研究課題/領域番号 |
23K26984
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補助金の研究課題番号 |
23H02291 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒徳 昭宏 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (20713142)
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研究分担者 |
一色 正 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30378319)
鈴木 信雄 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (60242476)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2026年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | アコヤガイ / 殻黒変病 / 軟体部萎縮症 / Tenacibaculum sp. Pbs-1 / Vibrio sp. MA3 / ゲノム / ヘモリシン / 病原因子 |
研究開始時の研究の概要 |
補助事業期間中にアコヤガイの2つの重要疾病 (殻黒変病と軟体部萎縮症) とその原因細菌の全容解明のために, 以下の点を明らかにする。 1) 両原因細菌がもつ病原因子は何か?2) これら重要病原体は新種か?3) 両疾病はアコヤガイの組織・細胞レベルで何が起きているのか?4) アコヤガイは高温ストレスや細菌感染に対する防御機構をもつか?5) 病原体はいかなる宿主を介して伝播しているのか?6) 両病原体はどの海域に分布しているか?
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研究実績の概要 |
本研究では, 全国の真珠養殖場で大きな問題となっている2つの疾病, 母貝の殻内側が著しく黒変し, 低品質の真珠形成や死亡を引き起こす‘殻黒変病’と, 外套膜が極端に委縮し死亡する‘軟体部萎縮症’の全容解明を最終目標としている。2023年度の実施状況について, 以下に報告する。 1. 軟体部萎縮症個体から単離され, 原因細菌の1つと考えられたVibrio sp. MA3株の溶血蛋白質ヘモリシン遺伝子の塩基配列を明らかにし, 大腸菌を用いた大量発現系の構築と精製を行い, その発現産物の溶血活性とホスホリパーゼ活性を測定した。その結果, Vhe1はこれまで報告例が少ない熱不安定性レシチン依存性ヘモリシン (TLH/LDH) に属し, 両活性ともに反応温度が高いほど活性が高く, pH7.0-10.0で50%以上の活性を保持した。また, NaClの濃度依存的に活性が上昇し, 高いNaCl耐性も示した。さらに, 中鎖脂肪酸 (C8~C12) に対して高い活性を示した。そして, アコヤガイの血球細胞に対する溶血活性も確認された。これらの内容は国際誌で報告した。 2. 一方で, Vibrio sp. MA3株と殻黒変病の原因細菌であるTenacibaculum sp. Pbs-1株の全ゲノム配列を取得し, それらの配列を用いてAverage Nucleotide Identity解析やin silico DNA-DNA Hybridization解析を実施した結果, それぞれの菌株がV. alginolyticusとT. mesophilumの新株であることが明らかになった。また, 様々なデーターベースを用いて, 両疾病に関連する可能性のある病原因子を網羅的に検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは, アコヤガイの大量死や低品質真珠形成を引き起こす殻黒変病と軟体部萎縮症の1因であるTenacibaculum sp. Pbs-1株とVibrio sp. MA3株のゲノム配列を明らかにし, 両細菌の分類学的な位置の解明と両疾病に関連する病原因子を網羅的に検出できた。また, MA3株が持つ新規ヘモリシンの溶血活性・ホスホリパーゼ活性の特徴を明らかにした。本研究は, 計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
両疾病の全容解明のために, 以下に示す内容を実施する。 1) これまでに申請者らが開発したPbs-1株を特異的に検出するLAMP法を環境試料に応用するために, 反応阻害物質の探索とその影響の軽減法を開発する。2) 感染個体体内や海水中のPbs-1株を定量的に検出するために, 特異的なqPCR法を開発する。3) 両原因細菌のゲノム配列中に検出された病原因子を, 大腸菌を用いて大量発現系を構築・精製後, 様々な酵素学的諸性質を明らかにし, 各疾病との関連性を考察する。4) 両疾病個体から組織切片を作成し, 各種染色と免疫組織化学を施して病変部を光学顕微鏡や蛍光顕微鏡下で観察し, 両疾病の病理組織学的知見を蓄積する。5) RNA-Seq用いたストレス応答遺伝子の網羅的検出と詳細な機能推定を行い, アコヤガイの細菌感染防御機構を明らかにする。
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