合わせた解析により、C. darwiniiには形態的には判別が困難な複数の隠蔽種と考えられる遺伝的グループが含まれていることが明らかとなった。広域に分布する遺伝的グループに着目したところ、北太平洋・南太平洋・インド洋で異なる集団構造が存在することが明らかとなり、これらの異なる集団でウイルス配列を取得することでウイルス相と遺伝的集団の関係性や常在性か否か等のウイルスの知見が得られると考えられた。また、当初の予定であった低緯度域のC. darwiniiに加え、同様のMIG-seq法を高緯度域におけるC. glacialisに適用し、従来のミトコンドリアDNAの16S領域よりも高精度に集団構造を把握可能であることも確かめられた。これらの種では集団遺伝解析のために必要なDNAに加え、今後のウイルス配列に必要なRNAの抽出も進められ、2年目以降に予定されるウイルス配列取得のためのRNA-seqの解析の準備も進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に広域する分布をするカイアシ類の集団構造に関する知見が得られたが、主な研究対象として選定していたC. darwiniiには隠蔽種が含まれ、各種内で異なる遺伝的集団が形成される複雑な構造をしていることが明らかとなった。そのため、さらに追加で広域の個体の解析を進め、C. darwiniiの集団構造を正確に把握する必要がある。また、高緯度域に分布するのC. glacialisはC. darwiniiに比べて比較的単純な集団構造を有しており、C. darwiniiおよびC. glacialisを同時に進めることでより多くの知見が得られ、課題の達成にも近づくと考えられた。ウイルス配列取得のためのRNA-seqは得られた集団構造の結果に基づき複数個体を合わせて行う。RNA-seqはストランド特異的な手法を用い、一部のssRNAウイルスについては複製の有無についても検証が可能にする。ウイルス配列は既存データとの相動性に基づき検出し、詳細なグループを調べるために系統解析を行う。また、各配列を基にプライマーおよびプローブを設計し、qPCRにより各ウイルスをカイアシ類の個体から検出および定量可能にする。
|